杏堂〇〇
カーテンの隙間から差す朝の日差しで目が覚める。
もう一度目を瞑り、数秒して又開ける。
其れを何度か繰り返す内に段々と頭が冴えてきた。
ベッドから起き上がり、朝の支度をする。
支度が終わった頃に迎えの車が家の前に止まる音がする。
何時もと変わらない朝。
そう思っていられるのも今だけだと云うことは 未だ私は知らない。
何時ものコンビニエンスストアに車を停め、 ペットボトルの緑茶とおにぎりを一つ買う。
もう一度車に乗って ポートマフィアビルに向かおうとしたその時。
パンパンパンパンッ
杏堂〇〇
突如銃声が四回鳴り、車体が少しづつ沈む。
其れとほぼ同時に逆側から六発。
窓硝子や車体、タイヤに穴を開けた。
直ぐに頭を下げたので私は無事だったが、 運転手の構成員は頭を撃ち抜かれて多分即死。
運転手を撃ったのは音がしなかった事や向き的に きっとスナイパーだろう。
理由は……準幹部の私を狙った襲撃と云った処だろうか。
少し頭を上げて罅の入った窓硝子から外の状況を確認する。
車の斜め後ろ、左右に一人ずつ銃を構えた男が二人。
何方も黒いパーカーを着て深くフードを被っている。
車の前方、コンビニエンスストア側に仲間は居なさそうだ。
太腿に隠していた小さめの銃を取り出す。
車内から撃った方が安全だがこれ以上撃てば窓硝子が割れる。
窓が無くなれば私も無防備になるし、 何方にしろ此方は密室の様なもの。
杏堂〇〇
杏堂〇〇
車の右後部座席から外に出て拳銃を構える。
向こうが撃つ前に狙いを定めて一発。
見事頭に命中し、血を流しながら倒れる。
左側からもう一人が三発。
何れも全て交わして此方が二発。
一発は外したが、もう一発は胸に当たって倒れた。
顔を確認する為、ゆっくりと近付く。
黒パーカーの男
杏堂〇〇
如何にかもう一発撃とうと、 うつ伏せの侭で銃を構える男の手元を、素早く蹴った。
行き場を失った銃が数メートル先に飛ばされ、転がる。
此方も銃を向けながら未だ息をしている男に問うた。
杏堂〇〇
黒パーカーの男
杏堂〇〇
杏堂〇〇
杏堂〇〇
杏堂〇〇
黒パーカーの男
黒パーカーの男
杏堂〇〇
杏堂〇〇
厭な事に勘づき、後ろを振り向く。
振り向いたと同時に何者かに右手を蹴られて 銃が手から離れてしまった。
相手を見る間もなく左横腹を蹴られ、思わず屈み込む。
杏堂〇〇
目の前には同じく黒パーカーにフードを被った男。
其の男の口角がニヤリと上がる様を見たのを最後に 私は意識を手放した。
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