テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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その声に届くまで

第22話 - 22

105

2025年02月08日

#ウインドブレーカー

#WIND BREAKER

水飛　怜

桜

…

柊

鈴がお前と話したいらしい

柊

2人で

桜

は？なんで俺なんだよ

柊

それは聞いてない

柊

…多分、桜以外には話さない

桜

…とりあえず普通に話したらいいのか？

柊

そうだ

柊

俺たちは一旦学校に戻る

柊

話が終わって、鈴が大丈夫そうだったら2人で戻ってきて欲しい

桜

わかった

桜

…似てるのかもな

桜

来たぞ

鈴蘭

あ……ありがとう

桜

…何がだよ

桜

別に、感謝されるようなことしてねぇだろ

鈴蘭

そんなこと言いながら顔は真っ赤だけど

桜

うるせぇ！

鈴蘭

…桜くんらしいね

桜

は…？

鈴蘭

桜くん、あの時は私を見逃してくれてありがとう

桜

…別に

鈴蘭

さっきはごめんね、偉そうなこと言って

桜

そんなん忘れた

桜

ていうか、そんなこと言うために呼んだ訳じゃねぇだろ

鈴蘭

あ…うん

鈴蘭

その…桜くん、

鈴蘭

協力…してくれないかな

柊

…おい梅宮

梅宮

なんだ、柊

柊

いい加減鈴から離れろ

目の前には鈴に抱きついて離れないバカみたいなうちの頭取がいた

梅宮

嫌だ！！絶対離れない！

鈴蘭

梅…暑苦しい

梅宮

ごめん

柊

いや離れろよ

梅宮

それは無理！

鈴蘭

じゃあ梅、獅子頭連に連れてってよ

梅宮

おう！……って、え？

鈴蘭

私、十亀くんと喧嘩したい！

梅宮

え〜…

柊

俺と梅宮はやる事があるからあいつらの場所に案内できないぞ

鈴蘭

それはほら、桜くんがいるからさ

柊

…まぁ、それもそうだな

柊

でも、あんまり無理しすぎるなよ

鈴蘭

わかってるって！

鈴蘭

じゃあ行ってくるね

梅宮

おう！いってらっしゃい！

柊

いってらっしゃい

鈴蘭

桜くん！

桜

来たか

鈴蘭

梅が全然離れなくてさ〜

鈴蘭

ごめんね

桜

気にすんな、行くぞ

桜

にしても、なんで俺なんだ？

鈴蘭

梅達が納得しやすいから

桜

なんだよそれ…

鈴蘭

桜くん、付き合ってくれてありがとうね

桜

別に

桜

断る理由がないからな

鈴蘭

でも、迷惑かけちゃうよ？

桜

1人で突っ走るよりずっといい

鈴蘭

あははっ、それもそっか

鈴蘭

じゃあこれは2人だけの秘密だね

そう言って意地悪く笑うから俺は益々理解できなくなる

桜

…今から遠足にでも行くのか…？

鈴蘭

違うよ？

あのとき、俺は鈴から頼みを受けた

鈴蘭

その…桜くん、

鈴蘭

協力…してくれないかな

桜

協力？

鈴蘭

うん

鈴蘭

…最近、1人で散歩してる時にお父さんやお母さんのことを思い出すことが多くて

桜

それは元のか？

鈴蘭

うん

鈴蘭

何が原因で思い出すのか分からない…

鈴蘭

だから、その原因を探したいと思ってるの

桜

…それで俺もってわけか

鈴蘭

……ごめんね、桜くん

俺は鈴の顔を見る

それはいつもの鈴で明るい笑顔を浮かべていた

鈴蘭

こんな事、嫌だよね

桜

嫌なんかじゃねぇ

桜

だから

俺は鈴に目線を合わせた

桜

そんな顔二度とすんな

鈴蘭

っ…

鈴蘭

…迷惑じゃないの？

桜

迷惑なんかじゃない

桜

俺はお前に頼み事されるよりも

桜

お前が楽しくもないのに笑ってる方が嫌

桜

笑うのは、楽しい時だけでいい

鈴蘭

…ありがとう

桜

…

鈴は十亀に会うって言って出てきたらしい

あいつにも口裏合わせるように言った方がいいのか…？

鈴蘭

桜くん？

鈴蘭

大丈夫？

桜

あぁ、大丈夫だ

桜

十亀に言わなくていいのか？

鈴蘭

あ〜…

鈴蘭

まぁそこまでするとは思えないし、いいんじゃないかな

鈴蘭

それより早く行こ！

鈴は俺の手を握り、走り出す

桜

なっ…

桜

なんで手繋ぐんだよ！！

最初に着いたのは駅だった

鈴蘭

うわ〜！懐かしいね〜

桜

なんで駅なんだ？

鈴蘭

ここね、昔からよく使ってた駅なんだ

鈴蘭

こういう場所で思い出したりするのかな〜って

「うわー！こんなのあった〜」と言いながらあちこちに歩いていく鈴

桜

…ちゃんと笑ってんな

その顔は心の底から笑っていた

次に来たのは水族館だった

鈴蘭

ここね、私の誕生日によく来てたところ

鈴蘭

私、小さい頃は魚が大好きだったんだ

鈴蘭

種類とか知らないけど、自分の知らない世界を知ってる生き物だから好きだったんだろうなぁ

まるで他人事のように鈴は話す

柊

鈴は大分変わった

柊

別人みたいになったんだ

桜

前のはどんなだったんだ？

柊

そりゃあもう、わがままだったよ

柊

喧嘩好きで、何かあったらすぐに俺の手を引っ張っていく

柊

…でも今となっては、あいつは1人でいようとする

柊

誰にも頼らず、弱音も吐かない

柊

もっと頼ってくれたら…

柊

…なんて、俺が言える立場じゃないな

鈴蘭

桜くん

桜

…なんだ？

鈴蘭

ちょっと目閉じてくれない？

桜

は？なんで

鈴蘭

いいから

桜

…わーったよ

目を瞑ると誰かに手を握られた感触があった

鈴が俺をどこかにつれていこうとしている

大分歩いた後鈴は止まった

鈴蘭

桜くん、目開けていいよ

桜

…！海…？

鈴蘭

うん！ここは来たことないでしょ？

桜

は……

桜

どういうことだよ

鈴蘭

あははっ、そんな怒らないでよ

鈴蘭

前にみんなで遊園地行った時、桜くんも行ったことないって言ってたでしょ

鈴蘭

だから今日は桜くんが知らなそうなところに連れてきたんだ

桜

なら、お前の話は

鈴蘭

それは本当だよ

鈴蘭

まぁ、そっちはついでって感じかな

桜

ついでって…

鈴蘭

…桜くんにはまだ可能性がある

鈴蘭

いい意味でも、悪い意味でもね

桜

可能性…？

鈴蘭

ほら、桜くん！

そう言って俺の手を引く鈴は

鈴蘭

もっと向こう行こう！

無邪気に笑う子供のようだった

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水飛　怜

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