あの子が亡くなってからちょうど半年。 周りの景色は桜吹雪で覆われていた。
かなめ
本当だったらこの時期に式を挙げるつもりだった。 本当だったら桜が好きなあの子とこの道を歩くはずだった。
綺麗に見えるはずの桜は、あの子がいないから綺麗に見えない。 桜が咲く中で、俺に笑いかけてくれる瞬間が一番大好きで、一番綺麗だった。
けれど今は一人で、左側が少しだけ寒い。 それはあの子がいないからだって知ってる。
ふっと風が吹いて、桜が散っていく。
主人公様
かなめ
今、あの子の声が左側からした気がした。 それと同時に寒かったはずの左側があったかくなる。
かなめ
スマホのカメラをタップして、写真を一枚撮る。 撮った瞬間は桜と俺しか映っていなかったのに、写真にはあの子も映っていた。 映っているあの子は、綺麗なワンピース姿で幸せそうな顔をしていた。
かなめ
主人公様
また左側から声がした気がして、笑いかける。
かなめ
主人公様
かなめ
主人公様
かなめ
主人公様
嬉しそうに、楽しそうにそういうあの子の姿が見えて、鼻の奥がツンとした気がした。
かなめ
我儘を一つ零す。
主人公様
かなめ
もしこれが、幻視だったとしても構わない。 だってぬくもりはすぐそばにあって、写真は本物なんだから。
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