やぐらから聞こえる
リズム良い太鼓の音
朱色に光る提灯
わたあめの甘い匂い
笑いながら歩く人々
午後六時 君と待ち合わせ
少し遅れた君は
優奈
申し訳なさそうに 言っていた
ボクはどう返したら良いか 分からなくなって
ボク
小さく呟く事しか出来なかった
初めて見る浴衣
色っぽく見えるうなじ
頭の上でまとめた髪
翻る袖
全てが金魚すくいの 水面みたいに輝いていた
優奈
優奈
振り返って笑う君
暴れるように鼓動が鳴った
その度、君に聞こえないよう 祈る
ボク
やったぁ! と笑う君
本当は、金魚すくいを している君を見ていたいだけ
……なんて言ったら 君は引いちゃうかな。
優奈
はしゃぐ君の 無邪気な声
ボク
笑いながら、遠慮した
優奈
分かりやすく うなだれていた
.
.
.
優奈
元気な声で 叫ぶ君
おじさん
小銭を渡すと同時に
金魚を入れる器と ポイを受け取る君
優奈
優奈
君はボクの方を見て 首を傾げた
水槽の中には 赤と黒の金魚が数匹
どれもきらびやかで 気持ち良さそうに泳ぐ
ボク
ボク
朱色に近い色の金魚を 指差した
優奈
気合い十分な君
それを見て 少し、微笑んだ
金魚が掬えて ご満悦な君
かき氷やわたあめを 両手いっぱいに持つ君
全く覚えてない盆踊りを 必死に踊った君
あっという間に時間が過ぎた
だんだん空が闇に染まって
グラデーションが無くなって
宝石を散りばめたみたいに 星が輝いた
ボクらは赤い橋の上で 花火を待つ
辺りがざわざわと うるさくなって
同時に、人も多くなってきた
もうすぐ、花火が 始まるんだ
ボク
ボク
呟いて ボクは君の左手を掴んだ
陽だまりみたいな暖かさが ボクの右手を伝う
離したくない……
そう思った時 君が空を指差した
ヒューッと金魚のように 空をなぞる火玉
指差した手首から さっき掬った金魚を見た
その瞬間
ドォンッ
轟くような音
それと同時に
大きな花が空に咲いた
金魚越しの花火
キラキラと輝いて パチパチと散ってゆく
スパンコールみたいな 火の欠片
.
歓声をあげる人々
ボクは金魚を見ることしか できなくて
ボク
小さく、呟いた
優奈
ボクの方を見る君
不思議そうな声が愛らしくて
つい、頬が緩んだ
ボク
ボク
ドォンッ
「す……き。」
言葉と同時に 花火が咲いた
伝われ。
心からそう願ったのに どうして?
きっと、聞こえてないだろうな……
・
・
・
優奈
優奈
花火があがっていない パチパチと火の欠片が落ちる時
確かにそう、聞こえた
咄嗟に君を見る
ボクの鼓動は これ以上無いくらいに 高鳴って
目線の先には 頬を朱色に染めた君
ぎこちなくはにかんだ 金魚のようにきらめく 君がいた
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コメント
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いるよ〜
いる〜?
そちらこそ!