テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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運命

第6話 - 運命　その陸

103

2022年02月20日

#歴史

#恋愛

#明治

#呪い

#一次創作

次の日の朝

チョキ…チョキ… （茜が花の茎を切っている）

茜

はぁ、

茜

…今日のお花は少し微妙ね。

茜

（…気分がおさまらないわ。）

茜

（首筋は痛いし、神宮寺さんが心配だし…いつものお花が思うように飾れない。）

執事

お嬢様、失礼します。

茜

わっ！

ビクッ！

(茜がびっくりして振り向く)

茜

び…

茜

びっくりしたわ…。

茜

大きな声を出してごめんなさい。一体どうしたの?

執事

今日のディナーのことですが

執事

今日はお嬢様に飲んでいただきたいものがあるので、ディナーの量は少なめにしてもいいですか?

茜

飲んでほしい物?

執事

はい。

執事

今夜、お嬢様にはお酒を召し上がっていただきます。

茜

えっ、

茜

（お酒…！？あんな不味そうなものを！？）

茜

お酒って、あの変なにおいのする飲み物のことよね？

執事

はい。

茜

えぇ……。

茜

い、嫌だわ…いつものお茶じゃダメなの？

執事

それはだめです。

執事

お嬢様が嫁がれる菫坂様は大のお酒好きでいらっしゃいますから。

執事

酒豪の妻となられるなら、少しくらいは嗜むべきです。

茜

いや…でも…。

執事

お嬢様。

執事

菫坂様は由緒正しき幕臣の血が入った、とても優秀な方です。

執事

お嬢様は

執事

見合いの日にベロベロに酔っぱらって、その婚約者を一族を幻滅させたいのですか？

執事

教養のない、洋風気取りの女だと、馬鹿にされたいのですか？

茜

！……。

茜

……。

茜

…分かったわ。

執事

ご理解ありがとうございます。

執事

では、私は少し出かけてきますね。

茜

うん…。

茜

いってらっしゃい…。

茜

はぁ…

茜

今日は憂鬱な日になりそうね。

如月　芳綱

…。

ドタドタドタドタ…

ガラッ！

如月　芳綱

おーい。

如月　芳綱

起きてるか？もう昼前だぞ。

如月　芳綱

雅秀。

神宮寺　雅秀

！…。

神宮寺　雅秀

ヨシ…。

如月　芳綱

いやー。

如月　芳綱

朝になって見ると改めてひでぇな、その腕。

神宮寺　雅秀

うん…。

如月　芳綱

昨日、俺が駆けつけてなかったら完全に死んでたな。危機一髪ってやつだ。

昨夜

ズバッ！

神宮寺　雅秀

くっ…！

！

神宮寺がよろけたぞ！今だーッ！

神宮寺　雅秀

！…

神宮寺　雅秀

（腕が痛みで動かない、ここで俺は死ぬのか…）

如月　芳綱

ちょいと待てェ！！！！

神宮寺　雅秀

！

！？

如月　芳綱

ハッ！

如月　芳綱

グハッ！

！？

な、なんだアイツ…。一瞬で二、三人を倒したぞ！

如月　芳綱

某はー！！

如月　芳綱

警視庁二等巡査ッ！如月芳綱だぁーッ！

如月　芳綱

親友の神宮寺を夜分に襲撃したお前らは…

如月　芳綱

木っ端微塵に蹴散らす！以上！

如月　芳綱

てやあァァァァァァァァァァァァァァ！！！！

ズバッ！

ドガッ！

うわぁぁあ！

こ、コイツ…！強い！

如月　芳綱

オラオラァ！

如月　芳綱

もっとかかってこんかーッ！

ズバッ！

ブンッ！バシッ！

…ど、どどど

どうする、一旦引くか…。

ズバッ！

グアッ！？

神宮寺　雅秀

…。

神宮寺　雅秀

かたじけないな、ヨシ。

神宮寺　雅秀

もう大丈夫だ、まとめて片付けてやろう。

ひ、ひぃい！！

お前ら！一旦逃げるぞ！

引け引けー！！

ダダダダ…ッ！（男達がその場から走り去る）

神宮寺　雅秀

ほんとに、あれは危なかった…。

神宮寺　雅秀

ヨシが来た時は自分の運の良さを実感したよ。

如月　芳綱

そうだな。

如月　芳綱

俺もあの時夜遅くまで飲んでてよかった。

如月　芳綱

あ、そうだ。

如月　芳綱

雅秀、

如月　芳綱

お前にいい知らせがあるぞ。

