忘れてね

高校一年の夏

俺は、不思議な体験をした

誰かに話そうにも、記憶が曖昧に なりつつあるから上手く話せない

不思議だった、本当に不思議だった

なのに、思い出せない それ程、当時の俺はガムシャラで 全力に生きていたのだろうか

いつしか聞いたことがある

人は、好意を抱く物事の 記憶が定着しにくいと

例えば、好きな人と話していると その時話していた記憶を 思い出せないそうだ

俺は、

恋の病に、かかっていたのだろうか

授業終了と同時に 生徒は席から立ち上がる

その流れに逆らうかのように ワークを広げる俺

驚いたあまり俺は適当な 本を取り出した 普通に…本読んでましたよ？的な

『私が殺した』 真っ黒な背景に綺麗なフォントで タイトル名が綴られている

いや物騒だな、怖すぎ 俺これ取ったの？ヤベー奴じゃん

さっきまで物騒とか思ってたの マジで言えねーわ… やべぇ、どうしようマジで

陽菜ー、そろそろいくよー

図書室ではお静かにお願いします

俺は大焦りでバカ(橘)の 口を手で塞いだ

ー放課後ー

奥から何かが落ちる音がした

本棚に丁寧に仕舞われた本が 落ちるとは考えられない

変な霊が恋愛のサポートなんて できるか分からないけど

一先ず試してみるか…

なんなんだコイツ…