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君との距離、0センチ

第9話 - 真誠

2025年07月10日

#恋愛

#青春

#学生

#告白

ような。

帰り道

黒崎　蓮斗

文化祭の夜さ、

寺本　詩

…はい

黒崎　蓮斗

俺の過去と思ってること話したじゃん？

詩は小さく頷く

黒崎　蓮斗

─でも、1番大事なこと、伝えられてなかったなって

寺本　詩

1番、大事なこと…？

黒崎　蓮斗

うん

黒崎　蓮斗

俺は寺本に感謝してる

黒崎　蓮斗

けど、そんな言葉だけでは済まされない

黒崎　蓮斗

あんな過去があった分、こんな気持ちになるのはあり得ないと思ってた

寺本　詩

…？

黒崎　蓮斗

寺本は俺を救ってくれた

黒崎　蓮斗

けどそれ以上に、新しい事も教えてくれた

寺本　詩

新しい事…？

黒崎　蓮斗

うん

黒崎　蓮斗

─俺

黒崎先輩が立ち止まり詩をじっと見つめる

寺本　詩

…黒崎、先輩？

黒崎　蓮斗

"好き"って気持ち、分かるようになった

寺本　詩

…え？

黒崎　蓮斗

寺本、好きだよ

寺本　詩

（…え、今─なんて？）

胸の奥にポツンと投げられた言葉が波紋になって広がる

寺本　詩

（先輩が私を、"好き"…？）

頭の中でその言葉を繰り返し、そして理解する

寺本　詩

え、え、あ、その…

言葉の意味を理解した瞬間に全身が熱くなるのを感じる

寺本　詩

（し、信じられないよっ）

寺本　詩

な、なんで…私なんかっ

黒崎　蓮斗

寺本しかいないと思った

黒崎　蓮斗

こんなにいろんな気持ちを思い出させてくれて、俺に向き合ってくれる

黒崎　蓮斗

俺にとって寺本の存在が必要なんだよ

黒崎　蓮斗

俺が今まで経験したことのない気持ち

黒崎　蓮斗

寺本が、好きって気持ち

黒崎　蓮斗

教えてくれて、ありがとう

寺本　詩

…！

寺本　詩

そ、そんな顔で言わないでください

寺本　詩

やばい、私泣きそうです…

寺本　詩

（私今絶対顔真っ赤…）

寺本　詩

（恥ずかしすぎる、）

寺本　詩

（先輩からの"好き"）

寺本　詩

（これって、両想い…？）

寺本　詩

（私も、先輩と同じ気持ち…だから）

寺本　詩

…好きです。私も

口に出した瞬間、涙が溢れ出る

抑えられない気持ちと一緒に頬を伝う

黒崎　蓮斗

泣くなよ

寺本　詩

だ、だって…

寺本　詩

まさか先輩からそんな気持ち、聞けると思ってなくて…

黒崎　蓮斗

全部寺本のおかげだから

黒崎　蓮斗

ありがとな

寺本　詩

…っはい！

ギュッ

寺本　詩

…っ！

微かに震える詩の手を握る黒崎先輩

黒崎　蓮斗

俺の気持ち、ちゃんと届けられた

黒崎　蓮斗

やっと、信じられた

黒崎　蓮斗

人を、好きになれた

寺本　詩

…せ、せんぱっ！

胸が熱くなり、声が震える

黒崎　蓮斗

これからも隣にいてほしい

寺本　詩

も、もちろんですっ！

寺本　詩

私だって先輩のっ、とな、り、いたいですっ！

黒崎　蓮斗

…うん、約束な

繋がれた手から想いが全て伝わってくる

離したくない

こんなに好きになれたのは初めて

夕焼けに染まる2人だけの世界

気持ちが今ひとつに重なる

翌日　昼休み

寺本　詩

（おもっ…）

寺本　詩

（はぁ最悪〜日直の日に限って授業資料多すぎる…）

寺本　詩

美琴に手伝ってって言おうとしたのに見当たらなかったし…

寺本　詩

（うぅ、空き教室って行かないけど、こっちで合ってたっけ…）

寺本　詩

（指、ちぎれそう…）

ガサッ

寺本　詩

わっ…！

手に持っている資料の重さが無くなる

黒崎　蓮斗

フラフラしてて危なっかしすぎ

寺本　詩

…へ、先輩？！

黒崎　蓮斗

これ、どこ持ってくんだ？

寺本　詩

あ、空き教室です…

寺本　詩

で、でも、悪いです!流石に全部持ってもらうのは…

黒崎　蓮斗

いいから

黒崎　蓮斗

お前ほんとに転けそうだったじゃねぇかよ

寺本　詩

え、そうでしたか？！

黒崎　蓮斗

うん

寺本　詩

…！

黒崎　蓮斗

てか結構重いなこれ

