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優里

んっ…!

北上

…っ

私は一瞬、何が起きたか理解できなかった。

私はキスされていた。

それも北上先生に。

優里

んっ!

バン!

私は先生を突き飛ばした。

今の今まで触れ合っていた唇がまだ熱を持っている。

北上

…早見…

優里

北上

ご、ごめん、俺…

優里

優里

…っいて

北上

え?

優里

最っ低!

優里

先生なんか…先生なんか大っ嫌い…!

北上

あ、早見!

私は溢れ出す涙を堪えながら走って教室から出る。

後ろから北上先生の声が聞こえる。

優里

最低…

走って塾から出てきた私はとぼとぼと歩き出す。

今にも雨が降り出しそうな真っ暗な雲が私の心を表しているみたいだ。

優里

何で…

優里

何で先生はあんなこと…

「大好きだったのに」

その一言を私は飲み込む。

入学当初から優しくて面白い先生が私は大好きだった。

みんなに好かれていて先生ファンがいっぱいいることも知ってる。

でも、先生は私が初めて心の底から向き合えた先生なんだよ…?

―数年前―

亜里沙

早見さーん、ねぇ、何してるのぉ〜?

優里

あ、、亜里沙ちゃん…

亜里沙

いっつもあんたって暗いよね、目つきも悪いしさ

優里

亜里沙

何か言いなよ笑

優里

え、えっと…

優里

(この顔、本当に嫌だ)

優里

(いつも目つきが悪いって言われる)

優里

(そんなのどうしようもないのに)

亜里沙

…あーあ、また無視?

亜里沙

もういいや、バイバイ

優里

あ…

優里

私はいつも目つきが悪いと言っていじめられていた。 今とは違い、性格も明るくなかった私は何か言われても何も言えないでいた。

だから私は人の前で感情を見せるのをやめた。 だから「笑顔」なんて言葉、とっくの昔に忘れていた。

優里

北上

あ、ねえ、君、塾とか興味ないかな?

優里

え?

いきなり、男性が塾のチラシを渡してきた。

ぼーっとしながら歩いていたから分からなかったけど、そう言えばここ、学習塾だったな… そんなことを思いながら私はチラシを受け取る。 男性の年は20代後半くらいだろうか。 ちょっとイケメンかも…

そうなことを考えながら私はチラシに目を通す。

北上

あれ?どうしたの?

優里

え?

北上

何か君元気ないね、何かあったの?

私は目を見開いた。

今まで感情がバレたことなどない私だ。

それが見ず知らずのたった今出会ったばかりの男性にバレるなんて…

優里

あ…

口が乾いて声が上手く出ない。

口だけがパクパク動く。

北上

ん?

そういって男性が私の顔をのぞき込む。

優里

っ!!

優里

す、すみません!!!

北上

えっ?!

私は恥ずかしさのあまり、男性を押しのけて足早に歩き出す。

北上

ちょっと、君!

後ろから声が聞こえる。 やっぱり何か答えた方が良かったかな…。

次の日。

放課後、私はまた1人で歩いていた。

北上

あ!昨日の!

突然上から声が降ってくる。

優里

あ…

優里

昨日の…

声の主は、昨日の学習塾の先生だった。

北上

昨日はいきなり帰っちゃうからびっくりしたよ〜

北上

また会ったね笑

優里

…は、はい…

優里

優里

あ、あの…

北上

ん?

優里

…き、昨日はす、すみませんでした…

私はなるべく顔を見ないで伝える。

謝ったらすぐに帰ろう。 そう決めていた。

北上

北上

んー、許さない

優里

…は?

この人何を言ってるの? そりゃ昨日はいきなり逃げて悪かったけどさ…

北上

ふふ、謝る時はしっかり顔を見て言わないと

そういって先生が私の顔を両手で挟んで顔を無理やりあげた。

優里

ははひすふんへすか(何するんですか)

北上

ははっ!

北上

ほら、顔上げて?

そういって私の顔から手を離す。

北上

ね?顔上げて歩かないと。

北上

ほらほらもっと笑って!

優里

北上

うーん、笑わないつもりか…

北上

先生なんか笑っちゃうもんねー、

北上

ハーっハッハッハ、ハーっハッハッハ!

優里

?!

周りの人がクスクス笑う声が聞こえる。

優里

ちょっ!や、辞めてください、みんな見てます!

北上

じゃあ、笑ってくれる?

優里

北上

はーっは

優里

わ、笑います!

優里

笑うから辞めてください!

優里

優里

私はできる限りの笑顔を見せた。

北上

北上

ふふふ

北上

ハーっハッハッハ、ハーっハッハッハ

優里

?!?!

優里

約束が違います!
笑わないって言ったのに!

北上

ハーっハッハッハ、ハーっハッハッハ

なんなのこの人…

でも…何かこの人といると楽しい…。

優里

…ふふふ

北上

あ!やっと笑った!

北上

君、さっきは本当に笑ってなかったでしょ!

優里

この人何で私が嘘で笑ったって…

北上

ふふふ、やっぱりそっちの方がいいよ

北上

本気で笑ってる方が君、可愛いよ

優里

…あ、ありがとうございます

北上

うん!

優里

ふふふ

北上

ふふふ笑

そういって、私と先生はもう一度笑った。

―それが私と北上先生の最初の出会いだった。―

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