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2074年4月15日 黒海南方 アナトリア地方 旧コンスタンティノープル戦闘区域
ダダダダダダダ... ドォォォォォォォォン...。 絶望と争いの絶えない大地に、 銃声と爆発音。 それに。 ギュィィィィィィィンッ!ドォォォォォォォォンッ! 高速で飛び去る3機の機体。 オレンジ、紫、桃色と並ぶ、 高さ10mもある 人型決戦兵器「アドバンスト」。
オペレータ
オペレータ
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散り散りになっていた3機が合流する。
ダッ、ダッ、ダッ、と3番機のライフルが 火を吹き、人間の大きさほどもある 巨大な銃弾が敵の自律兵器を粉砕した。
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コックピットに響く、ビィ!ビィ!という けたたましい警告音。 地平線の向こうに一閃、超遠距離 からのレーザー狙撃。
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ギュゥゥゥゥゥゥンッッ!バリバリバリバリィッ!! 地平線向こうから飛んできた レーザービームが3人の隙間をなぎ払い、 紫の機体をかすめた。 やがて1本の線に収束し、 消滅するレーザー。 その間わずか0.3秒ほど。
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オペレータ
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着々と減っていくタイムリミット。 世界の終焉への秒読み。
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バババババババ...と大量のミサイルを 撃ち出すのは、2番機たる紫の機体。 機体の肩に取り付けられたランチャーから 向かう先はバリケードの壁。
3機の機影が高速飛行しながら 雑魚を蹴散らす。 その上を、白煙を吐きながら ミサイルが飛翔する。
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ビィ!ビィ!またしても警告音。 遠方の砲台が光るのが見える。 ギュゥゥゥゥゥゥンッッ!ビィィィィィィィッッ!!
青いレーザーが、3機のあいだを貫きー
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紫の苺の紋章。中量フレームの左手腕部、 そこに持たれるレーザーブレードを、 レーザー狙撃が丸ごと打ち砕いた。
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編隊長が情報分析を求める。 こうしている間にも、コックピットの 外の景色は目まぐるしく変遷していく。
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片腕を失ってもなお、敵陣に突入する。 本来であれば撤退しているところだが、 今はそうはいかない。
前方に爆発。先程のミサイルが バリケードを破壊したようだ。
オペレータ
オペレータ
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オペレータ
敵の前線を突破し、ミサイル基地へ 突入する3機の機体。
ダッ、ダッ、ダッ、ダダダダダダダ... 敵の兵器群を粉砕しつつ、 破壊目標へ進む。
...その時である。
オペレータ
オペレータのAIが、無機質な声で 新たな脅威の接近を告げる。
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建物の物陰から急速に接近してきた、 巨大な4脚機体。
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それは、先程被弾した片腕の機体を 狙っているようだった。
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圧倒的火力を一点に投射する敵機体。 その照準は、手負いの2番機...紫の機体に 向いているようだった。 片腕の2番機が編隊から外れ、 おとりへ向かったことに2人が 気づいた時には、もう紫の機体は 彼らのはるか後ろにいた。
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2人が引き止める声は、 彼の耳には届いていない。
もう、手遅れだった。
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ダダダダダダダダダダダダダダ、と 敵機体がガトリング砲を乱射する。
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ただでさえ片腕を失った機体は、 相当な消耗を強いられている。
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バシュッッッ!! バシュッバシュッッッッ!!!
超火力のショットガンが、紫色の機体を コックピットごと粉々に砕いた。
オペレータ
オペレータが無機質に告げる。
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オペレータ
時間は残酷だ。 彼に構っている暇は、残念ながら無い。
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数十年来の親友をいとも容易く失った 編隊長の声は、明らかに震えていた。
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2機に減った機体たちは、 変わらず前進を続ける。
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全火力にてミサイルを攻撃する1番機。 3番機もそれに続き管制施設を攻撃する。
オペレータ
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ダダダダダダダ...ドドドドドドドドドド...
2機の兵装が、一斉に火を噴く。
オペレータ
オペレータ
巨大なV4ミサイルが無力化される。 管制センターへの攻撃により指揮系統を 失った基地の全体が、誘爆によって 爆発を始める。
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2人の間に流れる重苦しい空気。
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それを打ち破ったのはオペレータだった。
オペレータ
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編隊長が直ぐに正体を掴む。
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オペレータ
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遠くにさっきの4脚機体が見える。 編隊長の親友ー紫の機体をパイロットごと 一瞬にして屠った「ヴェンジェンス」。
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突然編隊長が、無線越しに叫ぶ。
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彼の恐ろしい決断に、 撤退を躊躇する3番機。
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彼の説得は届かない。
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桃色の機体、3番機の彼は半ば 狂乱状態のまま、ブーストを起動し 全速力で基地を離れた。
イレギュラーが堕ちた。
オレンジ色の機体を駆り世界を走り回り、 敵を易々と打ち破っては暴れ回っていた という伝説の傭兵。 「イレギュラー」ー人類には有り余る力と して、抹殺対象とされていた人間。
それが、新ロシア連合のミサイル基地への 攻撃直後に、核爆発に巻き込まれて 死んだ。
その噂は、瞬く間に世界中を駆け巡った。
30年前。
世界の4分の1が、焦土と化した。
ワシントンD.C.に対する核ミサイル攻撃を 企てた彼らー新ロシア連合は、 当時の「イレギュラー」とその仲間により 殲滅された。
基地内部にて発射前に自爆を敢行した 核ミサイル...通称"V4"は、 かつての黒海、ロシア、ひいては ヨーロッパ、地中海、中東までもを 完全に焼け野原へと変えた。
世界の実に40パーセントの人口が 一瞬にして蒸発したとされる。
いわゆる、「アナトリアの悲劇」である。
壊滅的被害を被った世界中の国家は 次々と瓦解。 順調に勢力を伸ばしつつあった企業勢力に 取って代わられた。 太平洋を挟んで世界を二分する 企業達の元、一応の平和が訪れた。
ときに「イレギュラー」と呼ばれた彼は、 至近距離で核爆発を浴びたために 死んだのか。 それとも、彼の親友と同じく 「ヴェンジェンス」に食われたのか。 真実を知るものは、誰もいない。
ただ1つあの戦場において確かなことは。
3番機であった「彼」だけが 生き延びた...いや、生き延びてしまった ということである。
これは、その30年後。
もはや彼が「伝説上の存在」と なった頃の、何人かのパイロットの 物語である。