テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
2件
続き待ってます!
誤字があったらすみません!
希舟
自分の部屋に鎖の鍵を置いて、この地下室に戻ってからまず涼架を見た。 ベッドの上には回収し忘れた涼架のスマホがある。
さっき自分が置いたままでまったく動かされていなかった。見た限りでは触れた形跡もない
希舟
けれど。
希舟
ふと胸の奥に湧き上がったほんのわずかな違和感。 教室でたまたま見たパスワードを入力してロックを解除。 何かが引っかかる。
そして気づいた。
offにしたはずのGPSが起動している。
一瞬、時が止まった気がした。
でもすぐその後、ゾクッと興奮が背筋を這い上がった。
希舟
目を伏せると、口元がふっと持ち上がった。 柔らかく、静かに。 心から嬉しい時のように。
希舟
だけど僕は演技をするようにその場でため息ひとつ、わざと大げさに吐き出した。
希舟
ベッドに居る涼架にもしっかり届くように、わざと大きな声で。
希舟
涼架が震える体を無理やり抑えて気を失ってるフリをしてるのが可愛くて、わざと操作すべてを実況してしまう。
希舟
ベッドじゃなくて机の上に涼架のスマホを置くと、カツン、と軽い音を立てた。
そして、あえてそのままスマホをそこに置き去りにして部屋を出た。 だってそのスマホはもう誰とも連絡が取れないようにしてあるから。
希舟
そう言い残して自室へと戻り、ふぅっと長く息を吐いた。 壁に取り付けたモニターをつけると、そこには複数のアングルで映された地下室の様子。
鎖につながれベッドの上で気を失う──いや、気を失ったフリをしている涼架の姿。
画面越しに、瞳がとろける。
希舟
希舟
希舟
希舟
モニターを撫でるようにして、指先をそっと這わせる。
希舟
希舟
喉が、かすれた笑い声を漏らす。
希舟
涼ちゃんは昔から何かと事件に巻き込まれやすかった。
ナンパや痴漢に誘拐未遂、
その度に俺と滉斗が助けてきたし、涼ちゃんを守るために空手も始めた。
だから涼ちゃんの事は絶対に守れると思ってた。
けど過信しすぎて涼ちゃんはストーカーに捕まった。
滉斗
滉斗は呆然としてしまっている。
俺も、自分が情けなくて、悔しくて何も考えられなくなってしまった。
元貴
ポタッ……
何かが垂れる音がして地面を見ると赤黒い液体。
どこから、と思って探してみるとそれはさっき爪がくい込んだ手のひらからだった。
元貴
多分、今も無意識に強く握ってたんだろう。 血の出ところがわかった途端、ズキズキと痛みが。
でもその痛みで頭がスッキリしてきた。
ここで立ち止まってる訳にはいかない。
元貴
滉斗は少し遅れて顔を上げた。 目はどこか虚ろで、今にも泣き出しそうだった。
滉斗
元貴
自分の血をハンカチで拭いて滉斗の肩を軽く叩いた。
元貴
滉斗は一度大きく息を吸って、スマホを取り出した。
滉斗
滉斗の顔が少し明るくなった。
滉斗
滉斗
元貴
滉斗
滉斗
滉斗
元貴
滉斗
元貴
拡大して見るとやっぱり見慣れない住宅街。
でも、何か違和感というか、何か引っかかる。
元貴
元貴
元貴
表示された住所を読み上げながらLINEを開く。
心当たりがうっすらと浮かんできた。
元貴
滉斗
滉斗
元貴
元貴
滉斗
心のどこかで、希舟に連れ去られたんじゃなくてただ友達の家に行ってて連絡が無いだけなんじゃ無いかって思ってた。
でも、今こうして希舟に連れ去られたのが確定した。
元貴
滉斗
滉斗
裏路地から走って25分ぐらい。
滉斗
GPSが示した家の前で足を止めた。パッと見普通だけど…どこか不気味に見える。 俺がここはあいつの家だって知ってるからか?
元貴とバレないように家の周りを観察する。
滉斗
元貴
元貴が指さした所を見ると確かに2階の窓がほんの少し空いていた。
滉斗
元貴
一旦裏に隠れて元貴と作戦会議をする。
滉斗
滉斗
あんな2階の窓どうやって登るんだって思うだろうけど、俺は元貴のうらやましいレベルの運動神経を信じる。元貴なら大丈夫!
元貴
滉斗
俺たちは頷きあってそれぞれやりやすい位置に移動した。
俺は学校ではよく話すタイプだ、だからきっと突然元貴が来るより怪しまれないはず。
それでも緊張しながらインターホンを押した。
ピンポーン…
……待ち時間が長く感じる。そもそも出てくれるのか?
少し待ってると玄関のドアが開いた。
希舟
希舟
やっぱり出てきたのは希舟だった、ここは希舟の家で間違いないな。
無表情で俺を見てるけど、どこか緊張してるようにも見える。
滉斗
希舟に警戒させないようにわざとおちゃらけたいつもの学校での感じで話す。
滉斗
希舟
希舟の表情が一瞬で変わった。 警戒と、驚きと、興味。
これだ、たぶんだけどこの嘘は効果バツグンだ!
滉斗
滉斗
滉斗
希舟
滉斗
希舟の目がゆっくりと見開かれていく。 良かった、信じかけてる……というか、喜んでる?
希舟
滉斗
滉斗
脳内で叫びながらなんとか嘘を絞り出す。
滉斗
滉斗
滉斗
滉斗
希舟は何も言わない。でももう完全に警戒はしてないっぽい。
希舟
希舟
滉斗
滉斗
滉斗
滉斗
俺が家に上がると同時に裏に回った元貴の方から僅かにフェンスを乗り越える音が聞こえた。
滉斗