コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
COM
訓練センターに、赤と黄色の機体が並ぶ。 企業所属の傭兵部隊、ベリーズ。俺ともう1人の新人パイロット2機が、訓練に望む。
さとみ
オペレータのさとみが指示を下す。 訓練開始以来、俺とるぅちゃんだけを 見守ってきたハンドラー... いわゆる代理人であり、指示役。
しかし...企業の入隊試験にしては、 随分とお粗末だ。
莉犬
狭苦しいコックピット内。 操縦桿を前にたおし、前進する。
さとみ
さとみ
だっダダダダダダダダダダダ...。 操縦桿のトリガーを引くと、 機体の手に持たれた巨大なマシンガンが 火を噴く。
同時に訓練を行うのは、旧友のるぅと。 俺たちの傭兵集団が所属する企業、 「ノブレス・フレージュ」は、 旧アメリカ大陸から南アメリカにかけて 派遣を握る軍事組織である。 今日は、2人の正式入隊試験日。
COM
COM
巨大なホールの中で行われる戦闘試験。 ホールと言っても天井は非常に高く、 窮屈さを感じさせない。
配置された障害物の向こうに反応。 恐らく目標の自律兵器だろう。
るぅと
るぅちゃんも1機やったらしい。 ジャンプして敵を捕捉。 右手に持つバズーカを使ってみる。
莉犬
どぉぉぉぉんっ、と巨大な弾が発射され、 反動が機体に伝わる。
着弾し、爆発。
COM
COM
管制センターでは、2人のハンドラー であるさとみと、フレージュ本社の 傭兵起用担当、ころんが訓練の様子を 見守っていた。
ころん
さとみ
ころん
ころん
鼻歌歌いながら管制室を出るころん。
さとみ
彼のため息と同時に、最後の目標が 撃破された。
COM
COM
さとみ
戦闘モードが解除され、一気に 体の力が抜ける。 この機体は自分の肉体と接続して 操縦を補助する部分も多い。 激しい戦闘は、直接身体に堪える。
るぅと
莉犬
さとみ
莉犬
るぅと
さとみ
るぅと
莉犬
まあ、これから地獄のような戦闘に 送り込まれることを考えれば、 手放しに喜べる訳では無いんだが...。
さとみ
さとみ
さとみ
さとみ
"JASMIN HOUND"。 これが俺の、戦場での名前になる。
莉犬
るぅと
格納庫に機体を戻した2人が、 愚痴りながら本社オフィス内を歩く。
すると前から歩いてくる青髪の男。 たしか彼は...
ころん
莉犬
るぅと
異常にテンションが高い。 てか誰だったっけ。
ころん
ころん
莉犬
るぅと
初対面の人間にこのテンションで いられるの、もはや尊敬。 アドバンストパイロットになるための 適性手術がごく稀に性格を変える、 とか聞いたけど。 いやにしてもでしょ。
ころん
ころん
さとみ
壁の後ろから突然現れるさとみ。 その表情は困惑に満ちている。
るぅと
るぅと
莉犬
疲れた。
異様に疲れた。
あの人と一緒にいると、 テンションに飲み込まれそう...。
ご飯、と言っても、 見た目から食欲の失せる豚肉風味の成形食 屋内ハウスで生産された野菜サラダ 三角形のパックに入った栄養ドリンク...
企業の中では超上位の扱いを受ける (ことに数時間前なった) ひと握りのアドバンストパイロットが、 昼食を奮発してこの惨状である。 Fランチとかがどうなっているのか、 察するまでもない。
そう、あの機体を操縦する アドバンストパイロットは、 世界を二分する大企業の中でも ほんのひと握り。
250万居るとされるフレージュ社の 戦闘員の中で、ころんのような企業の 正規パイロットはたったの8名。 俺たちのような所属傭兵を含めても、18名しかいない。
それ以外の99%以上は「スタンダード」と 呼ばれる旧式兵器ー 戦車や戦闘機、 艦船に配備されるか、もしくは銃を持って 身一つで戦う歩兵となる。
数がここまで少ないのには理由がある。 そもそもあの人型決戦兵器ー アドバンスト機体の技術は 発展途上であり、パイロットには 技量だけではなく"身体適性"が 求められるシロモノなのだ。
で、この適性を持った人間が 限りなく少ない。 アドバンストパイロットになれる人材は、 全人類のうちほんの0.001%と言われる。
検査で適性があると判断された者は、 パイロットとして機体と同期するための 適性手術を受ける。 そうして初めて、機体を動かすことが 出来るのだ。
今日の入隊試験が形だけのお粗末な物 だったのも、貴重なパイロットを 取り逃がす訳には行かないと、 そういう事だ。 俺もるぅちゃんも、ころんもさとみも、 皆この超低確率の人間なのだ。
...そんな、何故か上位ひと握りの才能を 生まれ持ち得てしまった俺とるぅちゃんに 新しく与えられたのは、 有り余るくらいの広い自室。 そのサイズと高級感、待遇に にわかに狼狽えるが、まあさっき述べた のが理由の超特別待遇なのだろう。
お前は将来、死ぬほど広くて 死ぬほど高級なカーテンとベッド、 死ぬほど高価なテレビの付いた自分だけの 部屋で、セイロンの紅茶なんか飲んで いるぞ、と過去の自分に言って聞かせて やりたい。
きっと、いや間違いなく信じて 貰えないだろうけど。
「フレージュとエストクラートの緊張は 日に日に高まりつつあり、 今日未明もアリューシャン列島付近で 小規模な武力衝突があった模様です。」 「大陸中央放送が、スタジオから 中継でお伝えしました...」
部屋のテレビが世界情勢を伝えるのを 聴きながら眠りにつく。 太平洋での小競り合いなんて、 今に始まった話じゃない。