※軽いオーバードーズの表現が出てきます ※桃青やと思います ※結構長くなっちゃいました
明かり一つないリビングにブルーライトの目に突き刺さるような光だけが灯る
会社から帰ってきて、電気もつけずにパソコンを開き、束になった資料に目を通した
何も飲まず食わずで手だけを動かし続けてどれぐらい経っただろうか
帰ってきた頃はまだ微かにあった窓のそとからの話し声はもう何も聞こえず、少し肌寒く感じる風が頬を掠めた
今日も今日とて定時から2、3時間ほど残業をして重い足を引きずり、ようやく帰ったと思ったら、明日までに作成しないといけない資料があることに気がついた
最近は仕事もオフィス自体がバタバタしており、一応上の方の立場である自分にも大量の仕事が降ってきている
それに加え歌い手活動の方ももうそろそろライブのツアーがあり、歌やダンスのレッスンや、ボイシングの会社としての仕事。夏休みに向けての動画作成など膨大なタスクが疲弊した身体にのし掛かっていた
まぁ、それだけなら持ち前の根性と努力でなんとかなっている
しかし問題があった
最近はどうも寝付くことができないのだ
もちろん眠気はあるし、相当疲れも溜まっている。身体は睡眠を欲しているのに、布団に潜り目を閉じてもなぜか深い眠りにつくことが出来ない
夜は二時ぐらいには布団に入るようにしているのだが、うとうとした状態で眠ることが出来ず朝を迎える
もちろん疲れなんてとれている訳がなく、今日みたいな大事には至っていないが、普段ならしないであろうミスが明らかに増えている
この間の週末配信では、ないこに「今日元気なかったけどどうかした?」と遠回しに注意されてしまった
そこで今日睡眠薬を飲んでみようかと思う
病院に行ったわけではないし、至って普通の薬局とかで売られているやつだ
正直こんなもので、この謎の症状が治るのかはあまり信じていないがやってみないことにはわからない
そろそろ2時になるし、歯を磨いて、寝る準備をし、箱の裏側に記載されている1錠を取り出し睡眠薬を飲んだ
明日は、すっきり起きれるといいな
そんなことを思いながら、いつも道理に目を閉じる
次の日カーテンの隙間から差し込んでくる僅な光で目が覚める
この久しぶりの感覚
まだ覚めきっていない頭を動かしスマホの画面を見るともう7時を少し過ぎていた
If
ここ最近はどうしてもぐっすり眠ることが出来ず、眠気に襲われたままじっとしていることがしんどかった
そのせいでもう五時ぐらいになると布団から出て、眠気を誤魔化すようにつくえや、パソコンと向き合っていた
そんな毎日が続いていたことが嘘のように、今日は一度も目が覚めることはなかったのだ
俺は少しの感動を覚え、いつもよりも軽いからだを動かした
今日は仕事のあとボイシングの会社で会議だ
ないこ
初兎
初兎
ないこ
ないこ
-hotoke-
ないこ
ないこ
-hotoke-
-hotoke-
りうら
ないこ
ないこ
悠祐
ないこ
ないこ
現在8時30分
今は週に2、3回ある会議中だ
だいたい8時くらいから皆ぞろぞろ揃いだしてフワァ~っと始まった会議だが、アニキはもう、飽きてきたのか話には参加しながらも、もうほぼほぼ椅子に座れているのかわからないぐらいにぐでぇーんとしている
子供組もまろがいれば、いむ辺りが「話きけよっ」と渇を入れられるのだが、今はまろ不在のためいつもよりもうるさい
今も俺が資料とにらめっこしている間、1番下二人が手を繋いでイチャイチャしている
