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これは始まりじゃない。 でも始まりだと呼ばせて欲しい。 練習生フロアの片隅にある、 少しだけ広い会議室に呼ばれたのはアストレイン。 誰も何も言わなかった。 けど全員どこか胸の奥がざわついていた。 すびんはストローをかみ締めて、 あおは腕を組んでソファに沈み、 ひなたは落ち着かずスマホをいじり、 とあはコーヒーの匂いだけを嗅いで一口も飲まなかった。 そしてドアが静かに開く。 現れたのは練習生チームの統括プロデューサー。 一人一人の顔を見渡して言う。
。
。
ほんの一瞬の沈黙。 そのあと世界が一気に動き出す。
SUBIN
HINATA
SIU
泣くやつ、笑うやつ、叫ぶやつだっていた。 何も言えず立ち尽くすやつも。 でも確かにみんな今をかみ締めていた。 数週間後。 ASTREINという名前とグループカラー、 デビュー曲の方向性が発表され、 それぞれに与えられたポジションが確定する。 まるでそれぞれの「光」が、 一つ一つの宇宙を描くように、 9つの軸道が交差し始めていた。 初めてのグループレッスンはバラバラだった。 それもそのはず、 個々のスキルは高いが、 合わせる経験が少ない9人は、 振り付けもフォーメーションもすれ違いだらけ。
JINU
SONWOO
HINATA
最初は遠慮しながら出ていた声も、 日を追う事に本音が混じっていった。 ある日、練習が終わっても誰も帰らなかった。 ただ床に座り、誰かが言う。
YEJUN
それを破るのはじぬ。
JINU
その言葉に全員がふっと笑う。
AO
AO
こうしてASTREINは少しずつ、 個人からグループへと変わってゆく。 今まで知らなかった声、呼吸、リズム。 ぶつかりながら重なりながら。 9人はひとつになっていった。 そして。 彼らの名を刻むその日が。 すぐそこまで来ていた。