レッスンスタジオ
咲希
今日も練習、がんばろ〜っ!
穂波
咲希ちゃん、熱は大丈夫?
穂波
今日もちょっと赤く見えるけど……
志歩
え?咲希、熱あるの?それなら家で休んで……
咲希
ううん!ないない!
咲希
明日はみんなで天文台に行ける〜って思って、テンション上がっちゃってるだけだから!
志歩
……本当に?
咲希
うん!だから練習やろう!ね!
志歩
……はぁ。いいけど、ヤバかったらちゃんと言ってよ
志歩
また無理して前みたいになったら……
一歌
そうだよ。練習ならいつでもできるしさ
咲希
んも〜。みんな心配しすぎだよ!ほら、こんなにピンピンしてるでしょ?
志歩
……それならいいけど。
志歩
とにかく、無理はダメだからね
志歩
じゃあ、頭から通すよ
穂波
あ、今日は個人練習のほうがいいんじゃないかな?
穂波
それなら、みんなそれぞれのペースでできるし
志歩
あ、それもそっか。じゃあ……
咲希
もー、アタシのことそんなに気にしないでいいってば。
咲希
ほら、頭から通そうよ!
一歌
でも……
咲希
個人練習は前もしたし、アタシは合わせたいな!
穂波
咲希ちゃんがそれでいいならいいんだけど……
咲希
バッチリオッケーだよ!ほらっ、やろやろ〜!
志歩
……じゃあ、始めるよ
🎼.•*¨*•.¸¸♬🎶•*¨*•.¸¸♬•*¨*•.¸¸♪
一歌
うん。しっかり合わせられたね
志歩
今のは噛み合ってた。最後までズレもなかったね
志歩
咲希も、すごく良くなってたよ
穂波
個人練習がんばって良かったね、咲希ちゃん
咲希
…………
穂波
咲希ちゃん、大丈夫?
ハッとすると、心配そうにアタシを見つめるほなちゃんがいつの間にか近くに立っていた。
咲希
……え?あ。うん!
なんだか、ボーっとしてほなちゃんの顔があんまり見えないや。
咲希
あんまり上手く弾けちゃったから、感動しちゃってさ〜
穂波
…………?
穂波
ごめんね咲希ちゃん。ちょっとだけおでこ触るね
咲希
えっ。ほ、ほなちゃん……!
ひんやりとした手が、アタシのおでこに触れる。
穂波
……!
穂波
咲希ちゃん、すごい熱!
志歩
え?
咲希
そ、そんなことないって!
咲希
いつも、これくらいが平熱だし……
志歩
……ちょっと
咲希
え?
突然、しほちゃんに腕を引っ張られた。
咲希
痛……!
咲希
腕痛いよしほちゃん!
志歩
本当に、すごい熱
志歩
前倒れた時と同じくらいあるじゃん……
一歌
志歩……
志歩
だから……
志歩
なんで言わないの!?
志歩
無理しないでって、何度も言ったでしょ!?
志歩
どうして無茶するの!?
咲希
どうして、って……
咲希
だって……。みんなと天文台に行きたかったから……
志歩
遊びになんていつでも行けるでしょ!
志歩
そんなことより咲希の体のほうが……
咲希
そんなことじゃないよ!!
志歩
え?
咲希
いつでもなんて行けない!
咲希
ずっと……
咲希
行けなかったもん…っ!
一歌
あ……!
咲希
『……うん。またね』
あの日の咲希の悲しげな顔が、頭に蘇ってくる。
一歌
咲希……
咲希
う……
穂波
咲希ちゃん大丈夫?
穂波
っ、一歌ちゃん、そこの椅子持ってきてもらっていいかな
一歌
あ、う、うん
穂波
咲希ちゃん、座って。今冷たい飲み物買ってくるね
咲希
あ……。
咲希
うん……
穂波
ねぇふたりとも、落ち着いたら家まで送ってあげたほうがいいかなって思うんだけど……どうかな?
一歌
うん、そうしよう
志歩
…………
咲希の部屋
穂波
……ふぅ
穂波
これで大丈夫だと思うよ
穂波
咲希ちゃん、おうちのもの、勝手にいろいろ触っちゃってごめんね
咲希ちゃんをおうちに帰らせて、一通りの看病を済ませることができた。
咲希
ううん……誰もいないから、助かったよ……。
咲希
ありがと、ほなちゃん……
一歌
穂波は、こういう時本当にしっかりしてるね。すごいな
穂波
弟もいるから、慣れてるだけだよ
志歩
…………
咲希
……しほちゃん
咲希
ごめんね。またアタシのせいで、迷惑かけちゃって
志歩
……っ
志歩
そうじゃなくて……!
志歩
…………ううん。
志歩
とにかく、今はちゃんと休んで
志歩
話はそれから
そう言って、しほちゃんは帰ってしまった
咲希
しほちゃん……