淡い
淡い淡い
記憶
あなたは覚えていますか?
いや、
憶えていますか?
私には分かりません。
今、あなたは
何処にいますか?
上原 夏帆
最近
良く昔の夢を見る。
それは中学生までの思い出。
楽しかった
そして、
悲しかった
思い出
上原 夏帆
何で消えないんだろう。
どうして私を
苦しめるの?
ねぇ
湊(みなと)
全ては
あなたのせいだよ。
5年前
・・ 私には幼馴染みがいた。
柳沢 湊(やなぎざわ みなと)
優しくて
頼りになるお兄ちゃんみたいな人だった。
上原 夏帆
上原 夏帆
柳沢 湊
上原 夏帆
柳沢 湊
上原 夏帆
上原 夏帆
柳沢 湊
優しい瞳
クラスの雰囲気が
どんより曇っていても
湊の最強の笑顔で
クラスをガラッと
180度を変えた過去もある。
クラスでは中心的人物で
湊があの時
あんな風になるなんて
誰も思っても みなかったんだ。
中学校生活にも慣れてきた頃
湊が突然
学校に来なくなったのだ。
湊のお母さんに聞いても
何も話してくれず、
湊にも連絡をとっても返してくれず。
上原 夏帆
そんな約1ヶ月がたった
ある日の事。
上原 夏帆
休日
散歩してる時に
ばったり会ってしまった。
柳沢 湊
上原 夏帆
雰囲気が全然違った。
冷たい声
獣を見るような
冷たい眼差し
湊は顔に傷をたくさん作っていて
頭からは血を流していた。
上原 夏帆
上原 夏帆
今クラスの誰が見ても
きっとこの人を
湊だって分からない。
上原 夏帆
上原 夏帆
上原 夏帆
カバンからハンカチを取り出し
湊に差し出した。
柳沢 湊
上原 夏帆
その瞬間
頭が真っ白になった。
上原 夏帆
上原 夏帆
__パシッ!!!
上原 夏帆
差し出したハンカチは振り払われ
ハンカチは宙を舞い
地面にゆっくりと落ちていった。
上原 夏帆
柳沢 湊
柳沢 湊
柳沢 湊
上原 夏帆
柳沢 湊
柳沢 湊
柳沢 湊
柳沢 湊
「お前の知ってる湊じゃない。」
そう言われた瞬間
その場を逃げるように
走り去っていた。
あの時は頭が混乱して
考えも出来なかった。
でも、今になって思う。
湊は
「道を踏み外していた」事を。
あははっ…
上原 夏帆
学校の帰り道も何度も何度も
湊が遊んでいる所を見た。
けど、あの冷たい言葉を
突きつけられた以上
話しかける勇気は
なかった。
上原 夏帆
上原 夏帆
上原 夏帆
上原 夏帆
上原 夏帆
上原 夏帆
上原 夏帆
優しい君が好き。
けど、
嫌いになれない。
あんな言葉を突きつけられても
嫌いになれない自分がいた。
大好きなんだよ。
幼い頃の記憶
どうして今、
こんなにも思い出すの?
上原 夏帆
上原 夏帆
柳沢 湊
上原 夏帆
小学生の時
秘密基地を作った。
私たちだけの秘密の場所
けど、秘密基地は
人通りが全くない原っぱだった。
原っぱには大きな木が
1本だけ堂々と植わっている。
そんな時に
秘密基地に何でも箱を作ると言い始めたのだ。
湊くんは大きな木の下で
スコップを持って土を掘っていった。
上原 夏帆
柳沢 湊
柳沢 湊
上原 夏帆
上原 夏帆
柳沢 湊
柳沢 湊
上原 夏帆
掘れた所に箱を埋め込んで もう一度浅く土を被せた。
湊くんは優しく微笑んだ。
柳沢 湊
柳沢 湊
柳沢 湊
柳沢 湊
上原 夏帆
上原 夏帆
上原 夏帆
小学1年の時
二人で作った
「 何でも箱 」
上原 夏帆
そんな事を考える前に
足が動いてしまっていた。
上原 夏帆
確か、ここを右に曲がった所に
大きな木があった気がする。
上原 夏帆
向こうが見えないくらいの
緑の草原が広がっていて
目の前に
大きな木がひとつだけ
堂々と植わっていた。
そうだ
ここが
私たちの秘密基地だったんだ。
上原 夏帆
上原 夏帆
上原 夏帆
上原 夏帆
この場所がある事さえも
忘れてしまっていた。
木の下に置いてあったスコップを手に取り
箱を掘り出した。
上原 夏帆
何年もたっていたため
古く錆びた箱が
年月の流れを表していた。
上原 夏帆
ゴクリと固唾を呑み、
ゆっくりと箱を開けた。
上原 夏帆
何枚もの紙
私の10点の答案用紙
そして
真っ白な手紙
上原 夏帆
上原 夏帆
封筒を開け、手紙を広げた。
そこに書いてあったのは
びっしりと詰まった 綺麗な文字だった。
上原 夏帆
上原 夏帆
夏帆へ
まずは謝らせて下さい。
ごめんなさい。
あの時、夏帆を傷つけた事。
心の傷を作らせてしまった事。
本当にごめん。
どうしても皆に
夏帆に
俺の事を嫌ってほしかった。
上原 夏帆
もうすぐ
死ぬ運命だから。
上原 夏帆
余命宣告を受けた。
“もう長くはありません。”と。
最初は受け入れられなかった。
生きれる可能性は低いけど治療を受けるか、
それとも、そのまま死を迎えるか。
そんな事考える余裕もなくて
俺は 自暴自棄になっていた。
人生の道を踏み外して
不良への道を歩くその自分を
夏帆に冷たい視線で見られていることを知った時
俺は何してんだって心の底から後悔した。
だから、治る確率の低い治療を選ぶことに決めた。
治療を受けるために
何も言わずに引っ越した俺を
あなたは許してくれる訳がないと
分かっています。
この手紙をあなたが見つけてくれるかは
分かりません。
でもこの手紙を読んだ時、
許してくれるなら
俺がこの場所に帰ってきても
俺がそのまま死んだとしても
「馬鹿。」って言って
俺を叱ってください。
許せないなら
俺を
殺して下さい。
あなたが俺を見てくれないのなら
俺はもう
生きる意味はないから。
必ず帰ってくる。
上原 夏帆
必ず。
上原 夏帆
気がつけば
手紙が
心の雨で濡れていて
「どうして気づけなかった」と
何度も何度も自分の心を
叩いて
叩いて
叩きまくった。
上原 夏帆
苦しかったよね。
上原 夏帆
辛かったよね。
上原 夏帆
あぁ、聞いた事のある声。
会いに来てくれたのね?
私の答えなんて
この手紙を読む前から
決まっている。
上原 夏帆
上原 夏帆
君の優しい匂いがする。
柳沢 湊
この思い出は
これからも繋がっていく。
おかえり、湊。
みなみ。様
第1回みなコン
お題「君との思い出」
「僕らの秘密基地」
ーENDー
コメント
118件
読むの遅れましたごめんなさい! 参加ありがとうございますー! すっごい感動できる作品で、最後の終わり方めっちゃ好きです…(´;ω;`)
泣けるわ…笑
つっこんじゃいけないかもだけど、360度って…