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うわぁジンヒョンとラブラブハッピーエンド幸せなホープくんを夢見てますが、ナムさんもこんな辛いまま終わるのは歯軋り案件です😢皆の幸せを願います…🙏 次回も楽しみに待っております!ご自分のペースで頑張って下さい💪
ナムジュン
小さな子供に語りかけるような口調で 隣に座るナムジュンが僕の口元へ箸を向けてくる。
ホソク
ナムジュンに差し出された一口分のチャプチェのにおいが鼻をつき なんとなく胃がむかつくような感覚が襲った。 無視して俯いていると、横から聞こえてくる声。
ナムジュン
ナムジュン
ナムジュン
ホソク
豪勢な料理が並んだテーブル。 真ん中には細長い棘のような花びらの 丸っこい赤い花が数本活けられている。 テーブルに溢れているワインから 仄かに広がるアルコールの匂い。 目の前には、ぴくりとも動かないふたつの後頭部。 こんな…変な状況。 それに…。
ナムジュン
__ガシャンッ
ホソク
ナムジュンがため息をつきながら 大きな音を立てて箸を皿の上に置いたから、 ビクリと肩が跳ねる。 …隣にいる人間に対する恐怖が、僕の心を蝕み始めているのだ。 食欲なんてあるはずない。 横目でナムジュンの様子を伺うと 奴もまた、呆れたような目で僕を見ていた。
ナムジュン
ナムジュン
ホソク
拗ねてる?意地を張ってる? コイツは、本当に今の僕がそんな風に見えているのだろうか。 漠然とした不安と、恐怖に 情けなくも、僕は体を動かすことが出来ないでいた。 ジンヒョン どうしよう 助けて そう強く思うと、 膝の上に置いた荷物の下で隠し持つスマホを握る手に力が籠った。 ナムジュンはそんな僕を尻目に 近くに置いてあった真新しいグラスに ワインボトルからワインを注ぐと、 それを一口飲んでから、こんな言葉を口にした。
ナムジュン
ホソク
ナムジュン
ナムジュン
ホソク
ナムジュン
分からない。 必死に思考を巡らせるけど、ナムジュンの言ってる意味がわからない。 今日は僕の誕生日でもないし、 何かの記念日でもない。 言うなれば、今日は僕が地獄から解放される日とも言えるけど こいつがそれをお祝いしてくれてるとでも言うのか。
ホソク
ナムジュン
ワインに酔っているわけでもなさそうだ。 だって僕を見るナムジュンの顔はいつも通り 血が通ってない人形みたいだから。
ナムジュン
ナムジュンが放った言葉に、心臓がどきりと跳ねて 思わず目が泳いでしまう。 そんな僕を見て、ナムジュンはニヤリと笑った。
ナムジュン
ホソク
反応してしまってから気がついた。 既に、見透かされている。 やっぱりこいつはもう、僕達の企てている事を知っている。
ナムジュン
ナムジュン
"俺が" という言葉をわざわざ強調したのは 僕がさっき、ジンヒョンとの関係を否定した事が 全くの嘘であるということ、 僕が今、心の中でジンヒョンに助けを求めてることが 全てバレているからなんだろう。 手の中にあるスマホは さっきから何度も振動している。 きっとジンヒョンからのカトクが何件も来てる。
ナムジュン
ナムジュン
ナムジュン
ホソク
今すぐ…この家を出て ソウル駅で僕を待っている、ジンヒョンのもとへ行きたい。 やっと、どん底にいる僕を救ってくれる人が 手を差し伸べてくれたのに。 やっぱりあの時、こいつを振り切って この家を出て行けば良かった。 なんで僕はいつも 選択を間違えるのかな。
ホソク
ナムジュン
ナムジュンは嘘つきだ。 目の前の二人に盛ったのが睡眠薬じゃなくて 毒だったら。 寝てるんじゃなくて やっぱり、死んでるのだとしたら。
ホソク
こいつの言う 解放される、の意味がわからないけど もしそれが、死を意味するものなら。 一家心中なのか、自分だけ生き残るかは知らないけど とにかくこいつは、僕を殺す気だ。 だからわざわざ、僕を引き留めたんだ。
ナムジュン
僕の目の前に置いてある取り皿に 料理を雑に取り分けていたナムジュンは 手を止めて、僕を見た。 泣きそうなのを必死で堪えているような僕の顔は どれほどみっともないのだろう。 数秒間、真顔で僕を見つめたかと思えば
ナムジュン
ホソク
