ジリリリリリッ
咲
咲
咲
私はどこにでもいるような 中学生だ
今日は学校を休んだ
でも今日は大事な用がある
だから制服に袖を通した
両親の方を見る
咲
咲
咲
咲
咲
そう声をかけ、私は外へ出た
咲
快晴の空
心地よい風
普段ならいい気分になるが…
今は嫌味にしか感じない
咲
前から声がした
咲
咲
ガチャッと、車の扉を開けた
私は車に揺られながら ある場所へと向かう
久しぶりの顔ぶれ
初めて見た顔ぶれ
心ん中綯い交ぜで…
咲
咲
咲
和室の椅子に座った
布越しなのに、冷たく感じた
係の人に呼ばれ
襖を開いた
そう
今日はあの子の葬式
咲
その顔は柔くて
まるで眠ってる様だった
咲
咲
湯灌で触れた肌は
固く
硬く
冷たかった
咲
私は、空っぽになった あの子を撫でた
明くる日の朝
咲
咲
私は制服に袖を通した
会場までずっと
咲
ゆらゆらと心は揺れていた
棺の中に収まったあの子が
花に包まれ
埋まってゆく
咲
瞼を閉じたら…
咲
咲
"現実"が頬を伝ってた
扉は閉じられて行く
鍵はかけられて行く
あの子の入ったそれが運ばれて行く
私はそれをただ…
咲
ただ眺めてる…
夏はまだ先なのに…
蝉の鳴き声がした
咲
咲
別れが近づく
棺が__に入って行く
咲
溢れ出るものが…
咲
咲
待合室の自販機で買ってもらった 甘いジュース
咲
結露が床に落ちた
その瞬間、全身に寒気が走った
咲
肌は果て
欠片となったあの子
私は箸でソレを渡し、 壺に収めていく
咲
咲
そう言った時、 ポツリとこぼした…
汗は冷えていた
軽くなった
あの子を抱えて歩く
咲
咲
咲
咲
少し火傷した手が ヒリヒリと痛み出した
咲
咲
車の中から見た夕焼け空
私の心と比べて色鮮やかだった
咲
ジリリリリリッ
咲
明くる日の朝
私は眠たげに制服に袖を通した
咲
咲
咲
広がる快晴な空
窓の向こうで広がってた
咲
私はつぶやき、鞄を持つ
咲
咲
そう言い私はドアを開けた
お借りした曲 哀悼、そして日常は続く