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カイト
よくも俺の兄貴を轢き殺したな！
ミク
カイト、誤解よ！私そんなことしてない！
カイト
この期に及んでまだしらを切るのかよ！
カイト
ルカちゃんが言ったんだぞ！お前を指さして、
カイト
『おばちゃんがパパをころした』って…そう言って泣き出したんだ！
ミク
６歳の子供が言ったことじゃない！何の根拠もないのに信じるの？
ミク
夫のあなたが、私を信じてくれないの！？
カイト
根拠ならあるさ。前からしてたよな。ルカちゃんに不思議な力があるって話
ミク
えぇ。以前にも、近所で起きたひき逃げ事件の犯人を当てたとか…
カイト
ほらな！ルカちゃんの言うことは間違いないんだ！
カイト
やっぱりお前が犯人だ！
ミク
だから違うって！何かの間違いだよ！
カイト
お前、ルカちゃんが嘘ついたとでも言うのか？最低だな！
カイト
無垢な子供がこんな嘘つくわけねぇだろ！
ミク
無条件に信じる方がどうかしてるよ！
カイト
しらばっくれても無駄だ。警察にも通報したからな
ミク
警察になんて言って通報するのよ
ミク
不思議な力を持つ子供が妻が犯人だと言いました、なんて通ると思う？
カイト
うるさい！大体、お前が犯人じゃないならなんで逃げたんだ！
ミク
それは、あなたとお義姉さんが『人殺し！あの人を返せ！』って言って
ミク
私を取り押さえようとして来たからじゃない！
ミク
周りの人達も釣られて捕まえようとしてくるし…お義母さんは止めてくださったけど
カイト
ルカちゃんの不思議な力は親族の間でも噂になってたからな
カイト
兄嫁のリンさんも可哀想にな…義妹に夫を殺されて、
カイト
これからはシングルマザーで娘を育てなきゃいけないんだから
ミク
だから、私じゃない！
カイト
とりあえず、兄貴を殺した人殺しとは一緒にいられないから離婚な
ミク
そんな…お願い、信じてよ！
～その夜～
メイコ
こんばんは、ミクさん
メイコ
大丈夫？今、どこにいるの？あのまま家に帰ったとは思えなくて…
ミク
お義母さん、こんばんは
ミク
カイトには人殺しと言われて離婚を言い渡されて…今ホテルに泊まってます
ミク
離婚後は実家に帰る予定です
メイコ
そう…本当にごめんなさい。うちの息子や親族が…
メイコ
リンさんとルカちゃんは落ち着けるためにもうちに泊めているけど、
メイコ
それでもリンさんはミクさんが犯人だって聞かないのよ…
ミク
お義母さんのせいじゃありません。それに、皆さんを止めてくださってありがとうございます
ミク
お義母さんも辛い思いをされているのに…
メイコ
いいのよ。あなたも否定していたけど、
メイコ
私もどうしても、あなたがキヨテルを殺すような人とは思えなくてね…
ミク
お義母さん…本当にありがとうございます
ミク
信じてくださって、本当にありがたいです
メイコ
辛い思いをさせたわね…
メイコ
私もね、ルカちゃんの不思議な力を信じてはいるのよ
メイコ
実際に目の当たりにしてきたから
メイコ
だからこそ、何かが変だと思うのよ
ミク
え？
メイコ
一年前近所で轢き逃げが起きた時、ルカちゃんが家に遊びに来てたのよ
メイコ
事件の話を聞いた翌日の食事中に突然、ルカちゃんが『頭が痛い』って騒ぎだして、
メイコ
それから『隣のおじちゃんがひいた』って、窓から隣家を指さしたの
メイコ
その後、隣家の主人が逮捕されたわ
ミク
凄いですね…
メイコ
まだあるの
メイコ
これはキヨテルが言ってた話なんだけどね、
メイコ
向かいに、夜遅くまで明かりを付けて勉強してる受験生がいたらしいの
メイコ
ある日の夕方、ルカちゃんがまた頭が痛いって苦しみ出して、
メイコ
『向かいのお兄ちゃんは泥棒で捕まる』って言いだしたんだって
メイコ
後日、その受験生は下着泥棒の現行犯で捕まったらしいわ
ミク
下着泥棒…
メイコ
他にもそんなことがあって、