黒崎　蓮斗

先生もよく女の子にこんな量の荷物手伝わせるな

寺本　詩

そうですよね〜？

寺本　詩

（…あれ、私たちいつも通りだ）

寺本　詩

（昨日、お互い好き同士になって1日経ったけど）

寺本　詩

（これ、前みたいな関係のままじゃない…？）

黒崎　蓮斗

空き教室ついたぞ

黒崎　蓮斗

ドア、開けて

寺本　詩

あ、はい…！

寺本　詩

（黒崎先輩は、なんとも思ってないのかな）

寺本　詩

（昨日あったことが、夢みたいじゃん…）

空き教室

黒崎　蓮斗

ここ置いておけばいい？

寺本　詩

はい、ありがとうございます！

黒崎　蓮斗

うん、じゃあまた部活で

寺本　詩

あ…は、はい…

寺本　詩

（もう、行っちゃうんですか…？）

寺本　詩

（やっぱり私ばっかり気にしてる）

寺本　詩

（昨日距離が縮まったと思ったけど、今日はそれが嘘みたいに遠く感じる）

寺本　詩

（私ばっかり浮かれちゃってる）

寺本　詩

（先輩もまるで何もなかったみたいに接してる）

寺本　詩

（私だけが先輩を好きみたい）

寺本　詩

（先輩は本当に私のことが好き、なのかな…）

寺本　詩

（先輩の言う好きって、なんだろう）

寺本　詩

（すごく、モヤモヤする…）

寺本　詩

（こんな私絶対めんどくさい、分かってるけど…）

黒崎　蓮斗

寺本…？

寺本　詩

あ、はい…

黒崎　蓮斗

なんか元気ないだろ

寺本　詩

え、別にそんなこと…

黒崎　蓮斗

そんなことあるだろ

黒崎　蓮斗

全部顔に出てる

寺本　詩

えっ…？！

黒崎　蓮斗

なんかあった？

寺本　詩

いや、えっと…

寺本　詩

（こんな話先輩にしたら、重いって…）

黒崎　蓮斗

なんでもいいから言えよ

黒崎　蓮斗

…嫌いになったりしねぇから

寺本　詩

先輩っ…！

寺本　詩

（受け入れてくれる、大丈夫）

寺本　詩

（私、このままじゃ嫌だ！）

寺本　詩

こんなこと言ったら、重いって思われるかもしれないですけど…

黒崎　蓮斗

…

寺本　詩

私、昨日先輩が気持ち伝えてくれた時から、自分が自分じゃないみたいで

寺本　詩

すっごくすっごく嬉しかったんです

寺本　詩

…でも、先輩はいつも通りのままで

寺本　詩

先輩は昨日ちゃんと「好き」って言ってくれて、ほんとに嬉しかったんです

寺本　詩

だけど、それからは何も変わってない気がして…

寺本　詩

私1人でドキドキしてるし、必死になってるみたいで

寺本　詩

…好きなの、私だけなのかなって

寺本　詩

私だけ浮かれてるの、バカみたいですよね…

寺本　詩

（こんなこと言ったら絶対先輩困っちゃう）

寺本　詩

（困らせるって分かってるのに…！）

黒崎　蓮斗

…お前、ほんとアホだな

寺本　詩

な…！私は真剣でっ…！

黒崎　蓮斗

俺は不器用だし、お互いが思い合ってるとか、ちゃんとわかんねぇ

黒崎　蓮斗

─けど

黒崎　蓮斗

好きだって言ったのは、嘘じゃねぇ

黒崎　蓮斗

この気持ちだけははっきりと分かってっから

寺本　詩

…先輩

黒崎　蓮斗

お前は俺のこといつも通りだって言ったけど

黒崎　蓮斗

こっちだって顔に出さねぇのに必死なんだよ

思わぬ言葉に思わず目が開く

黒崎　蓮斗

お前のこと昨日からずっと頭から離れねぇし、今日見かけた時もそれだけで嬉しくなった

黒崎　蓮斗

俺が俺じゃないみたいだったからお前にはバレないように隠してたんだよ

黒崎　蓮斗

…でも、それでお前を不安にさせるんなら、ちゃんと言う

黒崎　蓮斗

寺本が好きだから。ずっと

寺本　詩

…ほんと、ですか？

黒崎　蓮斗

こんな時に嘘つかないから

寺本　詩

わ、私も…！

寺本　詩

黒崎先輩のこと、めっちゃ好きです!

黒崎先輩は手で顔を隠す

黒崎　蓮斗

…やば

寺本　詩

へ…？

黒崎　蓮斗

まじで心臓に悪い

寺本　詩

先輩…？

黒崎　蓮斗

俺の気持ち、伝わった？

寺本　詩

…はい！

あぁ届いた

ちゃんと私たち

"好き"同士

君との距離、0センチ

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