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この物語を読む前に、少しばかりの準備運動に付き合って欲しい。
準備運動と聞くと、何か堅苦しいものがあるかもしれない。 なのでここでは、準備体操とでも言おう。
まず、今この文章を書いているのは、この物語の主人公で語り部。 僕、雅望太郎(みやび ぼうたろう)だ。
準備体操の内容を説明しよう。 それは、これまでに僕の身に起こった怪異譚だ。
前日譚とも言える。 できる限り簡略にまとめるので、是非、頭の中に記憶してもらいたい。
4月7日 僕の所属する、公立常奈美高校の同級生であり、幼なじみである 沙羅茶佗虎(さらさ わこ)は蛇に睨まれた。 睨まれた後に、巻きつかれた。
巻き憑かれて、締め憑けられた。 四六時中締め付けられた。 四六時中、鱗が押し付けられた。 キリキリと。ミシミシと。 さながら版画の様に、彼女の身体には、鱗の痕がビッチリと残った。
この時、蛇の進行(締行?)を止め、鱗の痕跡を綺麗さっぱり消してくれたのは、 阿伊善優灯(あいぜん ゆうひ)という、妖怪変化などの魑魅魍魎の類を専門とした、陰陽師のお姉さんだ。
阿伊善さんの紹介もあり、僕は泥で作られた、マッドドールの少女。 伊吹百(いぶき もも)と知り合った。
伊吹ちゃんは、阿伊善さんのパートナーであり、主従関係にある。 阿伊善さんが主人で、伊吹ちゃんが従僕だ。
そんな尋常でなく、人常でない二人の専門家の協力によって、 沙羅茶佗虎の蛇は無事ほどけた。
否、無事ではない。事無きは得ない。 蛇は、その身に毒を持つ。 その毒性は、対象者である沙羅茶の心を蝕む。
文字通りの“心理的外傷”だった
俗に言う、記憶喪失だ。
今現在、沙羅茶佗虎の頭には、4月7日が記憶されていない。 僕と、陰陽師と、その従僕。 三人だけが見た悪夢。
前日譚は終わりだ。 この夢の記憶は、後にきちんと話すとしよう。
本編だ 後日談 あるいは…
4月15日のことだ。
僕は、あるクラスメイトとの事件をきっかけに知り合った、 妖怪変化や魑魅魍魎の類を専門とする陰陽師のお姉さん。 阿伊善優灯という人物に呼ばれ、ある廃ビルの階段を上っていた。
人気の無い… というか、廃ビルなのだから、人気が無いのは当たり前なのだが… あるとすればーー妖気くらい?
いや、学生の僕には、妖気なんて、人気以前に感じられないものなのだが…
そう思うと、ゲゲゲの鬼太郎って、ずいぶんと便利なアタッチメントを装着しているんだな。 ーーあれは髪の毛だったか? ならなおさらだ。 便利な毛髪じゃないか。 うらやましい。
閑話休題
僕は階段を上る。
キシキシと。ギイギイと。 音を立てながら。
5階の東階段を上りきった。 悪寒などは当然無い。 回れ右だ。 目的地は555室。 阿伊善さんが待っている。
阿伊善 優灯
伊吹 百
タイトな服に垂れ目が特徴な、陰陽師のお姉さん。 阿伊善優灯。
ふりふりのドレスに身を包んだ、お人形さんのような少女。 泥人形でマッドドール。 伊吹百。
阿伊善 優灯
雅 望太郎
阿伊善 優灯
雅 望太郎
伊吹 百
そんなことはない。断じて。
阿伊善 優灯
伊吹 百
阿伊善 優灯
雅 望太郎
阿伊善 優灯
雅 望太郎
伊吹 百
大人のお姉さんと、キュートな少女にここまで責められると、さすがの僕でも傷つく。
いや、誰でも傷つくだろ。
雅 望太郎
阿伊善 優灯
『本題に移ろう』 そう言った阿伊善さんは、表情を変えず、座った目で僕を見て、 淡々と言った。
阿伊善 優灯