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わたしは魔王の家に産まれた。
父はデビッド王国の国王アンドリュー・デビッド。
母は名家の娘。
デビッド王国は数多の国、否、他国全てと対立しているが
なかでも特に激しい対立関係にあるのがフィリップ王国。
デビッド王国は『魔王の国』、フィリップ王国は『勇者の国』と他国は言う。
そのわけは各国に『勇者』と『魔王』が一代ずつ存在するから。
デビッド王国の今代の『魔王』がわたしの父上、アンドリュー・デビッド。
そしてフィリップ王国の今代の『勇者』はルーク・フィリップという青年、らしい。
だがこの代も、もう終わるだろう。
『勇者』が既にデビッド王国への侵略を開始していると又聞いたのだ。
『勇者』が敗れたことはないし、『魔王』が勝ち得たこともない。初代から13代の今代まで、ただの1度も。
何故かはわたしもわからない。きっとそういう運命にあるのだ。
??
アリス
サクラ
アリス
サクラ
きっと部屋に散乱した本を指しているのだろう。 しまった、ゆうべ読み耽ってしまっていて片付けるのを忘れていた。
アリス
サクラ
アリス
式典のとき以外はほとんどこの部屋に篭もりっきりの生活だ。
けれど不便はない。食事だってこうしてメイドたちが運んで来てくれるし、本も沢山ある。
この部屋だけでも読み終わっていないのがあと300冊ほどあるもの。退屈はしないわ。
サクラ
アリス
アリス
サクラ
アリス
サクラ
アリス
サクラ
全く。こうでもしないと名前ひとつ呼べないなんて、メイドも不便なものだ。
アリス
サクラ
アリス
サクラ
サクラ
アリス
アリス
足には自信がある。
わたしを捕まえられたのは父上とメイド長のキャサリンくらいだもの。
サクラ
アリス
今日は大事な日なのだ。
父上にかまけてなんかいられない。
アリス
思わず鼻歌が漏れてしまうほどには浮かれていた。
??
アリス
アリス
メアリー
アリス
城下町の端っこ。人気の無いところで待ち合わせをしないと父上や国民にバレてしまう。
こういうの『逢瀬』っていうのよね、本で読んだわ!
アリス
メアリーはわたしのただ1人の友達。昔城下町に遊びに来たときに知り合って、友達になったのだ。
彼女はわたしが国王の娘だとか、そんなことはどうでも良いと言ってくれた。 彼女と遊んでいるときだけは、わたしはただの「アリス」でいられたのだ。
メアリー
そう言ってメアリーは後ろ手に持っていたものをバン、と見せつける。
アリス
メアリー
メアリー
アリス
メアリー
アリス
メアリー
メアリー
メアリー
アリス
ただそれだけの提案。
だけどわたしにはその提案が何にも変え難い、とても魅力的なものに思えた。
アリス
ー城門前ー
アリス
城門前の柱は門番の死角__メアリーに教えてもらったことだ。
門番は2人、右はいかにも不真面目そう。さっきから欠伸を連発しているし、真面目に見張っているとはいえない。
一方左は、右とは対照的に謹厳実直って感じ。城に入ってくるハエ一つ見逃さないような目つきと目力をしている。
メアリー
メアリー
アリス
メアリー
アリス
メアリー
ー城門前・正午ー
門番(右)
門番(右)
門番(右)
門番(右)
門番(左)
メアリー
メアリー
合図(ウインク)!
門番が去ったことを確認し、右足を踏み出す。
そのまま__
__門を超え、大水路の前まで
アリス
喜色を多量に含んだ声で後ろを振り返る。
やったわ!わたしついに城の外に出たの!
アリス
__そこには、背中に剣が刺さったメアリーが横たわっていた。
アリス
まだ息があるからか、躰がピクピクと震えている。
__アリ、ス
彼女の声が、聞こえたきがした。 震える躰で、震える喉で、必死に絞り出したような声。
その声は震えていたけれど、確かな意志を感じるもので__。
アリス
肩にかけていたジャケットが落ちる。だけど、そんな事は彼女の急変に驚嘆して気付きもしなかった。
彼女と目が合った。きれいな、琥珀色の瞳。メアリーと話をする時、彼女はいつもわたしの目を見て話してくれたのだ。
彼女の躰から剣が引き抜かれた。彼女の呻き声が、彼女の最期だった。
彼女の血が、鮮やかな血がこびりついている。持ち主は剣で空を斬り、血を落とす。彼女の血が、清潔な城下町の地面にボタリと落ちた。
剣の持ち主は大方予想がついていたけれど、現実を直視したくなくて目線を上げられずにいた。
けどもう、いい。
剣の柄にはデビッド王国の紋章。上品な手袋にその手を包んでいる。
顔は若く見えるが、よく見るとそこそこの年齢なことが伺える。そして指通りの良さそうな黒髪に青い瞳。間違いない__
アンドリュー・デビッド
アリス
アリス
アリス
アンドリュー・デビッド
アリス
アンドリュー・デビッド
アンドリュー・デビッド
アリス
アンドリュー・デビッド
メアリー、メアリー、わたしの、唯一の、友達。
__メアリー
アリス
アリス
アンドリュー・デビッド
アンドリュー・デビッド
アンドリュー・デビッド
それだけのこと、わざわざ呼びつけてまで言うことかと思った。
けれど
『お前が国王となった時、全てがわかるだろう。』
__どういう意味?
メアリーを殺したことにも意味があったとでも言いたいの?
アリス
何それ、笑える。
アンドリュー・デビッド
__決めたわ。
父上が『魔王』として倒されわたしが『魔王』になったら、必ず平和な世界をつくってみせる。
____これは、ひとりの『魔王』が世界を平和にする物語だ。
__3年前
ーフィリップ王国・フィリップ城ー
ウィリアム・フィリップ
ウィリアム・フィリップ
この日から、俺の冒険は始まった。
ルーク・フィリップ
ルーク・フィリップ フィリップ王国の第一王子にして今代の『勇者』
ルーク・フィリップ
ウィリアム・フィリップ
ウィリアム・フィリップ
ウィリアム・フィリップ
群衆
群衆
群衆
これが、後に『魔王』アンドリュー・デビッドを倒す『勇者』ルーク・フィリップ誕生の瞬間であった。