君はそう言っていた。

梅雨時ずぶ濡れのまんま

部屋の前で

泣いていた。

夏が始まったばかりと言うのに君はひどく震えていた。

そんな話で始まる。

あの夏の日の記憶だ___

そんな君に言った。

財布を持って。

ナイフも持って。

ケータイゲームも鞄に詰めて。

要らないものは全部

メンバーとの写真も。

毎日付けていた日記も。

旅だ___

そして俺らは逃げ出した。

こんな狭い世界から

「要らない。」

全て捨てて2人きりで。

「直人さんは何も、悪くないですよ。」

こんな嫌な共通点で

僕らは簡単に信じあってきた。

君と手を繋いだとき

君の震えは無くなっていて。

誰にも縛られず、

二人で線路の上を歩いた。

金を盗んで。

二人で逃げて

どこにでも行ける気がした。

今さら怖いものは俺らにはないよ。

額に流れる汗も

落ちたメガネも

今じゃもう、どうでもいい。

あぶれもの達の

小さな__

逃避行の旅だ____

いつか夢見た

優しくて

誰にも好かれる主人公なら

汚くなった俺らも救ってくれるの？

そんな夢捨てた。

だって現実は、

「しあわせ」この4文字なんかないでしょ？

今までの人生で分かりきったことじゃないか

宛もなくさまようセミの群れ

水が無くなり揺れる視界

迫り来る鬼の叫び

それを無視しはしゃぐ俺ら。

そんな時ふと君はナイフを持ったんだ。

そして君は首を切った。

まるで映画のワンシーン。

白昼夢を見ている気がする。

気付いたら俺捕まってて。

でも君が、いなかったんだ。

そして時が過ぎた。

ただ暑い、

最悪な日々だった。

家族もいる。

クラスの奴らもいる。

なのに…

君だけはどこを探しても見つからない。

「ねぇ、昨日人殺しちゃったんだ…w」

あの夏を思い出す。

俺は今も、歌ってる。

君の笑顔。

君の無邪気さが

頭の中を飽和してる。

「誰も何も悪くないよ。」

「君も何も悪くはないから。」

「もういいよ投げ出してしまおう。」