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終わりの始まり

第1話 - 終わりの始まり

2020年05月09日

#地球最後の日

#恋愛

#ミステリー

#パンデミック

#銅賞

RINZ

律

突然にメッセージしてごめん

結衣

えっ？りっくん？久しぶりね！

結衣

どうしたの？

律

うん、今を逃したら、もう話が出来ないなと思って。

結衣

まぁそうよね。私たちが地球で暮らせるのも、あとわずかだものね。

律

うん。だから、思い残しがないようにって思い切ってみた

律

結衣に、どうしても言っておきたいなと思ってさ。

結衣

えー！ここに来て愛の告白かしら？(笑)

結衣

もう、りっくんが大学の研究室を辞めてから5年にもなるのに！

律

そうだね、そのあと僕は、製薬会社の研究室に入ったからね。

結衣

冗談はさておき、何？

律

んー。冗談でもないんだけどな(笑)

律

俺たち、大学では同じ研究室で同じ研究をしてたじゃん。

結衣

そうだね、りっくんは同期の中じゃ最優秀で、リーダーだったもんね。

結衣

でも結局、教授のあのワクチンは完成しなかったけどね。
いまでもやっぱりできてないのよ。

律

それな、実は俺、ワクチンを、ほぼ完成させてたんだ。

結衣

え？？

結衣

嘘だよ！だってそれなら。。。

律

最後に俺が手懸けてたワクチン。
実験結果が失敗だったって報告したけど、あれ、成功してたんだ。

結衣

それなら！なんで！

律

まあ、まだ完成には遠かったし、他にもいろいろ実験の必要があったんだけどね

結衣

あのワクチンさえ出来れば、今のパンデミックは抑えられて、この汚染された地球から、逃げ出さなきゃならないようなことにならなかったじゃない！

律

そうだね、このワクチンを打てば、絶対にあの凶悪なウィルスには感染しなくなる。

律

ポストに、俺からの荷物が届いてるはずだ。見てきてくれ。

結衣

見たわ。なに？これは？

律

これが、完成したワクチンだ。

律

2人分だけある。

結衣

なぜ私なんかに送ってきたのよ！これを早く発表しましょうよ！
全世界を救ったヒーローになれるわ！

結衣

そうしたら、みんな地球に戻って来れるのよ！

結衣

いくらフォーマットして、環境を地球に似せたからと言って、他の惑星で暮らすのは、やはり危険だし、不安だわ。

結衣

それに、結局、感染経路も分からないままで、移住した惑星にも、このウィルスが、いつ蔓延しないとも限らない。

結衣

みんな出来たら地球で暮らしたいのよ！

律

みんなじゃダメなんだ。

結衣

え？

律

僕たちふたりが地球を救うんだ。

結衣

ちょっと言ってる意味がわからない。

律

このワクチンを打って、僕たちは地球で暮らしつづけるんだ。

律

僕達以外の人間は、他の移植惑星で暮らしていればいい。

律

僕たちふたりが君臨する地球で暮らし続けたいものは、僕たちふたりに従う事を条件に、ワクチンを打ち、国民と認め、特別に地球で共に生活できるようにするんだ。

結衣

一体何を言っているの？！
おかしくなっちゃったの？！

律

そして僕は知っている。

律

このウィルスのベースを作ったのは、君だって。

結衣

何を言い出すかと思ったら！

律

そう、最初は偶然の産物だったんだろう

律

流行性の感染症の研究をするために、既存のウィルスを研究するうち、たまたま凶悪なウィルスを作り上げてしまった

律

そして、好奇心に駆られ、動物実験までして、経過を観察していたが、それを誤って、大学から逃がしてしまった。

律

その実験を鳥類でしてしまったがために、一気にそこから感染が拡大してしまったんだ。

結衣

･･･何故それを。

律

僕はずっと君を見ていたからだよ

律

多分、学術的な好奇心に駆られただけで、まさかこんな大事になるとは思っていなかったんだと僕は信じるが、もしこれを公表したら、世界の人々は、どう思うかな？

律

選択肢は2つだ

律

歴史上もっとも凶悪な殺人兵器を開発して、世界を破滅に追い込んだ悪魔としてのそしりを受けるか

律

優秀な科学者の妻として、共に世界を救い、王者として、歴史に名を残すか

律

僕が見込んだほどの、賢く美しい君だ

律

間違った選択はしないと信じているよ。

結衣

わかったわ。
一日だけ考えさせて。

結衣

明日、私から連絡するわ。

結衣

りっくん、気持ちが決まったわ

律

どちらの選択肢？

結衣

ひとつ聞いていい？

結衣

何故そこまで知っていて、黙って大学を辞めたの？

律

君を俺のものにしたかったからだよ

結衣

まさかそのために。。。

律

そうだよ、君は僕にはずっと高嶺の花だった。

律

でも、その秘密を知り

律

僕が薬を完成させたら、君を救えると思ったんだ。

律

そのために、僕の実験室を与えてくれて、好きなように研究させてくれて、たっぷりと予算をつけてくれる製薬会社に入って、薬を確実な形で完成させることが出来たんだ。
僕がその気になれば、すぐにでも量産できるシステムも整えてある。

