恋の呪い

「昨夜、███県⬛︎市で、朝夷ゆあんくん十四歳が行方不明になったと通報がありました。 警察は、誘拐事件として捜査を進めています。」

一週間前くらいに、新人キャスターに関するツイートを見たのを思い出した。 まあこの十四歳の少年が誘拐された事件の資料として録画されていた報道番組を見ている訳であって、その新人キャスターとやらは画面に映っていない。 もうあの事件からは四年が経っている。 それなのにこの事件に関しては何の音沙汰もない。 少年の両親は殆ど諦めきっているだろう。 それなら何故俺たちがこの事件を探っているのか。

一週間以上前から他の仕事に見向きもせずにこの事件を漁っている。 だからだろう。 相棒であるたっつんにもこのようなことを何回も言われている。

ちなみに俺たちが探偵を始めたのも四年前。 当時の俺たちは、面白い事件があるかと期待して、色々な報道番組の録画をしていた。 あの行為によってこの事件についての調査が進められている訳だ。 まあ、今では最後に録画をしたのがいつかも覚えていない。

俺たちが探偵を始めたきっかけはある殺人事件だ。 二人であの事件を解決した時の興奮は今でも忘れられない。 でも、いざ探偵を始めてみると、依頼は中々来ないし、来ても浮気・不倫調査やペット探しくらい。 殺人事件やら恐喝事件やらが多いのは、「名探偵コナン」とか、「金田一少年の事件簿」とか漫画の世界の話だ。 勿論秋田犬のポチを見つけただけであの興奮を味わえる訳が無い。 まあそんな事件、無いことが一番なのだが。

たっつんと話していて気づかなかった。 いつの間にやら事務所の扉のすぐ側に女性が立っている。 四十代くらいだろうか。 暗めの顔と服、ほうれい線が目立つ。

朝夷... この前調べてみたが、この苗字は全国に百六十人程しかいないらしい。 もしかしたら... いや、偶然か？ たっつんも妙な顔をしているが、とにかく事情を聞く他ない。

事件の関係者... 苗字が同じだから、母親や親戚の方だろうか？

お茶を置いてたっつんが俺の隣りに座った。 直美さんも置かれた緑茶を啜る。

亡くなっているか。

やっぱり、普通の事件じゃない。