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テラーノベル(Teller Novel)

しんぺい神

記憶の混濁だね

我々軍の医療の神から発せられた一言は、俺を絶望させるのに十分すぎるものだった。

 雨?

それはっ!つまり、どういうことですか、、、。

言葉が弱々しくなるのが分かる。もう人と面と向かう事もしんどくなって俺は下を見下ろした。きっと今、俺は酷く複雑な表情をしているだろう。

しんぺい神

簡単な話、多分彼の記憶は一度消され新しく塗り替えられた

しんぺい神

よほど大事な記憶だったんだろうね

しんぺい神

本来なら完全に消滅するはずのソレを必死に思い出そうとあがいているんだよ

なんて無茶な事をするのだろうか。それ即ち運命に抗うという事。それは人間の俺たちにできる事じゃない。

俺が決心するしかないのだろうが、一応、聞いておくことにしよう。

 雨?

どうすれば治るのですか?

するとしんぺいさんは苦い顔をした。

しんぺい神

ただでさえもう長い事眠っている彼が起きたとき、本来消されている方の記憶を

しんぺい神

真実の記憶を伝えてあげなければいけない

鬱先生

それはどのへんか分かるか⁉

しんぺい神

分からないけど、きっと俺達と出会う前くらい昔の記憶。もしかしたら彼がまだ10歳にも満たない頃かもしれない

しんぺいさんの一言を聞き、皆は暗い表情をしていた。セチアが眠って起きないのは、1カ月ほど続いている。これがこれからも何度も続くと言う事は事実上の死。

さらに言えば、今までみんなが聞かされていたセチアの過去話はすべて嘘であり、今手がかりはゼロだ。

セチアを救える可能性があまりにも希薄すぎる。

セチア

皆どうしてん、そんな暗い顔して

幾つもの”セチア”を呼ぶ声が重なる。その中で異質な声が、確かに響いた。

 雨?

”トントン”おはよう。そして、久しぶり

誰もがこちらを見つめた。そりゃ今まであれほど敬語を使っていた俺が急になれなれしくなったのだ。

それに”セチア”の方を見て違う誰かの名前を呼んでいる奴が居れば、そりゃ怒りたくもなるだろう。

でも、俺は真剣にやらなければいけないのだ。だって、だって、これはトントンの将来にかかわる事なのだから。

セチア?

な、なんや?どうした?

 雨?

今から俺が話すことをきちんと聞いてくれ、信じれなくてもいいから

 雨?

本当は、話す気なんてなかったけど、こんなことになるなら話さなければいけない

そして俺はトントンに面と向かい話を始めた。皆も静かに話を聞いてくれるようだった。

 雨?

俺は、お前に隠し事をしとる

 雨?

俺は昔、羽を与える事が出来た

 雨?

お前を彩っている虹色は本来お前の色なんかじゃない

その瞬間、皆の顔色が変わった、不審なような、まだ疑っているような。それでも目を見開いて驚いていた。

特にトントンは、誰よりも目を見開き、悲しそうな。怒りたそうな。複雑な表情をした。

ロボロ

こんばんは、初めまして。こんなとこでどうしたんですか?

そう言ってたまたま背中を見ると、羽があった。一瞬夜だから黒く見えるのだろうかと錯覚した羽も、俺の羽がきちんと月明かりで見えていることで錯覚ではないと理解できてしまった。

それは見たことないほど真っ黒で、彼はこの場所が一番自分の羽の色が分かりずらくて好きなんだそうだ。

それからなんだかんだで俺はそいつと仲良くなった。

そいつの名前はトントンというらしい。

ロボロ

俺はロボロ。よろしく

そういうと風変わりな奴だ、と彼は少し笑ってくれた。

それでも彼の人生は変わることなく、悲惨なものだった。まず彼は人の前に出ることが許されなかった。

なぜなら黒い翼には不幸を呼ぶ噂があったから。

だからそいつはいつも同じ顔して、「消えたい。」と、そう呟いた。

実は一度、彼も綺麗な羽を持っていたのだという。

深い赤の綺麗な羽。しかし、彼は悪い大人に利用されてしまった。

小さくて漆黒な羽の子供に、彼は手を差し伸べた。大丈夫だと。綺麗な羽だと。ただそれをその子の親が許すことはなく。

2人は羽を斬られて交換されてしまったそうだ。

違う。消えるべきは君じゃなくて、その漆黒の羽の方や!

どうしてそんなに優しい君が、消えなければいけないのかわからなくて俺は咄嗟に言葉を紡いだんだ。

ロボロ

もし記憶と引き換えにさ、羽の色が変わるならトントンはそうしたい?

トントン

出来るんやったらな

どんな色が似合うやろか。すまんな。俺に選ぶほどの力はない。でもきっと、俺の虹色はお前に似合うはずや。

綺麗で、純粋なお前に、これはあげなきゃいけない。

だから、さようなら。

また今度、「初めて会った」ら素敵な羽だと笑顔で褒めてあげる。

泣き疲れて眠っている君にそっと移し替えるために、俺は飛び切り大きな刃物を、震える手で背中に当て、羽を斬り落とした。

ロボロ

隙だらけの背中に羽はない。大きな傷が残っているだけ。でもそれは名誉の証

ロボロ

そしてトントンに悟られないように

ロボロ

「訳あって失くしちゃったんだ。」と少し前に言ったばかり

ロボロ

あと多分その名前も、俺がお前を呼ぶときのあだ名だったから、そこだけ覚えていて記憶が混濁したのかもしれない

気付けばトントンは涙をぼろぼろと流していた。

トントン

何で、ロボロ、お前

記憶を思い出した様子のトントンに皆はその話が真実だと察したようだ。

すると一人が口を開いた。

グルッペン

ほう、それはおもしろい

ロボロ

何がや?

グルッペン

丁度2人が10歳かそれに満たない頃ぐらいに

グルッペン

未だに解決していない殺人事件があってな

グルッペン

誰かが言っていたな。あれは天罰だったのだと、虹色の羽をした神がいたと

ロボロ

何の事やろうな

ただそれから長い事、書記長の悲しみだけが医務室の中に木霊していた。

グルッペン

なんてことがあったらお前たち相棒にしないわけにいかんよな

そう言って笑うグルさん。

トントン

いまさらその話持ち出すなよ。何年経っとると思ってんねん

ロボロ

ははは。せやな!

こんなに近くに、守りたい存在が居る、今度はきっと俺が守る事が出来る。俺は今きっと、世界で一番幸せだ。

雪(みだいふく)

はい!終わりですね!ハピエンです!

雪(みだいふく)

今回使用させていただいた曲は
作詞作曲:傘村トータ様の「ドラドの悲劇」です!

雪(みだいふく)

じゃ、さいなら!

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