u r .
...違う、うそじゃ、ない

j p .
声、震えてますけど

u r .
だって、ちが、ッッ...

相羽うりの肩が、まるで冗談のように大袈裟に震えている。
生気のない顔がどんどん青白くなっていく。
j p .
僕が家出だとは思わなかったのかを尋ねたとき、貴方、目が泳いでましたよ

u r .
ッ、

j p .
...笑うのが、下手なんですね

u r .
ぁ、ち、が、ッ...!!

j p .
“家出だけはしたことがなかった”......家出が、できなかったんじゃないですか?

j p .
親に小遣いを貰っていないから?それか、空腹と寒さに耐えきれなくなって家に帰った時、もっと酷い目に遭うことが分かっていたから?

j p .
原因は家庭環境?親がいなくてどこかに預けられていた?もしくは、父親がいなかっ______

u r .
ッ””、もう”ッ、いいです...っッ、!

u r .
ぜんぶッ、ちゃんと、話す。真実を...ッ、

j p .
...

幽霊のような顔から、更に血の気が引いていく。
微かにしか聞こえない程小さい声が、泣きそうだった。
u r .
...ッ、......俺の家、ッ母親しか、いなかったんです

j p .
...

いくらか平静を取り戻した声で、相羽うりがそう言った。
血色はまだ良くない。
u r .
俺とゆあんは一卵双生児で、顔もそっくりでしたが、性格は違いました。どちらかというと俺の方が活発で、ゆあんは大人しい子です

u r .
ゆあんは勉強もスポーツもできて、人当たりも良いです

u r .
ただ_____これ以外に言葉がないので使いますが、要領が悪かったと思います。できないことがあると、頭がパニックになってしまう。そういう子でした

u r .
母は、対等に扱うべきだったのに、俺たち双子を比べた。ゆあんを叩いてしまった

j p .
...虐待

u r .
まあ、そういうことなんでしょうね。俺もゆあんも、その環境に違和感なんて持ちませんでしたけど

相羽うりが、薄い笑みを浮かべる。
無理に笑うことが強いられた、そんな環境。
j p .
...ゆあんくんが行方不明になったときのことを、教えてください

u r .
ッ、......学校から帰った、ときでした

u r .
母が、...、ゆあんを階段から落としたんです、...頭部から左目にかけて、ゆあんは怪我を負いました

u r .
血が出ていたんで、応急処置をしました。それで......ッ翌日、ゆあんは帰ってきませんでした

消え入りそうな声だった。
当時のことを思い出したのか、苦しそうに顔を歪める。
j p .
...随分、突然だったんですね

u r .
俺も、そう思いました。夜のうちに母に警察に相談することを勧めましたが、取り合ってもらえませんでした

u r .
あの時、無茶してでも警察に行っていたら、ゆあんは......ッ、

j p .
...落ち着いてください。当時だとしても警察は取り扱うことはなかったはずです

u r .
そう、そう...ですよね、

青い血管の浮き出た手で、冷水の入ったコップを持ち上げる。
細い喉が水を嚥下するのが、動きで分かった。
u r .
...███というネット掲示板、知ってますか?

j p .
知っています。行方不明者の情報を載せることができるんですよね

j p .
実は、相羽さんのお名前だけ伺っていたので、血縁関係者がいないか調べていたんです

j p .
相羽ゆあんくんの情報は載っていなかったんですが、あれはなぜでしょうか?

u r .
ああ、そりゃ嘘もバレるわけだ...

u r .
...探す必要なんてないと、母が激昂したんです。俺を殺しそうな勢いだったんで、ゆあんの情報は消してしまいました

自分の子供が失踪したというのに、心配をするどころか、無理矢理捜索を中断している。
よく相羽うりが俺に会うのを止めようとしなかったな。
u r .
......あの、もう一つ、あるんですが

u r .
実は、半年前に、母が、殺されました

j p .
ッ、!!殺された...?

u r .
はい。ある日、母が消えました。ゆあんと同じように、忽然と

j p .
どうして、それで他殺だと分かったんですか?

u r .
その一ヶ月後に、白骨化して見つかったんです。遺体は●●にある山の中に埋められていました

u r .
俺が本格的にゆあんを探そうと思ったのもこの出来事がきっかけです

u r .
もしかしたら、...母と同じように、なっているかもしれませんが

j p .
...

虐待。
母親の他殺。
突然消えた双子の弟。
これは、普通の失踪事件じゃない。