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百華 千

……

人の間を縫って進む。

みんな傘をさしているけど、

私は制服のまま傘をささずに歩く。

みんなで楽しんだ最後のハロウィン。

そのときの仮装は男装だった。

今、ここでそれが活きてくるなんて。

人に気付かれずに歩く私はまるで幽霊だ。

かつん、かつんとビルの階段を上る音が小さく鳴る。

誰も、私に気づかない。

雨がいっそう強くなった。

空も私の死を祝福しているようだ。

屋上に着く。

見下ろすと、皆傘をさしていて上など見上げない。

誰も気づかない。

私は空を仰いだ。

百華 千

はぁ…

私は小さくため息をついて、もう一度ビルから見下ろした。

百華 千

あれ……?

なんだろ、あれ。

泣いて腫れた目を凝らす。

バイクに乗った黒い服に、金髪や銀髪の人達。

百華 千

…暴走族?

らしい者がいる。

一瞬、その内の一人と目が合った気がした。

百華 千

ぁ、…

その人たちは、急いで私のいるビルに登ってくる。

バレたのね。

百華 千

はぁ、もう…

百華 千

勝手にさせてよ

百華 千

ほっといてよ

そう呟いてその人たちが来る前に飛び降りようとした。

百華 千

えいっーーー

ガシッ

松野 千冬

待てよ!!!

あぁ、やっぱり止められてしまった。

百華 千

やめて、離してください

百華 千

…もう、嫌なんです

百華 千

あなたには、関係ない

松野 千冬

関係ある

松野 千冬

目の前で自殺しようとする人を止めないやつこそクズだ

百華 千

松野 千冬

オマエ、ひとり?

百華 千

…はい

松野 千冬

んじゃあ、うちのチーム入れよ

百華 千

えっ

松野 千冬

東京卍會

松野 千冬

聞いたことねぇ?

百華 千

…ありますけど

松野 千冬

オマエ、入ってみろよ

松野 千冬

優しい仲間いるぜ?

百華 千

…でも

彼は私のもごもごを聞こえないふりをして腕を引っ張っていった。

百華 千

あ、ちょっと、

松野 千冬

よし、今日からオマエは俺たちの仲間だ!

それが、彼との出会いでした。

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