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梨本和広
とと
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この曲のために時計草(美来)はデス声が出せたら良いのになー、と思っていたのである。
演奏が始まるや否や、鋲の付いたライダースジャケットで皮のピタパンを履いたブーツ姿の男性が前に躍り出て来た。
ピンクの髪がツンツンしている。
園之だ!
泣けて来た。あらゆる意味で美来は泣けて来た。
久しぶりに逢う、やっぱり忘れられない好きな人が今目の前にいる喜びだけじゃなく、気が散るから今直ぐどこかへ行って欲しいと焦る気持ちで泣きそう。
それでも必死で歌う時計草こと美来。
園之はノリノリでヘッドバンキングしている。
ひ! 頭取れるよッ?!
間奏の所でステージに上がる園之。
拳を掲げる園之に合わせ
ライブオーディエンス
と会場の皆も拳を上げる。叫ぶ。
ライブオーディエンス
ってな感じで。
そして園之が客の渦へとダイブした!
危ない!
すんごいデス声、時計草から出た。
泣きながら出た。
マイクは余さず時計草の叫びを拾い『ライブハウス・オールライト』中に響き渡らせた。
ハードコアナンバーを歌い切った。なんとか涙を止め、汗に見せかけタオルで拭き次の曲へと移る美来。
次は例の新曲だ。
美来が園之を愛し始めた頃に書いた歌詞。
美来
時計草の真ん前で、鋲ジャン男が時計草を見上げ聴き入っている。
勾配のあんまりない『オールライト』の構造上、パンキッシュ過ぎるウニ頭は後ろに立っている人にとっては迷惑極まりない。 ステージが見えないもん。 でも見た目が怖いし、さっきこの人ダイブしてたよな、とみんな思うから園之に「どけて」と言わない。黙っている。
メロディアスなアルペジオギターのミドルテンポの曲。そよ風が吹いて来そうなラブな曲。
ステージからはお客さんの表情がよく見えるんだ。
目を合わせないようにしていた園之の顔を、時計草は勇気を出して歌いながら見てみた。
園之の頬に涙がこぼれていた。
な、泣くんだ――――!
好きな人が自分の想いを受け取り感銘を受けてくれている、という感情よりも『園之が泣くことへの驚き』が先に立つ美来。
その曲の後は、ブルージーな曲を演り、最後は骨太なロックナンバーで締めくくった。
時計草こと美来にとって、戸惑いだらけの大変なステージだった。
対バンのメンバー
対バンのメンバー
控え室は安堵感に包まれている。
対バンのメンバー
1番目に演奏したガールズバンドの女の子がハスタに声を掛けている。
ハスタ
するとガールズバンドの女子が
対バンのメンバー
と握手を求めて来た。
美来
落ち着かない様子ではあるがニコッと笑い握手に応える美来。
ギターの辰が着替え終わり美来に言った。
辰
美来
キョトンとする辰。
辰
美来
と言い直す美来。
辰
町木も隣で頷いている。
美来
ハスタ
とハスタ。
美来
話しながらライブハウスを出ると、園之がライブハウスの壁にもたれタバコを吸っていた。
どうやら美来には気づいていない。
立ち止まる美来。
ハスタ
園之と美来は20mぐらい離れていた。
美来
ハスタ
美来
2カ月ぶりに逢った園之のもとへと駈けて行く美来。
園之は慌てている。
園之
美来
園之は携帯灰皿にタバコをもみ消し、灰皿をポッケに仕舞った。
園之
美来の中で、もつれていたなにかがほどけた。
美来
園之
美来
園之
美来
しばらく二人の間に心地よい沈黙が流れた。
園之
美来
キャ――――♡あんなことぉ、そんなことぉ、ヤバいことぉ
一気に美来の中を桃色の妄想が駆け抜ける。
園之さん、未経験なのかな? そんな感じがするな
とか思う。
そういえば二人は互いの住所は知らなかった。
美来
園之
――――園之が運転する車中で二人は互いを前より知った。
園之は東京生まれ東京育ち。美来は自分が大阪生まれの京都育ちであることを教えた。
園之
美来
園之のリクエストに軽快に応える美来。
楽しく語らっている間に未来の自宅近所に近づいて来た。
美来
園之
美来
園之
美来は素直に答えた。
美来
やっとはっきり告白できた。
ハンドルを握っている園之の横顔を見ると耳まで赤くしている。
そしてなぜか、おもむろに車を停めハザードランプを灯らせた。
美来へと身体を向けた。
園之
澄んだ瞳に見つめられる美来。幸せだ。
美来
園之
美来
園之
話を聴いて、美来は楽しそうだな、と感じている。これまでの『ラミーの一生懸命』はいわゆるフリースタイルだった。なにか決まったコーナーがあるわけでもなく、ラミーの気の向くままにやっていた感じ。
変わらなかったことと言えば『ラミーが出演しているという点』それと『例のふざけたエンディングテーマ』だ。
ミステリアスな園之だ。ここまで書いていて作者は、美来ちゃんのことをちょっぴり心配している。ただのスケベ野郎だったら許さねー。
美来
園之
美来
美来は『あたしだけが知っているラミー』を宝物のように抱いている。どっちも好き。
園之
美来
ケラケラと笑う美来。
あ、ちょっと笑い過ぎたかな
と、複雑な表情の園之の顔を見た時我に返った。
園之
園之は怒りもせず、納得した様子だ。
園之
美来
園之
美来
ハンドルを右に切り、車を発車させる園之の腕は、身体がスマートなわりにはたくましい。
ドキドキ
美来
指さす美来。
園之
美来
マンションに到着し、車を降りた。
車を見送る気で、エントランスに入って行かない美来を見かね
園之
と助手席の窓を開け園之が言う。
美来
園之
美来
美来がエントランスに入り、エレベーターに乗った後、園之は帰路を辿った。