神宮寺　雅秀

！

神宮寺　雅秀

えっ、何何？給料上がるとか？

如月　芳綱

そんなんじゃねぇよ。

如月　芳綱

お前が好きな黒部の嬢さん、

如月　芳綱

次の相手との見合いを延期するらしいぞ。

神宮寺　雅秀

！

神宮寺　雅秀

えっ！本当に！？

如月　芳綱

おう。

如月　芳綱

ここに来る前、偶然あの執事を見つけてな。興味本位でついていってみたんだよ、

如月　芳綱

そしてら道場の師匠に頭を下げてて

如月　芳綱

後々師匠に聞いたらアイツ、「道場にいる子との見合いを延期してほしい」と言いに来たんだってさ。

神宮寺　雅秀

！…

神宮寺　雅秀

茜さん…。

如月　芳綱

よかったな、雅秀。

神宮寺　雅秀

うん…。

神宮寺　雅秀

今週中の結婚はなさそうだ。よかった…。

ぐぅー。

（雅秀の腹が鳴る）

神宮寺　雅秀

！

如月　芳綱

！

神宮寺　雅秀

…ふっ、

神宮寺　雅秀

ホッとしたらお腹すいちゃったな。

如月　芳綱

ハハ、そうみたいだなw。

神宮寺　雅秀

すぐ腹ごしらえしてくるから、外で待ってて。

神宮寺　雅秀

僕も服に着替えて、出勤するよ。

如月　芳綱

！

如月　芳綱

もう腕の怪我は大丈夫なのか？

神宮寺　雅秀

少し痛むけど、平気だよ。

神宮寺　雅秀

すぐ行くから待ってて。

数十分後、雅秀と芳綱は町の中を歩いていた。

如月　芳綱

そういえば、

神宮寺　雅秀

ん？

如月　芳綱

昨夜、お前の言ってた『花園誠一の墓』のことだが…

如月　芳綱

他の死人についても、奇妙な点が見つかった。

神宮寺　雅秀

！、へぇ…例えば？

如月　芳綱

花園誠一の祖父…、

如月　芳綱

首を括って自殺した男なんだが

如月　芳綱

首を括る前に一度、腹部を切ろうとしていたみたいなんだ。

神宮寺　雅秀

！

如月　芳綱

遺体を調べて見ると、腹部に切り傷があったんだとさ。

如月　芳綱

畳には赤い血が飛び散っていて、酒を飲んだ勢いで自殺しちまったんだろうってことになってる。

神宮寺　雅秀

と、いうことは…

神宮寺　雅秀

花園誠一の祖父は、。

神宮寺　雅秀

①酒を飲んで

神宮寺　雅秀

②腹部を切って

神宮寺　雅秀

③首を切って死んだってことになるね

神宮寺　雅秀

…そんな難しい死に方、あのお爺さんにできたのかな。

如月　芳綱

そこな！

如月　芳綱

俺もそう思った。

如月　芳綱

花園の爺さんは89歳と高齢だ。武士でもない商人がそんなことできるとは思えない。

神宮寺　雅秀

…。

神宮寺　雅秀

…現場を見に行くことって、できるかな？

如月　芳綱

上司の機嫌次第だな。

如月　芳綱

会ったら話してみようぜ。

神宮寺　雅秀

うん、そうしよう。

お涼

あ、あの…

神宮寺　雅秀

？

如月　芳綱

ん？

お涼

貴方が…神宮寺雅秀様ですか？

お涼

私、花園誠一の妹で、お涼と申します。

神宮寺　雅秀

！

如月　芳綱

花園誠一の…妹！？

お涼

ぺこっ（お涼が二人に向かってお辞儀する）

お涼

貴方が…神宮寺雅秀様でいらっしゃいますね？

神宮寺　雅秀

は、はい。

神宮寺　雅秀

私がそうですが、どうかされましたか？

お涼

！！

お涼

ッ、

お涼

茜さんとの結婚は、絶対にやめてください！

神宮寺　雅秀

！

如月　芳綱

！

お涼

昨日お店で貴方が「茜さんを愛している」と言っていたのを見ました。

お涼

あの人との結婚は、絶対にダメです！

お涼

わ、わ…

お涼

私は…この身で実感いたしました。

お涼

黒部茜に関わると…ろくなことがないと。

お涼

あの方は…苦しみしか生みません！悪しき鬼です！

お涼

あの女との結婚の先は不幸しか待っていません！

如月　芳綱

お、おいおい…

如月　芳綱

お嬢ちゃん、声がでかいぞ。一旦落ち着け。

お涼

落ち着いていられますか！

お涼

私はずっと…苦しんでいるんです！あの女のせいで！！

お涼

それに…

お涼

あのお方も、おっしゃるんです。

お涼

黒部茜は…呪われているって！

神宮寺　雅秀

？

神宮寺　雅秀

あのお方…？

どうもこんにちは。

