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第1話 - あ

2023年03月05日

#恋愛

結城真矢

アン

タクくん！聞いてー！

アン

今日同期の子に

アン

アンの彼は優しくていいなぁって言われちゃったー

タク

アンさん？

タク

急にどうしたのですか？

アン

今日、会社でアンがミスしちゃった時に

アン

タクくんが庇ってくれたでしょ？

タク

いや、庇ったって

タク

業務上フォローしただけだけど。

アン

それを同期の子がみてたみたいでー

アン

こっそり彼だって教えちゃったのー

タク

え？彼・・・？

タク

どういうこと？

タク

僕が彼ってこと？

アン

あーもしかして、

アン

会社の子に付き合ってることがばれたら

アン

異動になるかもしれないって

アン

心配してるの？

タク

そうじゃなくて

アン

大丈夫！！

アン

ちゃんと口止めしておいたから！！

タク

そっちの心配じゃなくて。

タク

どうしたらそんな発想になるの

アン

だっていつもアンのこと、気にかけてくれてるじゃん？

アン

もうアンのことが好きだってダダ漏れだよー

タク

気にかけているのは仕事のミスが多いからで

タク

ミスを減らしてもらいたくて声をかけてるだけなんだけど。

アン

そんな言い訳しなくてもいいって！

アン

あ。でも付き合ってることバレないように気をつけてよね？

タク

だから、付き合ってないけど。

アン

あーでもバレてもどうせ結婚するから

アン

そしたら寿退社すればいっかー！

タク

はい？

タク

というか仕事での確認は忘れずにしてください。って

タク

いつも言ってますよね

アン

えーでも今日のはアンのせいじゃないもんー

タク

どういうことですか？

アン

カオが邪魔してきたんだよ！

タク

カオって？

タク

同じプロジェクトのカオさんのことですか？

アン

そう。

アン

あいつ、いっつもアンの邪魔してくるんだよねー

タク

邪魔って？

アン

資料間違えてるとかいちいち言ってくるしー

タク

それはアンさんが間違えてるからですよね？

アン

でもそんなの言わずに直してくれればいいじゃん！

アン

いちいち言ってくるとか小姑かよ！

タク

言わないと間違えに気づかないでしょ

アン

だってあいつにはそれしか取り柄ないじゃん！

タク

そんなことないでしょ。

アン

仕事したそうだからやることを与えてあげてるんだよー？

アン

アンの優しさじゃん！

タク

なんでそうなるの。

アン

てかカオって地味だし、

アン

いっつもパソコンと睨めっこしてるし

アン

なんか人生つまらなそうだよねー

タク

は？

タク

カオさんは仕事出来るし、気配りも出来るから

タク

みんなからも頼りにされてると思うけど。

アン

いやいやそんなわけないじゃん！

アン

アンの可愛さに嫉妬して

アン

いじわるしてくるんだなー！！

タク

カオさんは別にいじわるではなく

タク

アンさんの仕事を確認してくれてるんですよ。

アン

えー何ー？

アン

タクくん、カオみたいなやつの肩を持つのー？

タク

そういうわけではないけど・・・

アン

もうータクくんってほんと、

アン

誰にでも優しいんだからっ！

タク

だから、そうじゃなくて

アン

でもカオみたいなやつに優しくしちゃうと

アン

勘違いしちゃうから気をつけてねー

タク

だから違うって

アン

だってあいつ、友達も彼氏もいなそうじゃん？

アン

あんなつまんなそうなやつとは

アン

誰も一緒にいたくないもんねー

タク

はい？

アン

タクくん、あんな女と付き合わなくてよかったねー

アン

タクくんにはアンがいるからね！！

タク

えっと？

タク

アンさんとはあくまで

タク

仕事上での関係だけなのだけど。

アン

アンはタクくんのためにも

アン

女磨き頑張るからね！！

タク

女磨きって・・・

タク

仕事をもう少しちゃんとやってほしいんだけど。

アン

そういうのはあいつにやらせればいいんだよ！

アン

アンはいるだけで会社を明るくする花なんだから！

アン

会社に行くだけで、もう貢献してるの！

アン

てかもうそんなつまんない話やめようよー

タク

いやこれ、業務の連絡用なんだけど。

アン

あ！そうだ！！

アン

そんなことより、

アン

結婚式はどうしよっか？

タク

はい？

アン

結婚式はどこがいいかなー

アン

やっぱハワイかなー？

アン

うーん。グアムもいいよね！！

タク

いや、だから

