冷徹御曹司と一年だけの契約結婚〜恋をしない約束なのに、毎朝うちの和菓子を買っていくのは誰?〜
「第七条。妻は、夫に恋をしないこと」
下町の和菓子屋「柊屋」の娘・ことは、二十八歳。父の入院と店の借金で、銀行から期限を切られた。差し出された契約書の相手は、老舗百貨店の御曹司・氷川遼。一年だけの契約結婚で、借金は清算される。条件は、恋をしないこと。
ことはが契約書に自分から足したのは、たった一条。「店の従業員の雇用は守ること」。
氷川邸での初日、遼は言った。「朝は店に出ていい。六時半には開けろ」。それだけ。
翌朝、店番の母が首をかしげる。「毎朝一つだけ買っていく常連さん、今日は来なかったわね」。
人前では冷たく、家でも事務的。本心を見せない夫の行動が、一つずつ見えてくる。帰りの車で肩に掛けられたコート。催事の会議で「柊屋の豆大福を看板にする」と決めた声。書斎の引き出しに積まれた、柊屋の包み紙の束。
毎朝一つの和菓子を買っていくのは、誰なのか。遼はなぜ「恋をしないこと」を条件にしたのか。
答えを確かめるたび、約束を守るのが難しくなる。期限は、一年。