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スプリングブリーズの街の片隅
冒険者ギルドの隣にひっそりと佇む食事処、〈文目の詩〉。
ここには少し、変わったサービスがある。
スタッフ
スタッフ
スタッフ
スタッフ
赤いメイド服にツインテールの小柄なスタッフが、冒険者にクエストを紹介している。
目利きのスタッフによる、クエストの斡旋。
スタッフの鑑定眼が確かなおかげで、店はそれなりに賑わっている。
スタッフ
スタッフ
スタッフ
新顔かと言われれば、そうなるだろう
この街に来てまだ日は浅く、この店に顔を出したのも、数える程しかない。
スタッフ
スタッフ
流れるようにクエストを勧められるが
可愛い子からのお誘いは、警戒するのが基本
スタッフ
スタッフ
スタッフ
スタッフ
スタッフ
スタッフ
少し粗い口調に、屈託のない微笑み。
それがこの少女には、とてもよく似合っていた。
スタッフ
スタッフ
スタッフ
スタッフ
スタッフ
スタッフ
席を立つ
スタッフ
スタッフ
クエストを受注する意思を伝えると、スタッフの少女はひどく、驚いた顔をしていた。
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ゴブリンの群れの規模は、10から20匹程度。
小規模のグループらしい。
店に顔を出した時点で準備の大半は終わっていて、今回は追加の装備も必要なかった。
街を出て、街道を外れてしばらく進むと、件の巣穴が見えてくる。
天然の洞窟を占拠したのだろう。
巣の入口の近くには、乱雑に積まれたゴミの山。
巣の中で生じたゴミを投棄しているのだろうが
その山の構成は、群れの大きさを推測する指標になる。
そこには、中型動物の焼けた骨が複数見えていた。
それは火を使う文化レベルがあり
多くの肉が必要になる状況にあることを示している。
小規模の群れという情報は、疑ったほうがいいだろう。
というより……
ゴブリン
ここのゴブリンは思っていたより、鼻が利くらしい。
ゴブリン
不覚にも、見張りに見つかった……
隠れていた草むらを飛び出し、一気に距離を詰める。
通常のゴブリンの体躯は、5、6歳程度の子どもと変わらない。
おまけにこの個体の獲物は、ちゃちな棍棒。
鞘に収めたままの剣を振るだけでその小さな身体は吹き飛び
不自然な方向に首を曲げ、泡を吹いて動かなくなった。
見張りは倒したが、問題はこのあとの対応。
おそらく、見張りが出した声は巣の奥まで届いているだろう。
撤退するか、攻め込むか……。
ーーーー
ふと、何かのビジョン、誰かの影が、脳裏を過る
既視感のような何か。
だが、それが誰なのかは分からない。
ただ、ここで引いてはいけない。そんな気がした。
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意を決し、巣の中に踏み込む。
内部は、迷路のようなつくりだった。
時折ゴブリンが湧き出るが、一振りで一殺。
刀身を出すまでもなく、鞘を振るうだけで片がつく。
壁に印を刻みながら、歩を進める。
少数であれば、問題はない。
いや、もしかしたら、無数の相手とも渡り合えるかもしれない。
根拠もなく、そう感じる。
ゴブリン
5度目の襲撃。
26体目のゴブリンを返り討ちにしたタイミングで、声が聞こえた気がした。
ゴブリンとは違う、風の唸りでもない、おそらくは人のもの。
音源は背後。その方向に足を向ける。
見落としていた道があったらしく、いくつかの分岐の果に、開けた空間にたどり着いた。
どうやらここが、この巣穴の最奥になるらしいが……。
スタッフ
なぜか〈文目の詩〉の、スタッフの姿があった。
スタッフ
スタッフ
その声はこちらに向けたもの。
ただその視線は、こちらとは反対の、暗がりの中を睨んでいた。
ホブゴブリン
目が、環境に慣れてくる。
少女の視線の先にあったのは、一体の魔物の姿。
それは、巨大なゴブリンだった。
成人したヒト族を超える、身の丈を持つゴブリン。
その四肢を形成する筋肉は、ヒトのそれよりも遥かに発達している。
そして、手に持つ歪な棍棒は、何かによって赤黒く変色していた。
ゴブリンの両の瞳は、こちらを捉えている。
値踏みでも、しているのだろう。
スタッフ
スタッフ
事前情報にはない個体。
突然変異したのか、他から流れてきたのか。
いずれにしても、イレギュラーな相手であることは明らかだった。
スタッフ
少女が前に出る。
また、既視感を感じた。
初めて見るはずなのに、いつか、どこかで
この光景を、目にした事がある気がした。
前に出る。そして、少女を手で制す。
スタッフ
スタッフ
スタッフ
鞘を払い、剣を構える。
逃げる気にはなれない。
そして相手も、逃してくれる気はないだろう。
スタッフ
スタッフ
それは、やってみないとわからない!
足を前に。
駆け出し、一気に距離を詰める。
ホブゴブリン
ホブゴブリンが、その手の棍棒を大上段から振り下ろす。
それは受け止められるような、軽い一撃ではない。
前に飛び回避。懐に潜り、斬り上げる。
剣の腹がホブゴブリンの腹に食い込むが、浅い。
筋繊維に刃が止められた。
即座に後ろに飛ぶ。
こちらの捕獲を試みたホブゴブリンの手が空を切り、状況は仕切り直しになる。
ホブゴブリンの腹の傷は、どう見ても致命傷には程遠い。
剣が悪いのか、腕が悪いのか、あるいはその両方か。
自嘲しながら、剣を構えなおす。
斬撃に活路はない。
であれば、弱い部分を穿つしかないだろう。
ホブゴブリンが、動いた。
再び棍棒を大上段に振り上げ
巨体に似合わないコンパクトな踏み込みで、距離を詰めてくる。
胸板をぶち抜くには、その踏み込みを利用する必要があった。
ホブゴブリンの臓器の配置が古い記憶と同じであることを願いながら
足を前に、刃を、突き出した。
振り下ろされた棍棒が肩を掠め、地面を打つ。
柄を通し、刃が肉を裂き、幾本もの細い骨を砕いたのがわかった。
零に近い距離で、ホブゴブリンの両の目が、こちらを睨んでいた。
こちらを睨んだまま、その身体は、静かに崩れ落ちた。
スタッフ
スタッフ
信じられないようなものを見るかのように、少女は驚いた顔をしていた。
今更になって、心臓や肺が存在を主張し始める。
身体は酸素を欲し、心臓は落ち着きを失っていた。
スタッフ
問われ、確認する。
かすり傷はあるが、大したことはないだろう。
スタッフ
少し、心配させたのかもしれない。
少女は心から、安堵しているように見えた。
スタッフ
スタッフ
スタッフ
スタッフ
スタッフ
怒った口調。そして、その目元は微かに潤んでいる。
おそらく、ここにホブゴブリン以上の大物はいないだろう。
少女の反応に妙な懐かしさを感じながら、このクエストは終わりを迎えた。