はっきり言って、俺は過去なんざ思い出したくなかった。
思い出させてほしくなかった。
確かに俺は蝶舞の子孫とはわかっていた。
だけど話したくなかった。
鬼になった理由も、本名も、全て知っている。
氷銀にも、会ったことがある。
唯一信頼…信じることができる人だった。
人を喰わないのは嘘だった。
どうしてもアリス達に逃してほしかった。
あの一週間、何度逃げたいと思ったか。
でも一週間経つと案外慣れるもんだった。
鬼になってから屋敷へ向かった。
やはりあの馬鹿共は俺のことを探している。
本当は一ミリも俺のこと息子なんて思ってもいないくせに。
千年に一度の逸材だ?俺には才能がある?
そんなの関係なかった。
こっちは和食じゃない物も食べたりしてみたかったが
そんなの100%無理だとはわかっていた。
だって俺は蝶舞の子孫だから。
なんでこんな理由で好きにしていいのかはわからない。
でもあいつらが考えることだから
和を大切にしてほしいだ俺は特別だからとかだろう。
本当はみんなと同じようにしたかった。
普通に友達と遊んだりゲームしたりしたかった。
だけどそんなの叶うはずがなかった。
これは、アリス達に話したほうがいいのかな。
掘り返したくはないけど。
ジャック
…なあアリス
アリス
何
ジャック
話あるんだけど
アリス
良いけど、何
ジャック
いや、思い出したから
アリス
………
アリス
…やっぱりそういう事だったのか…
ジャック
本当は何もかも忘れてはいなかった
ジャック
ただ思い出したくなかったからな
アリス
で、本名は何だったの
ジャック
…………
アリス
そっちは忘れているか
アリス
まあ思い出した分良かったよ
アリス
またいつでも話は聞くから







