テラーノベル
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夜は、静かすぎるくらいがいい。
窓の外、街灯がひとつだけ灯っていて、
その下を通る人影は、どこか現実味がなかった。
部屋の中は暗い。
明かりをつける理由が、見つからないから。
🍵「……まだ起きてるの」
背後から落ちる声は、低くて、やさしいのに、どこか冷たい。
振り返らなくてもわかる。
そこにいるのは、彼だ。
🎮「寝れないだけ」
短く返すと、ふ、と小さく笑う気配がした。
足音はしないのに、距離だけがゆっくり縮まってくる。
気づけば、すぐ隣。
同じ景色を見ているはずなのに、
彼の視線は、たぶん、違うところにある。
🎮「夜ってさ、全部隠してくれるよね」
ぽつりと落ちた言葉が、窓ガラスに溶けていく。
隠す、というより、
なかったことにしてくれるみたいで。
それが少し、怖い。
🍵「……隠したいの?」
聞いてみたのは、ほんの気まぐれだった。
答えは、すぐには返ってこない。
代わりに、肩に触れる指先があった。
冷たいはずなのに、なぜか安心する温度。
🎮「どうだろ」
曖昧なまま、終わらせる声。
でもその距離は、さっきより近くて、
逃げ道なんて、最初からなかったみたいに感じる。
街灯が、少しだけ揺れた。
風なんて、吹いていないのに。
🍵「 ねえ」
今度は、こちらから声をかける。
答えを求めたわけじゃない。
ただ、この静けさに名前をつけたくて。
🍵「このまま、朝になったらどうするの」
ほんの少しの沈黙。
それから、彼は――
🎮「なにも変わらないよ」
そう言って、笑った気がした。
でも、その表情は見えない。
夜が深すぎて、
何もかもが、やわらかく曖昧になる。
それでも、確かにここにあるものだけが、
妙に鮮明で。
肩に触れる手も、
すぐ隣の気配も、
言葉にしきれない空気も。
全部、夜のせいにしてしまえば、
きっと楽なのに。
窓の外、街灯はまだ消えない。
朝は、まだ遠い。
そして――
この距離も、まだ、終わらない。
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かじゆ
あや