タク

そもそも付き合ってないよね。

アン

あーもう結婚式楽しみすぎる！！

タク

もういい加減にしてくれよ…

～数日後～

アン

ねぇねぇタクくん！！

アン

タクくん、カオなんかの相談に乗らされてかわいそうー！

タク

え？

タク

どうして？

アン

今日、会議室で二人で話してるの見ちゃった！

タク

あぁ・・・

アン

あいつにわざわざ会議室に呼び出されたんでしょ？

タク

わざわざって

タク

まぁ呼ばれたのはそうだけど。

アン

あいつ、あー見えて尻軽だから気をつけてね？

タク

え？

タク

そんな話ではなかったけど。

アン

違うの！！

アン

タクくんは優しいから騙されてるの！！

タク

だから、そんなことないと思うけど。

アン

そうなんだって！！

アン

そうやって男を誘う手口なの！！

タク

いやいや。

アン

なんか男受けしそうなハンドクリームも

アン

いつも持ち歩いてるし！

アン

タクくん騙されてるよ！

タク

だからそんなことないって！！

タク

ハンドクリームは手荒れ対策で

タク

男受けなんて関係ないでしょ！

アン

違うよ！！

アン

あいつはいつも、匂いを振りまいて、

アン

男を狙ってるんだから！！

タク

ハンドクリームで匂いを振りまいてるって

アン

自然な感じを装ってるんだよ。

アン

結構あざといよね。

タク

はい？

アン

真面目なふりして男探しに会社来てるんだよ。

アン

気持ち悪っ！

タク

いくらなんでもそれは言い過ぎだよ！！

アン

どうしてー？

アン

本当のことだもん！

アン

アンみたいにモテないから

アン

必死に男漁りしてるんだよ。

タク

カオさんはそんな人じゃないし、

タク

そもそもただ仕事の相談を受けただけで

タク

真面目に仕事をしているんじゃないか。

アン

そんなの仕事してるフリに決まってるじゃん！

アン

タクくんのこと狙ってるんだよ！

アン

気づいてもらえないなんて

アン

地味な子ってカワイソー！

タク

君って子は、

タク

どうしてそんなひどいことを言えるんだ！

アン

だって本当のことでしょ？

アン

アンは思ったことを言っただけだもんー

アン

てかみんなもそう言ってし！

タク

カオさんは本当にそんなつもりなく、

タク

仕事のことで相談をしてきただけだ。

タク

仕事そっちのけで男漁りをしているのは

タク

君の方なんじゃないのか！？

アン

なんでアンが攻められないといけないの？

アン

てかアンは男漁りしてるんじゃなくて

アン

男が勝手に寄ってくるんだよ！

タク

はいはい。

アン

タクくん、カオになにか吹き込まれたの？

アン

アンが怒られるとか

アン

まじ意味わかんないだけど！！

～数日後～

アン

ねぇタクくん！

アン

会社辞めるってどういうこと！？

タク

あぁ。聞いたんだ。

アン

聞いたんだ。じゃないよ！

タク

そう。辞めることになったんだ。

アン

えー？せっかく邪魔くさいカオが辞めるって聞いて

アン

せいせいするって思ってたのに！！

アン

なんでタクくんが辞めちゃうの！？

タク

あぁ。

タク

アンさんに言ってなかったね。

アン

言ってなかったねって。

アン

ちゃんと説明してよね！

アン

仕事辞めちゃったら私たちの結婚はどうするのよ！！

タク

いや、アンさん？

タク

何度も言ってるけど、

タク

そもそも僕たち付き合ってないよね？

アン

は？何訳のわからないことを言ってるのよ。

タク

いや、訳がわからないのはアンさんだけど。

タク

アンさんにはちゃんと言っておかないとと思っていたから

タク

ちょうど良かった。説明するよ。

アン

そうよ！このままじゃ納得できないよ！

タク

僕には婚約者がいるんだ。

アン

え？

アン

なっ、何を言ってるの？

アン

あ！もしかして誰かに脅されてるの？

タク

脅されてるとかではなくて、

アン

ちゃんと本当のことを言って！

アン

私はタクくんのこと信じるから！

タク

いやいや。

タク

ちゃんと本当のことを言っているんだよ。

タク

僕は婚約者であるカオと結婚するんだ！

アン

へ？

アン

カオと？結婚？

タク

そう。

タク

僕とカオは結婚するんだ。

タク

そして同じ会社で働くことになる。

タク

だから二人で会社を辞めるんだ。

アン

へ？

アン

どういうこと？

タク

僕とカオはずっと付き合っていて結婚するってこと。

タク

知らなかったかもしれないけど、

タク

カオは会社の大口の取引先の娘さんなんだ。

アン

