ワンクッション
本当の家族 Part43 「沢山あるけど」
嘘だ
イザナ
イザナ
イザナ
嘘だ
イザナ
俺は走った
今まで知らなかった ぐらいの風の抵抗が あった
イザナ
それでも俺は走った
頭は空っぽで
ただ一心に
“ここ”へと__
イザナ
タタタ…(走
確蝶
イザナ
確蝶
誰の声も聞こえない
いや
何も考えられ なかった
確蝶
イザナ
確蝶
イザナ
泣くことしか出来ない 哀しさ
イザナ
もう届かない声
確蝶
確蝶
確蝶
イザナ
孤児院で
火事が近くで起こった事を聞いた時
もう俺は
飛び出していた
イザナ
もう会えないんだろうと自覚すると
イザナ
イザナ
少し揺れる
黒い、 少し紫がかった髪
長い睫毛の下から覗く
海のような深みのある綺麗な瞳
くるみ
くるみ
少し子供っぽい 無邪気な笑顔
イザナ
俺の記憶に
一瞬一瞬が コマ割りのように
刻まれていた
イザナ
あいつと
話したいな
一緒に笑いたいな
______って
言いたいな
あいつに__
イザナ
そんな当たり前の事が出来ない哀しさを
俺は噛みしめていた
燃え上がる 力強い
赤色の 寂しさの中で
イザナ
イザナ
だめだ
言葉が詰まる
話したかった事
伝えたかった事
イザナ
くるみがイザナの 顔を覗く
くるみ
くるみ
そして悟ったかの ように言う
くるみ
くるみ
くるみ
くるみ
イザナ
イザナ
イザナ
イザナ
(走
くるみ
イザナ
くるみ
くるみ
話したかった事
伝えたかった事
イザナ
今は
君に触れていたい