秘密のおまじない

外では雨が降っていた。

外に出る気分にはなれなくて

雨宿りをしていたら、 佐々木君も残っていた。

佐々木君は軽く微笑んで 窓の外を見た。

悪戯な笑みがこちらをむく

彼の仕草が全て可愛くて

そんな君が私は好きだった

今日で私の片思いにも蓋を閉じる

でも、佐々木君をすきだったことに変わりはない。

佐々木君はさっきとは違って陽気な声で言った。

結局何も進んでなくて

佐々木君の恋を応援するって決めていたはずなのに、

どこかまだ諦めきれない自分がいる。

そんな私に腹が立ってくる。

素直に応援できないのはなんで？

諦めきれないのはなんで？

本気で、 佐々木君のことが

今日もいつも通りでいるだけ。

何も変わっていない。

作り笑いが歪んでいる気がした。

笑えていない気がした。

本当に、笑いたかっただけなのに。

君のその優しさに

いつまでも甘えちゃうんだよ。

お願いだから、

もうそれ以上、私に優しくしないで欲しい。

叶わない恋を叶えようとするワケが

私には分からない

君のその優しさが今は腹立たしい。

私はただ諦めたいだけで

私に話しかけないで欲しくて...

.........

こんなの八つ当たりだってわかってる。

私だってバカじゃないし

私の顔の横には佐々木君の顔があった。

私の震える体を優しく包むように。

佐々木君は小柄で

頼りなかったけど

少し安心している自分がいた。

...私から応援したのに

応援するって決めたのに

なんだか息苦しかった。

本当はもっと私を支えていて欲しかったけど

ワガママ言ってもしょうがないってわかってる。

君が離れたら

私は泣き崩れてしまいそう。

佐々木...君？

佐々木君は私から離れて微笑んだ。

彼の笑顔は悪戯っぽくて

それでも可愛くて

何より──

かっこよかったんだ。

fin...