耐えきれないと言う風に、ナムジュンは吹き出すと 顔を破顔させて 大笑いし始めた。 今のどこに笑える所があったのか、全くわからない。 見たことのないナムジュンの様子に驚きと不気味さを感じて、 思わず椅子に座ったまま距離を取った。 椅子が床を引きずる音が響くと ナムジュンは笑うのをやめて、 いつもの冷たい表情で振り向くと、こう言った。
ナムジュン
ナムジュン
ナムジュンは僕から視線を外すと、 ため息混じりに呟いて 目を瞑りながら椅子の背もたれに寄りかかった。 バクバクと、おかしいぐらいに心臓の動悸が激しくなっていく。
ナムジュン
こいつ、おかしい。 いや、元から何を考えてるのかわからない変なやつだったけど。 こいつに対して、こんなにも恐怖心を抱くなんて初めてだ。
ナムジュン
ナムジュン
そして、こんな風に明確に僕を罵倒したのも初めてだ。 冷や汗をかくほどに緊迫した空気の中 ナムジュンはいつもと変わらない様子で言葉を続けている。 淡々と、僕を責め立てる言葉を並べている。
ナムジュン
ホソク
ナムジュン
そう言って僕を見たナムジュンと目が合うと ドクン、と一際大きく心臓が動いて、脳が揺れる感覚がした。 僕を蔑んだ目で見るナムジュンの顔は 父親の顔を彷彿とさせた。
『お前だけが、被害者ぶるな。』
思い出す。 あの日のこと。 スンヒョンにも、同じ事を言われた。 ゴクリと唾を飲み込むと 同時にナムジュンの視線も僅かに下に動く。 恐怖心を上回るほどの何かが 体の奥底から沸々と湧き上がってくる。 癪に障る。 腹が立つ。 苛々する。
ホソク
こんなこと、してる場合じゃない。 とにかく今は、ここを出て行かなきゃいけないのに 瞬く間に、怒りで頭の中が染まっていく。
ホソク
次の瞬間にはもう、完全に頭に血が昇ってしまっていた。 時計の秒針すら聞こえない、静かな空間に響いたのは テーブルの上からひっくり返された食器が 大きな音を立てて床に落ちて、割れる音。 それから、僕の叫び声。
ホソク
ホソク
ホソク
ほとんど手の付けられていなかった料理の数々は 皿の破片と共に、 無惨な姿で床の上に散らばり広がっている。
ホソク
ホソク
ホソク
スンヒョンには怯えて何も言えなかったのに ナムジュンが相手だと どうして、すぐに感情的になって、周りが見えなくなって 怒りをぶつけてしまうんだろう。 涙で歪む視界では ナムジュンがどんな顔をしてるのか、分からなかった。
僕がまだ何も知らなかった小学生の頃に ナムジュンと過ごした光景が ナムジュンと交わした言葉が 今になって走馬灯のように脳裏を駆け巡った。 あの時の僕は本当にバカだった。 あの言葉を真に受けて ナムジュンの事を信じ切ってしまっていたのだから。 溢れ出る憎しみに比例するように流れ出る涙を、服の袖で拭う。 邪魔な涙の膜が消えると見えたのは 6年前、僕達が初めて会った時と同じように その鋭くて冷たい目で僕の事を睨むナムジュンだった。 ナムジュンが着ている制服のワイシャツには、 さっきの拍子に飛び散ったワインが所々に赤い滲みを作っていて まるで、血のようにも見えた。
ホソク
ホソク
なんで、お前にそんな目で見られなきゃいけないのか。 僕がナムジュンに一体何をしたって言うのか。 時間がないのに 冷静にならなくちゃいけないのに
ホソク
ホソク
ホソク
ホソク
この一時の感情に支配された頭は、体は、口は、 僕の言うことなんて聞いてはくれない。
ホソク
あぁもう、また、視界がぼやける。 なんでこんなに涙が出てくるんだよ。 何がそんなに悲しくて泣いてるのかわからない。
ホソク
ホソク
ナムジュン
自分の口は、言葉を紡ぐ事をやめない。 僕はこいつに、今更何を訴えたいのだろう。
ホソク
ホソク
ナムジュン
しばらく何も言わなかったナムジュンが発した声に ハッとして顔をあげる。 そこには態とらしく首を傾げているナムジュンがいた。
ナムジュン
ナムジュン
僕がおかしいのだと言わんばかりの言葉に 体温が一気に下がるような感覚が襲う。
ホソク
ナムジュン
ホソク
ナムジュン
ナムジュン
ナムジュンはにっこりと笑った。 眉を下げ、僕を哀れむかのように。
ナムジュン
ナムジュン
作者
作者
作者
作者
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