主
主
主
主
主
主
生まれて初めて落ちた恋は、息も出来ない程苦しいものだった。
叶わない恋だなんて解っていた。それでもあの人への想いは日々大きくなるばかりで、自分でもコントロールできなくなっていった。
──怖かった。あなたは俺のものじゃないのに、あなたを独占したいと思ってしまう俺の浅ましい感情が。
言うはずじゃなかった、あんな言葉──…。
泣いても泣いても後悔はなくならない。俺は自分の強欲さであなたを失ってしまった。
一虎
一虎
一虎
不在着信
一虎
不在着信
ケータイがうるさく何度も着信を知らせて振動するけど、今はアンタの声なんて聞きたくない。
一虎
止めてくれ。アンタの名前を見るだけで辛い記憶が甦ってしまうんだ──…。
場地
千冬
場地さんにとっては何気ない誘いにすら過剰に喜んでしまう程、俺は場地さんに惚れ込んでいた。
場地さんは誰よりも強くてカッコいい。 男気溢れる真っ直ぐな性格も、親を大事にする優しいとこも、ギャップで勉強が苦手なとこも、場地さんを構成するものは全部が全部眩しく見える。
──…あの腕に抱き締められたらとんな感じなんだろう。長くて綺麗な髪に触れてみたい。普段はぶっきらぼうな性格だけど、愛を囁く時はどんな事を言うんだろう。
いつも気が付けば彼の事ばかりを考えていて、燻る恋心が俺の胸を焦がす。
…場地さんに愛されてみたい。
俺のこんな惨めな欲求が叶う日が来るなんて夢にも思わない。けれど簡単にどうにかできるほど軽い感情でもない。
この恋はただ一方的に想っているだけで良かった。それなのに──…。
千冬
一虎
場地さんの家を訪ねると、一虎くんが我が物顔で漫画を読んで寛いでいた。傍らには食べかけのペヤングが置いてある。
ここ最近は場地さんの家に行く度に必ず一虎くんがいる。
──…ねぇ、どうして今日もアンタがいんの?
場地
一虎
場地
そう言うと場地さんは俺の腕からペケJを受け取り、部屋の隅であぐらを掻いて愛で始めた。
……そうか、場地さんは先に一虎くんと約束してたのか。俺と居たいから家に招いた訳じゃなかった。
──…俺だけが特別な訳じゃないなんて……そんな事解っていたけれど、いざ現実を突きつけられると胸が苦しい。
ペケJが場地さんの膝の上で撫でられて、気持ち良さそうにゴロゴロと喉を鳴らしている。
羨ましい。……動物に嫉妬したってどうしようもないのに。
一虎
場地
一虎
場地
一虎
場地
そう言うと場地さんは小言を良いながら部屋を出て行った。
──…一虎くんの事は嫌いじゃない。けれど二人きりになると、妙にぎこちない空気が流れる。
一虎
千冬
突然一虎くんが甘ったるい声を出して抱きついてきたから、反射的に身体を押してしまった。
けれど肆番隊隊長の腕っぷしは伊達じゃない。押し退けることは出来なかった。
……彼は一体何をしたいんだろう。この人が色んな人に抱き付いているのは見たことがあるから、意味なんてないのかもしれない。
それでもでも場地さんの部屋で、場地さん以外の人に触れられる事は俺にとっては不快以外の何でもなくて、つい語調が強くなってしまった。
一虎
千冬
一虎
千冬
一虎
千冬
そう言って笑う一虎くんの目は、俺をからかうみたいに意地悪なものだった。
一虎
千冬
一虎
千冬
一虎
頭の中が真っ白になった。
俺ってそんなに解りやすかったの?
──…俺の気持ちが場地さんにバレてしまったらどうしよう。嫌だ、それだけは避けたい。
一虎
一虎
千冬
一虎
千冬
一虎
千冬
一虎くんの宣戦布告とも言える告白を聞いて動けなくなった俺は、結局その後は脱け殻の様になって何をしていたのかも覚えていない。
けれど一虎くんの想いを聞いてから見てみると、確かに他の人に対するスキンシップよりずっと多い。
場地さんだって一虎くんを受け入れている。
──…そんなの、仕方がないのは解ってる。場地さんと一虎くんは小学生からの付き合いで、俺はと言えば精々1年間の付き合いしかない。
一緒に過ごした時間も、濃密さも、信頼関係だって、彼には全く敵わない。それにルックスだって一虎くんの方が俺よりもずっと良い。
一虎くんに勝てっこないなんて事、俺が誰よりも1番わかってるよ。
わかっているけど、俺が場地さんを独占したい気持ちは日々どんどん成長していった。
それでも俺の気持ちなんて無関係に、俺達が3人で集まるのは当たり前の事になっていった。
一虎
場地
一虎くんは俺の感情を弄ぶように、以前にも増してわざとらしく場地さんとスキンシップをとるようになった。
──…嫌だ、こんなの見たくない。
一虎くんが場地さんといるのを見るだけで胸騒ぎがして、怒りや嫉妬心でどうにかなりそうになった。
だから……もう限界だったんだ。
本当は俺だって言いたくなかった。
場地
千冬
場地
千冬
場地
──だって、俺は……、
コメント
4件
うわあああ!!めっちゃ好きです!!!鈍感な場地さんと俺の方が場地とお似合いみたいなのを見せつけてる一虎くんとその2人に嫉妬してる千冬…!後半もすごく楽しみです🫶
わ、にゃん様お久しぶりです!! 御二方のばじふゆめちゃめちゃ楽しみです。 千冬の嫉妬心とか文面やら最高すぎます…! この物語すっごい好みかも知れません、