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即答出来たはずなのに、 言霊は宙を舞っていった。
それは、予期せぬ出来事すぎたからだ。
今まで、侑李に告白する為に 私に声を掛けてきた男子は 星の数ほどいる。
呼び出すため、連絡先を知るため、 デートに誘うため、好みを聞き出すため。
だけど、私に 好意を伝えてきた男子はいない。
それに加えて、 侑李への気持ちに気付いてからは 侑李との時間のために 学校に通っているようなもので、
1秒たりとも“男子とのお喋り”に 時間は使わなくなった。
彼は一体、どんな瞬間に 私に好意を抱いてくれたのか?
不思議で仕方がなかった。
雫
そう言いかけると
男子
と、よく聞く ドラマのワンシーンのように 切り返されてしまった。
雫
そう反射的に受け入れてしまった自分に
雫
と、もう1人の自分が責め立てる。
男子
雫
男子
緊張がこっちにも伝わってくるほど、 彼の目は真剣だった。
雫
私の連絡先に「悠太(ゆうた)」と 新しい名前が登録された。
雫
悠太
そう言って笑う目元には クシャッと優しげなシワが出来て、
つられて笑顔になってしまう。
携帯の画面には、悠太と侑李が 並ぶように映し出されていた。
話し合えると 前園君と、最寄り駅まで 一緒に帰ることになった。
とは言っても 正門の坂を降りた所にあるバス停からバスに乗れば駅までは10分弱の距離で、
仲の良い友達となら ほんの数秒に感じるほどの短い距離だ。
しかし、つい数分前に 告白されたばかりの私には カップラーメンさえも待てそうにないほど 果てしない時間に感じて
バスが目的地の最寄り駅に着くのを ただ待ち続けた。
何を話したかもよくわからないまま ようやく最寄り駅まで着くと
前園君とは 駅の改札を入ったところで別れた。
私と前園君は乗り込むホームが逆で、 私はここから 逆方向のホームへ向かう階段を 登る必要があったからだ。
階段までくると、 ようやく肺に空気が入る感覚がした。
ちょうどホームへ到着した電車へ乗り込むと、一番近くの空いている場所へ座り 携帯を開く。
画面に浮かび上がる文字をタップすると [侑李]と相手の名前が表示された。
前園君と連絡先を交換した後も なんとなく話が続いてしまって しばらく携帯を開いていなかった。
メッセージは 1時間前に届いていたようだ。
侑李
たったその一行の短いメッセージ。 とりあえず何か文字を打ってみる。
雫
雫
そう打ち終えた後に文字を削除して
雫
とだけ打つと送信ボタンを押した。
侑李には知られたくない
何となくそう思った。
送ったメッセージは 既読になったまま、特に返信はなく
そのまま翌日の朝まで 侑李から返信がくることは無かった。