そしてまろはというと、つい10分15分前ぐらいに少し遅れると連絡が入った
最近はまろが来れるようにと少し遅めにしているのだが、やっぱり本業の方が忙しく、ずっと残業続きのようだ
一昨日ぐらいの会議でも遅れてきたまろの目の下は、ビックリするぐらいの隈が出来ていたし、実はひっそり心配している
だが、ここで「大丈夫か?」とか「少し休め」といっても、あいつが止まってくれないことなんてもう分かりきっている
俺含めほとんどのメンバーが、困ったとき一番に頼るのはきっとまろだろう
しかしあいつは人に頼るということを知らない。子供組はまだしも、リーダーである俺や、年上であるアニキにも。
まろは自分の悩みを自分のなかだけに溜め込み、自分のなかだけで消化する。 決して物や人に当たることもないし、吐き出すこともない
ないこ
結局、まろがきたのはそれから30分ほど経った頃だった
If
-hotoke-
初兎
ないこ
りうら
悠祐
If
悠祐
ないこ
If
If
ないこ
ないこ
If
今日は早く行けるかも、なんて思っていたが結局ここに来れたのは9時ちょいだった
一度帰ろうかとかも思っていたが、直で来る方が楽なのでそのままのスーツ姿
やはり、残業はなくならなかったものの、睡眠薬のお陰かいつもよりも、頭はすっきりしていて、よく働いた
きっと最近の俺をみてないこには結構な心配を掛けてしまっていたと思う
だがもうその心配はないだろう
そう思っていた
寝れない。
最近また寝れないようになってきてしまった
あまり毎日のように睡眠薬を飲むのは良くないかと、飲まずに寝ようとしたことがあったが、その日はビックリするぐらいに寝付くことが出来なかった
それから毎日のように睡眠薬を飲んでいたのだが、最近はそれでも眠れないようになった
睡眠薬に体制がついてしまったのだろうか
まずい。非常にまずい。
もうそろそろツアーが始まる
ただでさえほかのメンバーよりも体力がない俺が、睡眠なしで乗りきれる訳がない
If
少し躊躇するが、睡眠薬の箱を手に取る
If
本当は一度に一錠しか飲んではいけないが、まぁ、一つぐらい大丈夫だろうと、箱から一粒とりだし、水で流し込んだ、、が
これがいけなかった。
これからというものの、寝れなくなっては一錠増やし、寝れなくなっては一錠増やしを無意識のままに繰り返してしまい
今となっては7錠8錠飲むのが当たり前になってきていた
やめないといけない。頭では分かっているが身体は言うことをきいてくれない
飲まなければ眠れない。眠れなかったら仕事や活動に支障を来す。
今はメンバーや会社の後輩たちも大変な時期で、皆が皆一生懸命に働いている。
そんな中、自分のせいで皆に迷惑を掛けるなんて絶対にあってはならない
大丈夫、大丈夫だ。
俺ならいける。なんとかなってる。薬の副作用なんかも今のところ見当たらない
あとちょっと、あとちょっとだからっ、動けっ、動け俺の身体
頭はいろんなことが飛び交ってフル回転しているのに、身体はどうしても動かない
ある日の夜。仕事から帰り、玄関をくぐったところで俺は意識を手放した。
... ...
おかしい。
まろが来ない
今日は土曜日だし、前回の会議で今日は他になにもないと聞いていた
しかも今日の集合時刻は10時。 もう30分ほど過ぎている
連絡もない。電話をしても出ない。
冷や汗が止まらない
何度もまろとのLINEを開くが一向に既読がつかない。ただただ寝ているだけならいいが、あいつに限ってそんなことあるか?
