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コネシマさんにぐんぐん引っ張られ、先生に背を押されながら着いた先は屋上。

閉まっているはずの扉はがっつりと開いていて、南京錠は破壊されていた。

屋上の鍵は錆びているのもあって中々に手強いけど、まさか破壊する奴がいるとは。 センコーに怒られても知らんぞ。

屋上からは、騒がしい声が聞こえる。 会長サマと2人っきりやと思ってたのに、声の量や種類から考えても10人以上はいる。

こんなことなら学校来なけりゃ良かった.....

項垂れる僕を見向きもせずに、コネシマさんは先陣を切って屋上に飛び込む。その笑顔は快活そのもの。

コネシマ

よお!大先生連れて来たで!!

コネシマさんの大声での挨拶と共に、コネシマさんに腕をグッと引っ張られ屋上につまみ出された。

そこに居たのはざっと11人。 コネシマさんの声を聞いて、そして僕の姿を見て、11人全員が目をまん丸に見開いた。

全てを見通すようなエメラルドが

情熱を秘めた燃えるようなルビーが

闇を思わせるほどの黒曜石が

光をそのまま宿したかのようなシトリンが

真っ直ぐなルベライトが

哀愁漂うタンザナイトが

無邪気に爛々と輝きを増すペリドットが

凛と佇むムーンストーンが

幼さを残したあどけないアメジストが

煌々と輝き惹き付けるアンバーが

そして、見るもの全てを魅了する、血を連想させるようなガーネットが

11色の瞳が、視線が、僕の体を貫き射抜いた。

ぁ、えっ......と.....

罪悪感、衝撃、悲哀、歓喜。

喜怒哀楽全ての感情が混ざったぐちゃぐちゃの視線を向けられ、声が詰まる。

どんな顔をすれば良い?どんな声をかければいい?どんな振る舞いをすれば良い? なにをすれば、この場を凌げる?

色んな思考が脳内を駆け巡り、それが圧となって心臓の鼓動を速くする。息がしづらい。

どうすれば.....

っ!?

長考モードに入った僕だったけど、すぐに意識が引き戻された。

誰かが、ラグビーを彷彿とさせるタックルで突っ込んできたのだ。 ヒョロガリ&長考モードで周囲が全く見えてなかった僕は、当然ながら耐えきれずに尻もちをついた。

突っ込んできたのは、栗色の髪を雑に束ね、黄緑のパーカーを制服であるジャケットの下に着た、ペリドットの瞳が特徴的な子だった。

その子は僕をしっかりと抱き締めて離さない。胸の辺りに顔を埋めては、ズビズビ鼻を鳴らしている。

ゾム

うわ"あぁぁあん!!!

ゾム

だいせんせぇえええ"っ!

その子は誰かの呼称を叫びながら泣いていた。 だから、だいせんせいって誰だよ。

幼い子供のように、自分の感情を全て吐露するような、こっちまでつられてしまいそうな程の悲しい泣き叫び声。

ガッチリ僕をホールドして動かない彼は、しばらくの間泣き続ける。

すると、別の子も黄緑の彼と同じように突っ込んできては僕を抱き締め泣き始める。

空色のふわふわの髪に、水色のニットベスト、太陽を閉じ込めたようなアンバーを奥にしまい込む、ぐるぐるの瓶底メガネ。

黄緑の彼と同じように、目を真っ赤に腫らして絞め殺す勢いで強く抱き締めてくる。

チーノ

ぞむのばかあぁあ"!

チーノ

つられ"たじゃんかあ"ああぁ!

チーノ

う"わああんっ!!

どうやら1人で泣いていたけど、黄緑の彼につられて僕に突進してきたらしい。

僕は2人にガッシリホールドされ、身動きが取れなくなってしまった。

ちょ、たすけ....

助けてもらおうと、恥を忍んで懇願の眼差しで周囲を見渡す。

しかし、周りの人達は全員母性に満ち溢れた目をこちらに向けていた。 コネシマさんからは「しばらく我慢せえ」 とのこと。

何が何だか分かんなくなってきた。

え、えっとー.....

とりあえず、前の会長サマと同様頭を撫でてみる。お母さんになったつもりで、やさしく、くしゃっと髪をかき混ぜるように。僕はこう撫でられたら安心するな、と思う撫で方で2人を撫でる。

一瞬2人の体がぴくっ、と震えたけれど、案外されるがままになった。逆に、猫のように頭を手に擦り付けてくる。

ゾム

撫で方、おんなじや.....グスッ

チーノ

ん.....もっとなでてや.....ズッ

ぁ、はい.....

弱々しい声で頼まれてしまえば、断ろうにも断りきれず。機械的に頭を撫で続ける僕に、誰かが苦笑を漏らした。

しばらく2人の頭を撫でたあと、会長サマに目配せで「こっちへ来い」との指示があり、2人を連れて会長サマたちが座るブルーシートへ座った。

橙の彼は移動の中で薄紫の子の元へ行ったけれど、黄緑の子は僕の左腕を抱いて離さなかったのでそのまま。

グルッペン

すまんな、鬱

いや、こんな人いるなんて聞いてませんよ....