メイコ
調子に乗ったキヨテルが指名手配犯や行方不明者の顔写真をルカちゃんに見せて、
メイコ
どこにいるか聞いたけど『わかんない』としか言わなかったそうよ
メイコ
ニュースの事件の犯人もわからず、競馬も宝くじも当てられなかったみたい
メイコ
ここまで聞いて、気付いたことある？
ミク
えっと…不思議な力が発動する時って、頭が痛いって言いだすんですか？
ミク
…あ！
メイコ
そう。あの時ルカちゃんは、頭痛で苦しんでいなかった
メイコ
しかも、不思議な力が発動するタイミングは気まぐれで、本人にもコントロールできないらしいの
メイコ
葬式でみんなが集まってる時にタイミングよく発動するかも疑問だわ
メイコ
それともう一つ
ミク
まだ何かあるんですか？
メイコ
ルカちゃんずっと泣いてて、今やっと寝たんだけど、
メイコ
『おばちゃん、ごめんね』って寝言で言ってるのよ…
ミク
ルカちゃん…
メイコ
多分、何かあると思う。ルカちゃんが目覚めたら、聞いてみるわ
メイコ
…念のため、リンさんのいないところで
ミク
本当にありがとうございます、お義母さん
～翌朝～
メイコ
おはよう、ミクさん
ミク
おはようございます
メイコ
ルカちゃんが早く起きてきたから、リンさんの目覚める前に昨日のことについて聞いてるわ
メイコ
『本当におばちゃんがパパを殺したと思ってる？』って言ったらね、
メイコ
ルカちゃんは首を振ったのよ
メイコ
『どうしてあんなこと言ったの？』って聞いたら、ずっと俯いてるわ
メイコ
『本当の犯人は誰？』って聞いたら『わかんない』ですって
ミク
そうなんですね…でも、ルカちゃんに犯人だと思われてないとわかって、少しホッとしました
ミク
でも、どうしてあんなこと言ったんでしょうね…
メイコ
…待って
メイコ
今、ルカちゃんが『頭が痛い』って言ってるわ
ミク
えっ！それって…
メイコ
多分、不思議な力が発動するんだと思う
メイコ
…えっ…そんな、嘘でしょ…
ミク
お義母さん？どうされたんですか！？
～その夜～
カイト
いつまで逃げてるんだ？人殺し
カイト
こっちはずーっと離婚届用意して待ってるんだ
カイト
お前が逮捕される前に、さっさと別れたいんだ。サインしに帰って来い
ミク
えぇ、すぐにでもサインするわ
ミク
ただし、逮捕されるのはあなたの方よ
カイト
へ？
カイト
何言ってんだよ。なんで俺が逮捕されるんだ。兄貴を殺したのはお前だろ
ミク
今朝、ルカちゃんの本当の不思議な力が発動したのよ
ミク
あの時とは違って、頭が痛いって苦しんでから言ったわ
ミク
『パパを殺したのはママとおじちゃん』ってね…
ミク
つまり、リンさんとあなたのことよね？
カイト
はぁ？俺が実の兄貴を殺すわけねぇだろ！
カイト
リンさんだってそうだ！なんで旦那を殺さなきゃならないんだよ
カイト
第一、そんな子供の言うことを信じるのかよ！
ミク
それ、あなたが言う？
ミク
ルカちゃんの言うことは間違いないとか言って、私を犯人だと決めつけたくせに
カイト
それは…
ミク
ルカちゃんはね、『おばちゃんが犯人だと言えってママに脅された』らしいわよ
ミク
『言うことを聞かないと家から追い出して二度と面倒見ない』って
ミク
小さい子に、酷いわよね…
カイト
だからって、なんで俺が犯人だってことになるんだよ！
ミク
お義母さんがね、朝が弱くて起きてこないリンさんのスマホを調べたの
ミク
パスコードはルカちゃんが知ってたから
ミク
それですべてがわかったわ
ミク
あなた達、不倫してたのね
カイト
ち…違う！誤解だ！
ミク
何が誤解よ。お義母さんからLINEのやり取りの写真送られてきたけど、
ミク
どう見ても真っ黒だったわよ！！
カイト
だ、だってしょうがないだろ！
カイト
リンさんの方が美人だしナイスバディだし、誘ってくるし、
カイト
据え膳食わぬは男の恥って言うし…
ミク
そんな理由でお義兄さんを裏切った挙句殺して、私に罪を着せようとしたってわけ！？