神宮寺　雅秀

！

神宮寺　雅秀

（この男…あの時の！）

時雨

時雨（しぐれ）と申します。

僕は見習いの術師で、お涼とはよく話す仲です。

お涼

私のお店の常連でもあるんです。

お涼

時雨さん、

お涼

このお二方に自分の見えたものを話してあげてください。

時雨

わかりました。

時雨

神宮寺さん、

時雨

今こうして、貴方の魂を術師の目で見たところ

時雨

貴方の未来は残酷な結末を迎えようとしています。

時雨

貴方の魂は…赤い、

時雨

それでいて、黒いすすのようなものが出ている。

時雨

これは間違いなく、呪いです。

時雨

あの女からの呪いが貴方に巻きつこうとしている！！

如月　芳綱

はぁ？

如月　芳綱

何言ってんだコイツ。

時雨

信じてもらえないかもしれませんが、

時雨

僕の目には見えるんですよ。

時雨

あの女からは…おぞましい黒い煙が立ち込めているのが。

時雨

あれは間違いなく、使者の魂を買う化け物！

時雨

彼女は魂を食い尽くす死神です！

神宮寺　雅秀

…。

如月　芳綱

死神だぁ？

如月　芳綱

なんだか、言い方がうさんくせぇなぁ。

如月　芳綱

雅秀、もう行こうぜ。

如月　芳綱

これ以上はお前の機嫌が悪くなるだけだ。

お涼

お待ちください、如月様！

お涼

時雨様のお話は本当なんです！信じてください！

時雨

そうです。

時雨

術師は嘘をつきませんよ。

時雨

黒部茜からは見えるんです。黒い煙がふわふわと立ち上っているんです！

如月　芳綱

うるせぇなぁ。

如月　芳綱

俺たち長州武士はな、人のこと悪く言うやつのことなんて信じないって決めてんだよ。

如月　芳綱

ほら行こうぜ、雅秀。

如月　芳綱

俺たちは暇じゃねぇんだ。

神宮寺　雅秀

…そうだね。

お涼

！

お涼

ま、待って！！

お涼

神宮寺　雅秀

っ！？

バッ！…がしっ！

（お涼か雅秀に抱きつく）

お涼

…お願い…。

お涼

私は、貴方のためを思って言ってるんです…突き放さないで。

お涼

じゃないと……誠一兄が…。

神宮寺　雅秀

！

お涼

お願い！！

お涼

お願いします！

お涼

私を突き放さないで！！

執事

ん？

執事

あれは…神宮寺雅秀か？

物陰から執事が神宮寺とお涼を見る。

執事

！

執事

…なんと。

執事

（あれだけお嬢様にアプローチしていたのに、他の女と真昼に抱きつくとは…）

執事

やはり、

執事

私の見解は正しかったみたいだな。

執事

アイツを追い出して正解だった。

執事

すぐに帰って、お嬢様に伝えよう。

如月　芳綱

おい！

如月　芳綱

何やってんだよ、離れろ！

如月　芳綱

お涼

きゃっ！？

如月　芳綱

行くぞ、雅秀！

神宮寺　雅秀

うん。

神宮寺　雅秀

……。

お涼

はぁ…。

お涼

私、もう悲しみたくない…。

お涼

苦しいのは、もう嫌…っ！

時雨

大丈夫さ。

お涼

！

時雨

きっと、お涼の思いは伝わってるよ。

時雨

もうすぐ、お涼は楽になれるさ。

お涼

！…

お涼

そう…かな。

お涼

そうだといいんだけどね…。

お美枝

お姉ちゃーん、ただいま！

お涼

！

お涼

お美枝！

お美枝

ただいまぁ！

お涼

おかえり。

お涼

まっ、お美枝ったら汗だらだらね、お風呂に入って着替えてきなさい。

お美枝

わかった！

お涼

…。

お涼

あれ？

お涼

さっきお美枝…私のあげたかんざし、つけてなかったわね。

お涼

どこかで落としちゃったのかしら…。

つづく

運命

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4件

更新ありがとうございます！🙇‍♂️🙇‍♂️🙇‍♂️🙇‍♂️ 如月さんと神宮寺さんの友情に泣き、時雨さんと愉快な仲間たちの言っていることが真実味を帯びていることに泣き、執事さんの勘違いに泣き……… 今回もすごく濃い内容でした！続編楽しみに待ってます🎶

プロフィール

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