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退院まであとわずか
病院の敷地内を、斗愛と蓮斗はゆっくりと歩いていた
桜はすっかり散り、代わりに若葉が芽吹いている
風が頬を撫で、二人の間に柔らかな沈黙が流れる
斗愛
斗愛が笑いながら言うと、蓮斗も肩をすこし緩めた
蓮斗
言葉は少ないけれど、十分伝わる
何気ない日常――
その幸せの温度が、胸にじんわりと広がる
斗愛
蓮斗
斗愛
蓮斗
歩道を歩いていると、向こうから自転車が近づいてきた。
蓮斗
蓮斗は咄嗟に避けたが、地面の小さな段差で足を取られる
バランスを崩した瞬間——
斗愛が手を伸ばす間もなく、蓮斗は後ろに倒れ、頭を強く打った
斗愛
斗愛は思わず叫ぶ
心臓が張り裂けそうになる
斗愛
斗愛
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通話
02:19
斗愛はすぐに救急車を呼ぶ
救急車の音が、遠くで鳴り響いた
手を握り合っていた時間が、一瞬で引き裂かれる
意識が戻ったとき、蓮斗は天井を見上げていた
目の前には、病室の窓から差し込む光が柔らかく揺れている
蓮斗
頭がぼんやりと痛む
そして、視線の先に――
斗愛
斗愛が立っていた
微笑んでいるけど、その表情には不安が混じっていた
蓮斗
蓮斗の口から出た言葉に、斗愛は凍りつく
斗愛を見て、心の奥底が不思議と囁く
“この人……大事だ――”
先輩が記憶を失った
全てが白紙に戻った
——でも、心の奥底が不思議と囁く
“この人……大事だ――”
斗愛は涙をこらえながら、手を握る
蓮斗もぎこちなく手を握り返した
記憶はない
でも、感情は残っている
少しずつ、二人はまた距離を縮める
笑ったり、話したり、些細な日常の中で、
少しずつ、恋が芽吹き始める。
……また、君に恋をするんだろうな
斗愛は心の中でそう呟き、微笑んだ。