ミク
ルカちゃんを利用して私に人殺しの疑惑をかけて、それを理由に離婚して
ミク
リンさんと再婚する予定だったの！？
カイト
違う！あれは事故だったんだ！！
カイト
リンさんと行ったラブホからの帰り道、暗闇と雨で視界が悪くて、
カイト
人を轢いちまって…それが、偶然にも兄貴だったんだよ…
ミク
その時に通報すればまだ助かったんじゃないの？
カイト
その時には息を引き取ってたよ！！
ミク
でもリンさんの車のドラレコに証拠が残ってるわよ
ミク
『まだ生きてる、救急車呼ぼう』って言うリンさんに、
ミク
『落ち着けよ。通報したら浮気のことがバレるぞ。それに、兄貴に死んでほしいって言ってたろ』
ミク
『兄貴が死んで俺も嫁と離婚すれば、俺達再婚できるんだぜ』って
ミク
悪魔のようなことを言うあんた。そしてあっさりとそれに乗るリンさん…
カイト
あ、あ…
ミク
それにしても、リンさんも危険なことをするわねー
ミク
娘に不思議な力があるとわかっていながら、不倫するんだもの
ミク
その不思議な力でバラされたらどうしようと考えなかったのかしら
ミク
それとも今回みたいに、母親の権力を使って脅せばいいと考えたのかしら
ミク
あ、勿論このことは警察に通報済みよ
ミク
いずれ、防犯カメラなどでバレたと思うけどね
カイト
お、おい！！
カイト
夫を警察に売るのかよ！考え直せよ！
ミク
はぁ？こっちは妻でありながら夫に罪を擦り付けられて通報されたけどね
カイト
本当はしてない！だから、許してくれ！！
ミク
許せるわけないでしょ
ミク
そうそう、今回のことで誰よりもショックを受けているのはお義母さんよ
ミク
当然よね。息子を殺したのはもう一人の息子だったんだもの
ミク
しかも動機は不倫…本当に気の毒だわ
カイト
だったら尚更考え直せよ！！
カイト
お袋が気の毒だろ！息子が二人もいなくなるなんて！！
ミク
その気の毒なことをしたのよあんたは！！
カイト
そ、それにルカちゃんだって可哀想だ！
カイト
親も面倒見てくれる人もいなくなって、天涯孤独になるじゃないか！
カイト
そうだ、ルカちゃんのことは俺とお前で育てよう！
ミク
…は？
カイト
いいじゃないか。俺達には子供がいないし。お前子供欲しがってたろ
カイト
リンだけ捕まれば俺は無事！車だってリンのものだし、もとはと言えば誘ってきたのもリンだし、
カイト
リンが全部悪いんだ！
ミク
やめて。今度はリンさんにすべて罪を擦り付けるのね
ミク
つくづく最低な人だわ。あんたみたいな奴と夫婦だったのは、私の黒歴史よ！
カイト
ミク、そんな…
ミク
みんなを傷つけて…一生かけて罪を償え！この悪魔！！
～後日談～
ミク
その後まもなく、カイトとリンさんは逮捕されました
ミク
二人は罪をお互いのせいにし合ってましたが、
ミク
やり取りの証拠がある以上聞き入れられるはずもなく…
ミク
更に、事件当時カイトが飲酒運転をしていたことも発覚し、
ミク
悪質性が高いと判断され、二人とも重い実刑判決を下されました
ミク
一気に身内を失ったルカちゃんは、お義母さんは経済的にも育てていけないので、
ミク
父方の遠い親戚夫婦の養子となり、時々お義母さんが会いに行くことになりました
ミク
私は、事実を知った親族の方々に謝られ、謝礼をいただきました
ミク
そして、ルカちゃんも『おばちゃん、ごめんなさい』と謝ってきました
ミク
父親を母親と叔父に殺され、母親に脅されて利用され、
ミク
私に罪を着せた罪悪感に苦しみ、更に母親が塀の向こうに行ってしまったルカちゃん
ミク
可哀想で心が痛みますが、いずれ乗り越えて、笑って生きてほしいと思います
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
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