えっ、カオが取引先の社長の娘？

アン

えぇぇぇぇーーー！！！！

アン

誰もそんなこと言ってなかったじゃない！！

タク

カオは自分の立場を隠して、

タク

実力をつけるために家族のことは黙ってたんだ。

タク

もちろん社長は知ってたけど、

タク

カオのその心意気を買ってくれて黙っていてくれたんだよ。

アン

そんなぁ

タク

そしてカオは仕事ぶりを認められて

タク

将来その会社の社長に

タク

就任することに決まったんだ。

アン

なっ・・・

タク

で、僕も一緒にその会社に入って

タク

将来的には副社長に就任することになったんだよ。

アン

え・・・

タク

だから二人で会社を辞めて

タク

カオの会社で経験を積むことになったんだ。

アン

そんなことって。

タク

あぁ、あと、

タク

アンさんがみんな言ってるって言ってた

タク

カオの悪口なんだけど、

タク

やっぱりアンさんが勝手に言いふらしていたんだね

アン

え。何よ急に

タク

SNSに投稿されてたの見たよ

アン

え？

アン

SNS？なんのこと？

アン

そんなの私知らないっ！

タク

知らないわけないでしょ？

タク

アンさんのアカウントなんだから。

アン

私のアカウントは

アン

みんなも知ってるものでそんな投稿なんてしてないって

アン

タクくんだって知ってるでしょ？

タク

あぁ、本アカはね。

タク

でもアンさん、

タク

裏アカも持ってるよね？

アン

え？裏アカ？

アン

ないない！そんなの！！知らない！！

タク

アンさん同期へのSNSのコメントさ、

タク

アカウント間違えて投稿してないかな？

アン

え？

アン

あっ

タク

同期の子がアンさんの裏アカ確認して

タク

教えてくれたんだ。

アン

そ、そんな・・・

タク

しかも、その裏アカに

タク

カオのハンドクリームも写ってたんだけど

アン

え？

タク

どうしてアンさんがカオのハンドクリーム持ってるのかな？

アン

違う！それは違うの！

タク

何が違うの？

アン

あ、あれは

アン

私も偶然同じものを持ってて・・・

タク

ん？男受けしそうなハンドクリームを？

アン

あっ！違っ・・・

タク

あのハンドクリームはね、

タク

僕がカオにプレゼントしたんだ。

タク

ちゃんとパッケージにイニシャルも入ってるんだよ。

アン

え。嘘だ。

タク

もう言い逃れは出来ないね？

タク

この件は社長にも報告させてもらったから。

アン

どうして社長に

タク

そりゃ、私物を盗んだのは窃盗罪だし、

タク

しかもSNSに会社も個人も特定できるような

タク

書き込みまでしちゃって

タク

うちの会社にもカオの会社にも影響が出ててね。

アン

そんなぁ

アン

え？じゃ私はどうなるの？

タク

どうなるかは知らないけど

タク

裏アカの存在はもう同期の子から

タク

みんなにも伝わってるだろうね。

アン

みんなにも？

タク

そう。発見したのが同期の子だからね。

アン

どうしよう。

タク

まぁせいぜい頑張ってね。

アン

あっ！待って！！

アン

反省してます！！

アン

私反省してますから！！

タク

そんなこと、僕に言われてもね。

アン

いや、あの・・・

アン

タクさんからアンさんに言ってもらえませんか？

タク

何を？

アン

あの・・・

アン

十分に反省してるから

アン

もう許してあげてほしいって。

タク

は？

アン

ハンドクリームもちゃんと返すから！

タク

謝罪もなくどこが反省してる。だよ。

タク

ハンドクリームも返してもらわなくていいから！

アン

みんなにもあれはほんの出来心だって、

タク

もう僕は退職したから

タク

どうすることも出来ないよ。

タク

自業自得だよね。

アン

そんなこと言わないで

アン

お願いっ！

タク

自分でなんとか対処するんだね。

タク

もう二度と会うこともないだろうし！

アン

お願い！待って！！

～後日談～

タク

その後、アンは会社での噂に耐えきれなくなり

タク

精神的にも参ってしまい

タク

結局自主退職したらしい。

タク

今は地元に戻って、親の監視下でおとなしく暮らしているようだ。

タク

僕とカオはその後、結婚し、

タク

今はカオの会社を大きくするために奮闘しています！！

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結城真矢

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