シャブシャブ　獄中自叙伝

生き方が正しくないから
入浴法くらいは正しくありたい

ヤクザも売人も
キレイ好きだからな

エアコンのない名古屋刑務所で
涼しいのはオヤジ達のいる
処遇棟と運動場の日陰だけ

身体も汗ばむし
夏場はナイロン製のボディタオルで
ゴシゴシ背中をこすって
汗をスカッと流したいよな

ボディタオル特有の
あのシャリシャリした感触が
気持ちいいんだよな

刑務所の風呂でシャリ感のある
ゴシゴシタオルを片手に
身体をすみずみまで洗う境地に
たどり着くまでには
なんと3年半もかかる

刑務所の中には優遇区分があり

刑務所に入ってから６か月間
懲罰を受けないで過ごすと
３類に昇格できる

そこから
受刑者の改善更生に向けた
更なる努力を促すために

受刑態度に応じて
3→2→1と類進していく

まずは外部との交通の回数
手紙や面会などの回数が増える

それと使用できる日用品などの
範囲も広がってくる

まじめに受刑生活を行っている
受刑者にはより良い待遇を
与える制度と云う事だ

ゴシゴシタオルは
2類にならないと買えない

3類になってから
2類に上がるまでには
最低3年間かかる

2類になれてようやく
ゴシゴシタオル購入したいで
願箋を書くことができる

願箋は毎月20日に出すため
実際にタオルが手元に届くのは
さらに1ケ月後だ

１か月って云うと
ブラジルから船便で
日本海に来てシャブを落とすのと
日数的には同じくらいだな

違うのはゴシゴシタオルには
GPSがくっついてない程度の
差じゃないか？

刑務所の風呂場で
身体を洗うときに
ボディタオルにボディソープを
噴射してゴシゴシする

2類の受刑者だけができる
ステータスやで

やっぱり人間たるもの
垢はたまるし身体を洗う時は
ゴシゴシこすりたいよな

刑務所の風呂場は
1回に50人程度が
いっせいに入るのだが

2類でタオルゴシ民できるのは
2人くらいやで

みんな手ゴシ民やからな

2類までの3年間半は
手だけで身体洗っているんやで

白いタオル1本あるけど
身体、拭くからな

手だけだと、届かなくて
洗えなところもでてくる

そんな生活を続けていると
暑い日に汗ばんだ背中とかを
ひっ掻いてみると

爪の間に垢がごっそり
取れて詰まっている

手で身体洗ってると
風俗行った時に風の嬢が
身体を手で洗ってくれたのを
想いだしたりな

シャバに出たら会いに
行きたいなって思うが
8年後にその女は
まだソープにいるのか？？

手で洗うやつは
肛門も撫でて終わるんやけど

ゴシゴシタオルがあると
股の間もゴシゴシできるし

だけど3年半ぶりに
嬉しさのあまりにゴシゴシと
身体を洗ったあかつきには

肌を擦ったのが久しぶり過ぎて
皮膚が傷ついてしまい
身体が真っ赤に火照ってしまい
寝返りが打てないほど痛かった

それで塗り薬が欲しくなり
工場のオヤジに願薦を書くのだが

刑務所の中は
かなり大げさに症状を
書かないと診察はおろか
薬さえもらえない

ゴシゴシタオルで肌の皮脂膜や
角質層までダメージを受けて
バリア機能も壊れてしまった

熱くて痛くて眠れないし
このままだと色素沈着おこして
黒ずむから塗り薬が欲しいと
あれやこれや書いて
願箋を申請したら

工場のオヤジに呼ばれた
なにいうてんねん、おまえ！！

ゴシゴシで肌が荒れた？
ココに来る前から
おまえは生活も肌も荒れてる

色素沈着？おまえは調書すら
1㎜の透明感もなかったぞ

ココに来た時からおっさんで
さらに刑務所の中で年喰って
肌が薄くなってきただけ

放置しても死なない、却下