ある松
一松兄さん
一松
え?
一松
だれ?
ある松
僕だよ
一松
……トッティ?
一松
だれかのスマホから送ってきてる?
ある松
違うよ
一松
…え?
一松
だ、だれなの!?
一松
弟だよね?……十四松?
ある松
違うよ
一松
へ…?
一松
…人違いだと思います
ある松
間違えてないよ、一松兄さんだよね?
一松
い……いえ……
一松
おれは鈴木です。鈴木イチ……
ある松
一松兄さん、忘れたの?酷いね
一松
鈴木だってば。それに弟はふたりしかいない
ある松
いるよ、もうひとり
ある松
六つ子の七番目
一松
ええっ?それ変だよね!?
一松
六つ子なのに七番目とかありえなくない?
ある松
忘れたとは言わせないよ。僕は神松だよ、一松兄さん
一松
ひっ!
一松
う…うそだろ?あんたは消えたんじゃ…?
神松
復活したんだよ
一松
そう、それは良かったね。ではさよなら
神松
ちょっと待って。いいの?君の兄弟を助けないで
一松
……どういうこと?
神松
君の大切な兄弟の誰かがある場所に閉じ込められている。今から僕がその場所をナビゲートするから指示通りに向かってほしい
一松
え…なんでおれ?あんたが助ければいいよね?
神松
それが無理なんだよ。僕は復活したてで、今君とこうしてコンタクトするのが精一杯で、動けない
一松
じゃあ…他の松に頼んだら?
神松
兄弟が閉じ込められている扉を開くには暗証番号を入力する必要がある。それが分かるのは恐らく君だと思ってね
一松
え…暗証番号?分かるかな?ひたすら荷が重い
神松
もう時間がないよ、急がないと。このままでは酸欠状態になって命を落としかねない
一松
えええっ!?
神松
早く助けてあげて
一松は神松の誘導で兄弟の誰かが閉じ込められているという場所に向かった。そして摩訶不思議な雰囲気の漂う場所の扉の前に着いた
一松
暗証番号は数字…暗号は?
神松
六つ子全員の出生時の体重を出した四桁ないしは五桁の数字を入力して最後に確定ボタンを押して。正解すれば扉を開く。間違えたら扉は永久にロックされ二度と開くことはないだろう。慎重に
一松
ええっ!?そんなの無理だって
一松
荷が重いどころの話じゃない、下手するとおれが兄弟を殺すことに…
一松
おれじゃなくて母さん呼べば良かったじゃん?ムリムリムリムリ
神松
暇ですぐ来れそうなのも君しかいなかったからね
神松
もう時間の余裕はない。一刻も早く入力しないと危険だよ。出生時の体重覚えてないの?
神松
母親から聞いてない?母子手帳見てない?思い出して
一松
え…え…ええと……
一松は緊張と恐怖で逃げ出したくなったが、兄弟の命が掛かっているので必死に記憶を呼び起こした。そして計算して導き出された数字を震えながら入力した
一松
頼む……開いて……
神松
凄い!ロック解除されたよ
神松
おめでとう。さあ扉を開けて
一松
よ……良かったぁ…
一体兄弟の誰がこの不思議な場所に閉じ込められていたのだろう。安堵と興奮に包まれた一松がゆっくりと扉を開けると、そこにはー
一松
ひぃっ!?
一松
か、神…松!?
神松
ふふ、ありがとう一松兄さん、完全に復活できてなかったけど、君のおかげで助かったよ。これからまた毎日一緒だね
一松
…う…うそだろ……
神松
まずはお礼をするね。何がいい?猫をたくさんプレゼントする?
一松
ひいぃっ!幸せ借金地獄に落とす気!?怖い、怖いんですけど!
神松
まさか。怯えないで
一松
悪霊退散!
一松
臨兵闘者皆陣烈在前!!
神松
僕は神だから効かないよ
一松
こ、こっちに来るな!
神松
助けてくれてありがとう
神松
ふふ、仲良くしてね
一松
うわーっ、だ、誰か助けてぇぇーっ!
再び悪松が出現するまで、幸せ借金、不幸返済、戒めと一松は怒涛の日々を過ごすことになるだろう