結衣

そう。それじゃあ、あなたと一緒になったら、私も一緒に、その研究室に入って、研究できるの？

結衣

昔みたいに。。。

律

もちろんだよ！
実はそれを見越して、君のポストも用意してあるんだ！
明日からでも一緒に研究できるんだよ、あの頃みたいに！

結衣

そう、嬉しい。
また、あの楽しかった頃みたいに、一緒に研究できるのね！

律

それじゃあ。。。

結衣

はい、あなたについて行きます。

律

嬉しいよ！きっと解ってくれると思ってた！

結衣

2人で、新しい地球のアダムとイブになりましょう。

結衣

あなたのポストに、私からの贈り物が届いてると思うの。
見てみてくれる？

律

うん、なにか小さい包みが。

結衣

開けて

律

ん？指輪？

結衣

これ、私の亡くなった両親の結婚指輪なの。

結衣

私もやっぱり女だから、何らかの、愛を確かめ合う儀式がしたいの。

結衣

この指輪をはめて、お互い愛を誓いあって、それから、2人で、ワクチンを打ちましょう？

結衣

私のパパとママと同じく、たとえ死がふたりを分かつとも、最後まで愛し合って行けるように。

律

わかったよ。そうしよう。

結衣

あなたも、指輪を填めたら写真送ってね。

律

これでいいかい？
ちょっとサイズが小さくて、無理やりはめたから、ヒリヒリするよ(笑)

結衣

そうね、内側に小さいダイヤが埋め込んであるから、ちょっと引っかかっちゃったのかもね？

結衣

大丈夫？怪我とかしてない？

律

ちょっと血が出てるけど、どうってことないよ。心配してくれてありがとう。

結衣

このワクチンを打てば、今の汚染された地球の大気の中に出ても、絶対に感染しないのよね？

結衣

早く、飛び出していってあなたに会いたいわ！

律

ああ、あのウイルスに感染したあとでは、それを治す効果はないが、感染は絶対にしなくなる。ウイルスを無効化するからね。

結衣

完成した時に、自分では打たなかったの？

律

これを打つと副作用で数日熱が出ちゃうからね、君と一緒に打とうと思っていたんだ。

結衣

そう、嬉しいわ。

結衣

やっぱり、愛を誓うなら、声が聞きたいわ、電話していいかしら？

律

もちろんだよ！

結衣

通話
00:00

律

結衣！ああ、どれだけぶりだろう！

結衣

もう、あなたって呼んでもいいのかしら？
それとも気が早いかな？

律

夢のようだよ
あまりに嬉しすぎて、目眩がしてきた(笑)

結衣

ふふふ、オーバーだわ！

結衣

夢のようだといえば、あなた、私の夢って知ってた？

律

いや、知らないね、これから、長い時間をかけて、少しづつ君のことを知っていけるのが嬉しいよ。

結衣

ううん、時間なんていらないわ(笑)

結衣

今教えてあげるんだもの。

律

一体なんだい？

結衣

地球の征服♥️

律

随分大きな夢だな！(笑)

結衣

うふふ、子供の頃の野望よ(笑)

結衣

でもね、思うのよ。

結衣

地球を征服したいなら、原子爆弾やミサイルなんかを開発するよりも

結衣

直せない病気のウイルスを開発する方が

結衣

ずっとお手軽で安上がりで、建物やインフラもそのまま使える。

結衣

無駄がないわよね
なんてったって、目に見えないくらい小さいしね。持ち運びにも便利だわ。

律

ずい、ぶんな、ブラックジョークだ。な。

結衣

あら？どうしたの？息が切れているわ？
呼吸が苦しそう。

律

いや、さっき、、から、なんか。。くるし。。

結衣

研究室で開発したものは、まだまだ未完成だったわ。

結衣

あなただけでなく、私も、そのあと実験を重ねて、より一層毒性が強く、感染爆発を起こしやすく、直ぐに重症化するウイルスの開発に成功しているの。

律

ゆ。。。

結衣

でもねぇ、ウイルスってそれだけじゃ武器にならないのよ。

結衣

ワクチンも揃えて初めて武器になる。

結衣

でなきゃ、脅迫の材料にしかならないわ。

結衣

でも、それがどうしても出来なかった。

結衣

やっぱりあなたは天才ね。作っちゃうんだもの。

結衣

さっきの指輪には、開発した強毒性のウイルスをたっぷり針に仕込んで埋めておいたわ。傷口から入ったら、ひとたまりもないはずよ。

結衣

何の音もしなくなったわね。

結衣

もう意識はないでしょうけど

結衣

大好きよ、愛してるわ、律

結衣

ほんとよ、最後の最後で、こんなに私の役に立ってくれるなんて。

結衣

この凶悪なウイルスと、それを防ぐ唯一のワクチンを手にした私は、この世界の全てを思うままに動かせるわ。

結衣

ありがとう

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