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紫蘭
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朝、目が覚めると
ya
何かを失った喪失感に襲われる。 毎日毎日… いつからだったか。それすらも忘れてしまった。
ya
ゴミ捨ての日?スーパーの特売とか? そんな考えが頭に過るが、すぐに消えた。 もっと、もっと大切なこと。 忘れちゃいけないこと。 それなのに…
ya
ダイニングの机の上に、置き手紙と、病院の診断結果のようなものが置いてあった。 それよりも、手紙のほうが目に入った。
ya
おはよ! 忘れ物しちゃったから一回家に帰るね。 朝ごはんあるから温めて食べてね~!
名前が書いてなかった。 母親?…いや、もっと達筆なはずだ。 これは丸っこい、女子が書くような文字。
ya
机の上には、ご飯と味噌汁。焼き魚が綺麗に並んでいた。
ya
ぱくぱくと食べ始めた。
ya
テレビをつけた。 ニュースキャスターが淡々と話す。 玉突き事故や、強盗のニュースが流れてくる。 「続いてはこちらのコーナー!」 テレビの中のキャスターが元気にそう言っている。 「若者に人気!感動小説!」
ya
先程まで死亡事故などの暗いニュースをやっていたのに、なんでこんなに早く切り替えることができるんだろう。 不思議で仕方なかった。 「…第3位!__」
ya
小説なんて、興味が無かった。 テレビを消そうと、リモコンを手に取った。 「えーこの小説はですね、毎日記憶を失ってしまう女の子と__」
ya
どくん。 心臓が大きく鳴った。 テレビを消した。 まだ心臓が収まらない。
ya
たかが小説だ。 非現実的、フィクションなんだ。 自分にそう言い聞かせる。 だが、何故か冷や汗が止まらなかった。
ya
足が震えていた。指の先も、冷たくなっていた。
ガチャ
ya
扉の空いた音がした。 俺は、一人暮し。誰かが入ってくるなんてことはかいはずだ。
et
ya
その女は、困ったように笑い、俺の名前を呼んだ。
ya
et
ya
et
彼女は、悲しそうに微笑んだ。 ふと、リビングの棚の上に飾られた写真に目が行った。
写真の中には、手を繋いで笑う、俺と目の前の彼女。 何枚も何枚も。 制服ディズニーの写真、大学の入学式… どれも、2人とも幸せそうだった。
ya
全部、思い出した。 今目の前にいる女は…俺の彼女だ。
ya
床に座り込んだ。 etさんが俺のことを抱き締めた。
et
ダイニングテーブルの上に、手紙と一緒に置いてあった病院の診断書が風で裏返った。 『氏名:赤井 ya 病状:若年性アルツハイマー病』 「若年性アルツハイマー病とは」 一般的に65歳未満で発症するアルツハイマー病のこと。アルツハイマー病は、脳の神経細胞が少しずつ壊れていき、記憶・判断力・言葉を使う力などの認知機能が徐々に低下していく病気である。
コメント
1件
「毎日記憶を失う女の子の小説」ってテレビから聞こえた瞬間のyaくんの動揺、めちゃくちゃ胸にきた…。それでetさんが現れて、最初「誰だよ」って拒否するところから写真で思い出す流れ、構成が上手すぎる。診断書が風でひっくり返るラストも静かに効くわ。若年性アルツハイマーって設定、解像度高くて響いた。続き気になる🔥