オーストリア
オーストリア
小鳥たちが歌を歌い、お日様がでている、いい天気の日。
そんな日の朝の眠気に襲われて寝ている僕を、彼は起こそうと必死に身体を揺さぶる。
オーストリア
オーストリア
トルコ
オーストリア
気になって薄目で彼を見てみると、
顔が赤くなっていた。
オーストリア
トルコ
くるっ、と僕はそっぽを向く。
暫く無言が続く。
...が、彼はまだ部屋にいるようだ。
オーストリア
ようやく口を開いたと思えば、上半身を無理やり起こされた。
トルコ
予想外のことで困惑していると、
彼は僕の首筋に噛みついた。
トルコ
オーストリア
痛い、と言っても聞かず、問答無用で何度も首を噛んだ。
暫くすると、彼の頭が離れていった。
何故そこに入っていたのか、ポケットから鏡を出すと、それを僕に突き出す。
僕の首元には、彼の"印"があった。
……それも、大量に。
トルコ
オーストリア
トルコ
また、増えちゃったなぁ...
まぁ元から身体は赤いし、目立ちにくいと言えばそうなんだけど。
…とはいえ、そろそろ隠すのが辛いんだけどね。
そして、なんとなく...なんとなぁく、その場で脚を見る。
そこにも、見えづらいが新鮮な紅が何個もあった。
トルコ
オーストリア
トルコ
…本当。
なんで痛みで起きないんだろうねぇ...
まぁ...
どうせなんかしら寝る前の飲み物に混ぜてるんだろうけど。
リビングにつくと、もう既に朝食の準備がされていた。
今日はパンのようだ。
トルコ
オーストリア
トルコ
席に座り、朝食を食べ始める。
彼は隣の席で、静かにパンを食べ始めた。
オーストリア
トルコ
話し掛けられたので、彼の方を見てみた。
オーストリア
トルコ
トルコ
トルコ
オーストリア
やがて朝食が終わり、オーストリアは出勤の時間となっていた。
僕とオーストリアの国際的な関係は、それほど親密じゃない。
故に、出勤時間が違ったりする。
トルコ
オーストリア
彼が行ったのを確認する。
忘れ物で帰ってこないかどうかを見極める。
トルコ
もう戻ってこない、と確認をすると、僕は自室へ向かった。
とはいえ…自室も二人で共有しているから、プライベートなんて欠片もないが。
クローゼットにしまってあった全身鏡を取り出し、
さっきまで見ないようにしていた腕を露出し、ついでに上半身の衣服も脱ぎ捨てる。
トルコ
…そこには、大量の彼の"印"があった。
一体何個あって、どれがいつつけられたものか、わからないほど。
顔以外の場所には大量についている。
薄いものから濃いもの、鎖骨や首後ろなんかには歯型もあった。
昨日のことを思い出す。
彼と昼に飲んだ珈琲。
彼と同じ空間で仕事をした午後。
彼と昨晩及んだ行為。
その時につけられた、"印"。
トルコ
トルコ
トルコ
あれから、彼は僕に尽くしていた。
病的なほど、いつも僕に負担をかけないように。
そして、それは行為にも同じことを言えるらしい。
てっきり、上は僕だと思っていた。
だけど...違った。
僕には本当に負担をかけたくないらしい。
……まぁ、昨日のアレのお陰で、腰が少し痛いから、
結果として僕の負担はかかってるんだけど。
でも、それでよかった。
だって、彼が上じゃなかったら、僕は、今頃。
…まだ、"あい"を知らなかったから。
哀も、愛も、Iも。
全部。
彼の行動を見て、僕は初めて"あい"を知った。
僕のことを、僕のことだけを考えて、
僕のためだけに時間を割き、僕のためだけに負担を増やすような彼の"I"を受け取って、
僕はようやく"あい"を知った。
それを自覚したのが、彼との行為で。
いつしか、壊れる彼以外の彼も好きになっていった。
…だけど。
彼は、僕に本当の"愛"は抱いていない。
それは、ずっと前からわかっていた。
あの日、彼に手を差し伸べた日から、ずっと。
彼の根底では、まだあいつが好きだっていう感情がある。
それで、いい。
でも、それでいいんだ。
浮気されても、本当は僕のこと好きじゃなくても、
どんなに痛いことされても、
噛まれて時折殴られても、
それでいい。
……だって、僕は"愛"を、
"執着"を、
"依存"を、
知っちゃったから。
前はあくまでお遊びだった。
恋も愛もなく、ただ、この世界線を知ってみたくなって、
彼に接触して、あんなこと言って、彼を、堕とした。
そんなオーストリアを見て、面白がっていた。
あの子のように。
だけど。
あの時から、全部変わっちゃった。
僕を真っ直ぐ見つめる、あの瞳。
僕に触れる手。
僕が気を失っている間にいっぱいつける、"印"。
彼なりの、"あいつ"の忘れ方。
僕に依存して忘れようっていう、彼なりの"I"。
その"I"から、僕は"あい"を、学んだ。
だからね。
彼になにされようが、僕は彼の物であり、者なんだ。
本当は僕のこと好きじゃないって気づいてても、
僕は彼の"物"であり続けたい。
捨てられそうになったら、彼の"者"として、また思い込ませてあげるんだ。
オーストリアは、"あいつ"じゃなくて"僕"が好きだって。
…そう思い込んで、僕にいっぱい尽くしてくれる彼が、僕の存在意義だから。
僕の全てになっちゃったから。
…そうじゃなきゃ、僕に価値がないとすら思っちゃったから。
僕は、生きていけなくなっちゃったから。
一人で死のうとすることすら、できなくなっちゃったから。
トルコ
ウィーン包囲では、彼を捕らえることはできなかった。
取り込むこともできなかった。
まぁ、でも。
WW1のお陰で帝国自体は一緒に崩れたし。
…なんか、1度心中したみたいで嬉しい。
トルコ
再び、自身の身体を見る。
いっぱい付けてくれた彼の印。
それを、優しく撫でながら。
笑った。
この関係が、健全じゃない、歪な関係だと、分かっていても。
僕は、幸せで満ち足りていたから。
コメント
2件
もしオーストリアとトルコが出会わなかったらトルコはもっとイカれてたかも知れないし、ずっと孤独だったかもしれない…… 出会った日から『幸せ』は始まろうとしていたのだろうね。