そんなよくない方向にばっかり思考が向かう
りうら
初兎
初兎
-hotoke-
悠祐
メンバーの会話を聞いて、居てもたっても居られなくなった俺は、なにも言わず会社を飛び出した
ないこ
-hotoke-
あのあと俺はもうなにも考えず、ただただまろの家へ全力で走った
もしかしたら、ただの寝坊かもしれない
そんな考えはもう一切頭になかった
とにかく無事であってくれ。その一心で走り続け、ようやくついたまろの家
インターホンを鳴らすが勿論でてくる様子はちっともない
焦りすぎてなにも考えていなかったが、鍵は持ってないし、連絡しても返事はない。
どうしようか。そんなことを考えてはいるが手は無意識に戸を引いていた、するとまさかのガチャりと音を立ててドアが開いた
そしてその先で真っ先に目に飛び込んできたのは、スーツのままで倒れているまろの姿だった
ないこ
If
ないこ
ないこ
ないこ
ないこ
ないこ
俺は咄嗟に横たわるまろに呼び掛けるが返事はない
スーツということは昨日帰ってからずっとこの状態だったのだろうか
睫毛の長くて、綺麗な閉ざされた目の下にはビックリするぐらいの隈が出来ていて、彼の今の状況を物語っているようだった
とすると下の方から今にも消えてしまいそうな震えた声が聞こえてきた
If
ないこ
ないこ
ないこ
ないこ
ないこ
ないこ
ないこ
ないこ
If
まろはしんどそうに、ゆっくりとからだを起こすと、俺の方に完全に体重を預けてきた
ときどきつらそうに顔をしかめる
俺の足に置かれた右手にはまったく力が入っておらず、俺はまろの背中と膝裏を抱え、寝室へと急いだ
寝室までいって、ベットにゆっくりとまろを落とす
普段のまろだったら、自分で歩けると行って身体を引きずりながらも歩こうとするだろう
でも今日は抵抗する様子はまったくなく、おとなしく俺に抱えられていた
それほど辛いのだろうか
それに、俺より長身の彼にしては軽すぎた
やはり、仕事と活動で板挟みになってしまっていたから、過労だろうか
そんなことを考え、部屋を見渡すとまろの机には、思いがけないものが置いてあった
ないこ
ないこ
それは睡眠薬だった
しかも結構飲んでるようで、空いてある箱の横にはもう一つ、新品の箱も置いてあった
なぜ睡眠薬?こんな量を?
思うことはたくさんあったが、今のまろの状況と合わせても考えられることは一つだった
まろに問いかけようと、睡眠薬を手に取った瞬間、後ろから腕を捕まれた
ないこ
If
まろは俺の足元にへたりこんで、弱々しい、だけどもしっかりとした手で俺の腕をつかんでいた
If
まろが珍しく焦っているのが分かる
体調もまだよくないだろうに、いろんなことをごちゃごちゃ考えすぎだ、こいつは
まろの額に触れると逆に冷たいぐらいで、冷や汗をかいていた
ないこ
ないこ
ないこ
If
まろの腕を俺の肩に回して、ゆっくり立たせる
そしてもう一度ベットに寝かせた
何がこいつをこんなにも追い込んでいるのだろう、どうしたらもっとこいつが辛い思いをしないで済むのだろう
少しでも良くなって貰えるようにと、猫っ毛な黒髪を撫でる
俺が低気圧でしんでるときに、よくまろが頭を撫でてくれる。何を言うでもなく、ただただ優しく撫でてくれる。
俺はその大きくて暖かいまろの手が大好きだ
だから、次は俺の番。
ないこ
ないこ
ないこ
「寝てて良いからね」
そのないこの優しさが、今の俺には深く突き刺さる
もう、いっそのこと今全部言ってしまおう
そう思い、あまり回らない舌を動かした
If
ないこ
If
If
ないこ
If
If
ないこ
それからないこはなにも言わず、ゆっくりな俺の話を最後まで聞いてくれた
最初は一粒としか飲んでなかったこと、飲まなかった日にはまったく眠れなかったこと、だんだん効果がなくなってきたこと、薬を少しずつ増やしていったこと、最近では八錠ほど飲んでいること
ないこに、これまでのことを漏れなく全部話した。
するとないこは「辛かったね」なんて言って、力強く抱き締めてくれた
人の暖かさを久しぶりに感じて涙がこぼれた
怒られるかなぁなんて思っていたが、ないこはただただ「頑張ったな」「もう大丈夫だからね」と褒めてくれた
そんな言葉に、ついには柄にもなく嗚咽を漏らしながらわんわんと泣きじゃくった
その日は、ないこと同じベットで、同じ布団に潜り二人で眠りについた
俺が寝るまでないこはずっと、子供をあやすかの様に腰辺りをポンポンしてくれていた
そのリズムが心地よくて、ないこの体温が暖かくて。
最近の、睡眠薬を飲んで死んだ様に眠るのではなく、睡魔に襲われながらゆっくりと意識を手放した
おしまい。
コメント
2件