どうやら最近、ヒースクリフの様子がおかしいと耳にする。
流石に言い過ぎでは……?、とその囚人に聞き返してみると、様子がというよりはあまり見られない行動を起こしているらしい。
ヒースクリフは何か突発的な行動を起こしやすい性格だ。最近の彼ならそんなことは起こさないと思うが……一応二次被害が起きないようなものか一度様子を見ておこう。
そういえばふと思い返してみたが、毎日行っているゴロツキとの戦闘後、ヒースクリフがバスに戻るのが他の囚人より遅かった。
今丁度戦い終わった所だし、ここで様子を見ておこうか。
ダンテ
現場からはそこまで離れていないと思っていたが、名前を呼んでも彼の姿どころか声すら聞こえなかった。
ダンテ
そんな疑問を抱きながら、裏路地を闊歩しながら周囲に目を配っていると──
ヒースクリフ
ダンテ
偶然、その対象とばったり出逢った。
ダンテ
ヒースクリフ
その時のヒースクリフはまさに、“おかしい”と囚人の言葉を借りて言えるほど、とても変だった。
彼は鋭い目で、沈みかける橙色の太陽を見つめながら、キャンバスの上に短い鉛筆を走らせていたのだ。
そして、彼の雑な手つきからは予想ができない、繊細な鉛筆画を私の目を掠めた。
ダンテ
ヒースクリフ
私の訝しむ視線に耐えられなかったのか分からないが、ヒースクリフはキャンバスを閉じ立ち上がった。
ヒースクリフ
ダンテ
ヒースクリフ
彼は分かってたかのように、ぶっきらぼうに頭を掻きながらゆっくりと歩を進める。
ヒースクリフ
ダンテ
ダンテ
ヒースクリフ
ダンテ
私がきっかけを訊くと、彼はどうしてか“本能だ”と突拍子もなく答えた。
本能と趣味……どういった因果関係が?
ヒースクリフ
ダンテ
思索に耽る私にヒースクリフが呼びかけ、考察の時間は強制的に終わってしまった。
結局、ヒースクリフとの帰り道はバスからそこまで離れていなかったこともあって、これ以上の詮索は不可能だった。
数時間後───
この日、丁度ヒースクリフの面談が予定に入っていた。
これは訊けるチャンスだと考え、少し乗り気になって彼の部屋へと向かった。
(コンコン)
ダンテ
私がノックを鳴らし、入室の要請の言葉を投げかけると、中からくぐもった声で了承の言葉が飛んできた。
それを確認して、慎重に扉を開け入り込む。
ダンテ
いつもの言葉を発しようとした瞬間、私は思わずこの部屋のある一点に釘付けになった。
どの囚人の部屋に揃えられている、机と椅子。
その椅子にヒースクリフは腰掛けていた。
しかし問題は、机の上に大量に散りめられた紙。机の背面に設置された壁に飾られた大量の絵。
どうやら女性の絵らしい。ただコピーのように同じ絵が適当に飾られている訳でもない。
正面を向いて微笑む顔。綺麗な横顔。女性の後ろ姿にたなびく、繊細な髪。素足で走る健気な女性の走り姿。
ポーズは違えど、どれも同一の人物だ。
いくつかの鉛筆画の中には色が付けられた絵も混じっている。
茶髪の女性……私はその人物を知っている。
ダンテ
ヒースクリフ
ヒースクリフは自慢げにこの絵を見せびらかすかのよう示した。キャサリンを知っている私だからこそ言えるのだろう。
ヒースクリフ
ダンテ
この前のきっかけの話、彼は本能だと答えた。
その時は理解できなかったが、今なら明確に答えられることができる。
ダンテ
ヒースクリフ
ヒースクリフ
彼は必死だ。いつでも、そうだ。
みんなの記憶から消え去った“彼女という記憶”を彼は必死に掴み続けている。
何せ彼女の顔は二度と見られない。
ダンテ
ヒースクリフ
ダンテ
ヒースクリフ
彼は満更でもない表情を見せる。だがすぐに、顔を顰めた。
ヒースクリフ
ダンテ
ヒースクリフ
ヒースクリフ
ヒースクリフの口から漏れた切実は叫び。彼は只々彼女に会いたいと叫んでいるだけだった。
彼のスケッチも所詮、その場繋ぎにしかならない。人間の記憶力には限界がある。段々と彼女の笑顔が霞むだけの一途を辿る。
ダンテ
ダンテ
私はその言葉しかかけてあげれなかった。
おまけ1
ドンキホーテ
ヒースクリフ
ドンキホーテ
ヒースクリフ
ドンキホーテ
ドンキホーテ
ヒースクリフ
ドンキホーテ
ドンキホーテ
ヒースクリフ
ヒースクリフ
ドンキホーテ
ヒースクリフ
ドンキホーテ
ヒースクリフ
結局描いてあげた。
ドンキホーテ
ドンキホーテ
ヒースクリフ
コメント
4件
思い出すためかぁ…リンバスは詳しく知らないけどヒースさんにとって大切な人なんだろうね…