君を待つ間
私はただただ、空を見上げて
君の好きな雨雲を探す
雨が降るのは嫌いだけど、
濡れるし、湿気でぐゃぐしゃで、
君に会いたい待ち合わせが
君に会いたくない待ち合わせに変わる
*
君との待ち合わせ場所に向かう間、
俺はただただ、下を見る
君の好きな、ガラスの破片を見つけるために
本当は危ないけど
ガラスの破片を持っていると
それだけで君がそばにいるみたいで
離れて寄っての
この関係を
どうにかできるんじゃないかと、
贅沢すぎるぐらいに思ってしまう。
いつの間にか歩幅はゆっくりになり
その間についているだろう君の
横顔を想像して嬉しくなる。
*
君が来た時、私は知らないふりをする
.........恥ずかしくて顔を下げられないから。
空を見て誤魔化す
それでいっぱいいっぱいで
「ツン」
肩をつつかれただけで
嬉しくなってしまう。
こんな私は...何も伝えられないまま?
こんなギクシャクした会話で
近寄ることも出来ない
...そうだった。
私たちは近寄らなくてもいいんだった
ただ、文化祭の劇の練習をするだけだった。
*
『隣の男の子』
私たちが主役をする劇は
恋愛モノだった。
...君がかっこいいから、
君が素敵だから、
主役に選ばれた。
本当は、本当は、
私なんかが、やるはずじゃなかった。
この話にはキスシーンがある。
本当にするわけじゃないけど
...けど、顔が近づくのは
.........
本当は、恋香ちゃんが
やるはずだった。
うちのクラスの人気者で
すごく、すごく、
...君とお似合いで
でも、
*
...好きな人だからこそ、
このキスシーンは緊張して
...怖くなる
...俺は、天野 恋香と恋愛劇をやりたくなかった。
...だから、チャンスだと思った。
俺にやって欲しいなら、
相手役は君がいいって
みんなの前で言った。
君は鈍感だから、この言葉の意味を知らないと思うけど
俺は.........
*
聞けない。
なんで私を選んだのか、
恋香ちゃんの方が可愛いし
君とお似合いなのに...
恋香ちゃんは君が好きなんだよ。
...私と、
ライバルなんだよ。
君はきっと恋香ちゃんを選ぶ。
...なら、この劇、
...使って、本当にキスしちゃおうかな...
...私には、無理かな
*
文化祭当日、
校舎内はたくさんの生徒と出店で賑わっていた。
君は笑いながら言う
さりげなく、励まして体育館へ向かってしまう。
.........あと、
二分
*
ベルが鳴る。
劇がスタートした。
私の心臓は高鳴ったまま。
でも自然と緊張はほぐれていく。
.........想像よりも
たくさんのお客さんがいた。
全校の2分の1以上は集まっている。
私は窓をむく
...予定では私が振り向いた後、
君とフリでキスをする
はずだった。
君の唇が、
私に触れて
甘くとろけた。
君が笑う。
見ているみんなは息を飲んで次のセリフを待っている。
焦って言葉が出ない
私は、君の顔を見ることが出来ない
君が私のセリフを言った。
...でもこの後、好きって言いながら君に頭を撫でられる設定なのに...
...キスのシーンから
話が変わってる...?
この主人公は僕じゃなかった...?
ああ、そっか、
私、好きでいていいんだ。
明日からの待ち合わせは
君との思い出を思い返すことにしよう。
もちろん、このサプライズも。
fin…
コメント
3件
はあああぁぁぁきゅんです(*´ `)♡ テキストとセリフのバランスもストーリーも良過ぎて……😭 台本の台詞が変わったとこでにやけてしまいました🥰((((すみません