いつからか 君を探していた。
顔も名前もわからない。
会ったことも 話したこともない
そのはずなのに。
見たこともない笑顔が
聴いたこともない声が
何故か心の奥に 引っかかっていて
ずっと、私は
君に焦がれている。
ヨゾラのナカで ワタシは
夜空ノ中デ
夜宙の中で、
サーチ
Search ?
探している。
夜空の中にひとり。
周りにあるのは、 小さな自然の光。
ふわふわと漂う私は、 理解した。
頬をつねると、 指に柔らかい感触が伝わる。
痛くも痒くもない。
暑くも寒くもない世界で
いつもと同じように、 冷たい宵闇を漂う。
導かれるように 彷徨(さまよ)う 。
意識しなくても、 身体が空を滑った。
ゆらゆらと、まるで 取り憑(つ)かれたように
君を探している。
手がかりなんて何もないのに
狂っているかのように 盲目的になってしまう。
馬鹿みたいで、 ありえないって
脳内では処理済みなのに。
だって
見たこともない笑顔が 浮かんで
聴いたこともない声が 蘇って
ひらひら、と ちらついた瞬間に
心臓が爆発してしまったような
激しい衝撃が身体中に広がる。
感覚なんてないはずなのに
顔が燃えたみたいに、 異常に熱くて
きゅっと締めつけられる 胸が痛い。
だけどその熱さも痛みも、
全然悪くなくて
むしろ心地よくて。
恋をしているんだ。
だから、どうしても
運命、っていうものを 信じてみたくて。
窓を開けて、 朝の空気を吸った。
頬杖をついて 濃度が高い青空を見上げる。
寒いけど、 暇つぶしと眠気覚ましには 丁度いい。
ふうん、流星群。
近くの席で小さく 繰り広げられる 他愛ない会話に
興味のないふりで こっそりと耳を傾けながら
ぼんやりと思う。
私の世界でも、 星って降るのかな。
寒気に負けた、弱々しい 朝陽に暖められながら
右隣を盗み見た。
そっと手を伸ばして、 机に突っ伏して眠る 彼の袖をそっと引っ張る。
おもしろいほど肩を弾ませて、 文字どおり飛び上がった彼は
やがて顔を歪ませた。
さらりと表情を一転させて、 にっと笑う彼に
ほんの少しだけ戸惑って、 視線を逸らす。
俺でいいのか、と 怪訝な様子を見せる彼に頷いた。
彼の承認を得て、私は口を開いた。
深呼吸して、ひと息に言う。
気づけば、もう 懇願するように尋ねていた。
言葉を切って顔を上げると、
時間が止まったかのように
瞬きもせずに私を見つめる 彼と目が合った。
どくんと波打つ鼓動を感じて 慌てて俯く。
「意味わかんね」とか
「どうせ夢だろ」って
あっさり流されて しまうかもしれない。
周囲の声は全然聞こえなくて
彼が息を吸う音だけが響くように 感じられる。
口を開いたり閉じたり、
視線を上下左右に 忙(せわ)しなく動かしたり
天井を仰いだり 項垂れたりして
ようやく彼は 溜息をついた。
予想外の言葉に、 反応が何拍か遅れた。
矢継ぎ早に質問を重ねると 彼は穏やかな口調で答える。
確信を持った言葉に 面食らったのを隠して ぼそぼそと肯定すると、
それに、と彼は続けた。
こんなに真剣に 考えてくれるなんて 思いもしなかったし
彼の笑顔が眩しくて、 ものすごく動揺した。
ありえない。
私が焦がれているのは あの人のはずなのに。
思ったより大きな声が出て、 教室内の視線が私に集まった。
数秒経つと、それは ぱらぱらと散っていく。
彼を真っ直ぐに見つめて、
ずっと抱えていた思いを 言葉にした。
え、と微かな声を漏らす彼から 視線を離さない。
噛みしめるように 彼は答えた。
自分の気持ちがわからない。
見ず知らずのあの人に 感じる想いと同じ感情。
目の前の彼に対しても 同様に湧き上がる。
君は、どこにいるんだろう。
どうしたら見つかる?
星降る夜に、
なんて全然 信じられないけど。
もしも奇跡が存在するなら
起こってほしい。
私だけの夜が来る。
空をゆるやかに 横切って
ふわふわと君を求める。
上のほうで一瞬、 ちらりと何かが光った。
そして、 小さく輝いた点が
すうっと宙を滑り、 消えていく。
それを合図としたかのように
たくさんの星が降りはじめた。
言葉が口をついて出る。
一際眩しい光を放つ 星が流れた。
それが、 目の前でふっと消えたとき
なんだか、予感がした。
星と月以外の気配を感じて、 振り向く。
いた。
君が、いた。
でも、
私たちの間に、 流れ星がカーテンを作る。
きらきらと眩しくて、 届かない。
大きすぎる鼓動を 抑えられなくて
息が苦しくて、 声が紡げない。
私と同じように 呆然としていた君
彼は、涙が出ちゃいそうなほど 綺麗な微笑みを浮かべて
その瞬間
私の意識が
サイダーのように 淡く弾けていく。
《この世界》で 知らなかっただけ。
だけど、私はずっと 恋焦がれていた。
君が好きだ。
ここがどんなに 不安定な世界でも、
彼が好き。
夜宙サーチ
朝、目覚めて 頬についていた涙の跡は
夢みたいな夢の話を、 現実にしてくれた。
コメント
15件
表現の仕方がすごすぎます! 特に最後のグレーのシーンとか……。 すうさんのストーリーは、内容もだけど タイトルもすっっっっっごい好きです……! 今回もありがとうございました……😢✨
すうさん! 遅くなりました😢 参加ありがとうございます✨ 成宮くんが運命の人ってことに最後まで気づかなかった神崎ちゃんが可愛いです…💖 改めて参加ありがとうございます🥺
うわあああ……✨ ロマンチックでタイトルが素敵すぎる… 成宮くんが運命の人だったんですね!?? あの成宮くんの教室での反応は、ひょっとして『自分が神崎ちゃんの運命の人だ』とわかっていたのでしょうか…🤭