グルッペン

サプライズだ

余計なお世話です

コネシマ

なんや、グルッペンと鬱仲良いんか?

いや、全く

脊髄反射並の速さで返す。 仲良くなんてないし、こんな底辺の僕が仲良くなっていい相手じゃない。

しかし、何が気に入ったのか、コネシマさんは顔に見合わない豪快な笑い声を響かせた。

コネシマ

いやー、このテンポやわ

コネシマ

やっぱこれくらいが丁度ええな

と、1人でうんうん頷いている。 本当に何が気に入ったのだろうか。もしかして僕のあの秒の返し?あのテンポ感が好きなのか、あの人。

グルッペン

さて、今日はお前に私の仲間を紹介しようと思ってな

グルッペン

ここにいる13人、全員が私の仲間だ

彼は自慢げに、少し胸を張りながら一人一人の瞳を見つめる。

最初に見たのは、エメラルドの彼。 亜麻色のふわふわでアシンメトリーな髪型で、後髪はふわりと束ねている。どうやら糸目なようで、綺麗なエメラルドは仕舞われていた。深緑の萌え袖セーターを着ている。

グルッペン

コイツはオスマン、生徒会副会長だ

グルッペン

男女構わず食うから気をつけろ

オスマン

よろしくね~

あんな可愛い顔して....?

にっこりと微笑む彼は可愛い、というよりは妖艶という言葉が合っていて、なんとなく理由が分かった気がした。

次に、会長サマはルビーの彼に視線を合わせた。 緩く七三に分けられた黒髪に、真面目な印象を与える黒縁の眼鏡。いかにも優等生といった風貌。この中では珍しく制服をかっちりと着込み、真っ赤なネクタイを付けている。

グルッペン

コイツはトントン、生徒会書記

グルッペン

コイツは情緒不安定だから、逆鱗に触れそうなのは控えるのが身のためだゾ

トントン

よろしくな、鬱

笑顔は意外と人懐っこい。

彼の笑顔を見ると背中に嫌な汗が走るのだけど、これは何故だろう。 まるで怒られるのを待っている時みたいな.....

次に目を合わせたのは黒曜石の子だった。 短く切りそろえられた黒髪に、黒の細フレームの眼鏡。マスクを付けているのが印象的だ。制服であるカッターシャツを肘あたりで捲っている。

グルッペン

そいつはひとらんらん、剣道部の部長を務めている

グルッペン

滅多に怒らんが、キレると外道のド畜生になる

ひとらんらん

よろしくね

ニコッと微笑む彼からは優しさが滲み出てる。絶対に優しい。

けど、温厚な人ほど怒らせるとヤバいからなぁ。肝に銘じておこう。

次は、アクアマリンの彼。 ツンツンはねた金髪に、端正な顔立ち。夏服である半袖カッターシャツの下に、真っ赤なTシャツを着ている。

グルッペン

もう知ってるだろうが、そいつはコネシマという。2年だがサッカー部のキャプテンだ

グルッペン

とにかく喧しい

コネシマ

よろしく頼むな!

うるさいのは知ってる。

3年もまだ引退してない今、2年でキャプテンとは相当の実力者なんだな。なんか、女子からの圧倒的支持もありそうっちゃありそうだけど。

次は、シトリンの彼。 くせっ毛な焦げ茶の髪で、可愛らしいブタのピンが付いた赤のニット帽を被っている。半袖のカッターシャツで、肌は日に焼けていた。

グルッペン

それがシャオロン、野球部キャプテンだ

グルッペン

不人気がアイツの唯一の取り柄だゾ

シャオロン

よろしくなー!

笑顔が眩しい。ニカッと歯を見せて笑う姿は、万人に好かれやすい人懐っこいもの。うわ、コミュ強だこの人。

不人気が唯一の取り柄だと会長サマ言ってたけど、真逆だろ。絶対陽キャ。不人気要素がこれっぽっちもないぞ。

次いで、少しキョロキョロと視線を彷徨わせてから見たのは、ルベライトの彼。 きちんと切りそろえられた明るい茶髪に、ぱっちりとした大きな瞳。顔の横には天と書かれた面布を付けている。半袖シャツにピンクのニットベストを着ていて、周りより一回りくらい体が小さい。

グルッペン

そのホビットがロボロ、放送部のエースだ

グルッペン

アイツのチビは遠慮なくイジっていいからな

ロボロ

よろしくな

たった一言でも分かる声の良さ。

これはエースと呼ばれるに相応しいと思う。下手したら声優さんになれそう。あ、でも背低すぎてマイク届かへんか。

ロボロ

おい、今良からんこと考えたやろ

超能力者....?

ロボロ

やっぱ考えとるやんけ!

コネシマ

あっはっはっ!!!

コネシマ

ええぞ鬱ぅ!

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