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稀灯 夏成🩵🍸
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あっという間に時が過ぎ、体育祭前日になった。
その日もすちは練習に明け暮れ、タイムを速くすることを目標に走った。
らんはすちのタイムを測るのを手伝い、時々共に走ったりすることもあった。
桃『 ぉ 、一週間前 より 速くなってんじゃん 。 』
翠『 ぇ ほんと ? 』
桃『 ほんと 、比べてみ 、めちゃすごい 。 』
らんは毎日のタイムの記録を見比べてすちの走る速度が著しく向上していることに気づいた。
すちは勘ぐったがらんの誇らしげな表情を見て記録を比べずともそれが事実だということがわかった。
翠『 ありがとね 、協力してくれて 』
桃『 いいよ 、それに 協力したほう が 勝つ確率 上がるやん 。 』
翠『 … そうかな 。 』
桃『 そ − だよ ! 』
翠『 … そう 、なのかもね 。 』
正直すちは自身が高順位を取ることはないと思っていた。
だが想い人の言葉がすちの自信を強くさせた。
すちはらんの言葉を軽く肯定し、らんへ視線をやった。
翠( 綺麗だな … 。 )
不意にそう思った。
真剣な眼差しで記録を見ている横顔。
額から垂れた汗が首筋にまで渡り、鎖骨辺りにまで渡っても気付かないほどに意識を記録表に向ける。
そして寝不足なのかたまに長く瞼を閉じて、また気づけば瞼を大きく開いて目を覚そうとする。
そんな一挙手一投足にすちは目をやる。
桃『 な − に みてんの っ 。 』
翠『 いて っ 、 』
らんはすちにじっと見られていることに気付きすちのいる方向に身体を向けて額に中指を親指で抑えて中指を弾いた。
すちは痛みを感じて両手で弾かれた部分をさするが暖かい笑みを浮かべた。
桃『 ぅ し っ 、練習するぞ ! 』
桃『 ほら ! 』
らんは太腿を両手で軽く叩き重い腰を上げた。
そしてすちへと白い大きな手を差し伸べた。
翠『 うん っ … 。 』
すちはそのらんの手を強く握って立ち上がった。
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すちは家に帰って汗を洗い流した後、さっさと夕食を胃にかきこみ寝る準備を済ませてベッドに飛び込む。
柔らかく暖かい掛け布団にくるまった。
その日は激しい練習だったためすぐに眠気に襲われた。
翠「 ふ ぁ … 、゛ね よ ぉ … 。 」
ゆっくりと瞼を閉じてあとは意識を手放すところまできたとき、かたわらにあるスマートフォンがメールを受信した。
翠「 … らんらん ? 」
極力スマートフォンを触りたくはなかったが通知が止まらないため仕方なくスマートフォンの電源をつけた。
通知を開くと想い人とのメール画面で先程までの眠気が消え去った。
〈 ね 〉
〈 すち 〉
〈 起きてる ? 〉
〈 起きてるよ 。 〉
変なところがないか何度も何度も確認して送信ボタンを押す。
メッセージを送信するとすぐに既読がつきらんは話題を広げた。
〈 明日 体育祭じゃんか 。 〉
〈 そうだね 、それが どうかしたの ? 〉
〈 いや 、正直めちゃくちゃ 緊張しててさ 。 〉
〈 らんらん が 、珍しいね 。 〉
〈 そうかも 、それで 、すち も 同じ種目に出るから 話したくて 。 〉
話したい、そう表示された言葉にすちは身勝手ながらも一人悦に浸った。
それだけ好きな人に頼られている、相談相手になっていることが嬉しかったのだ。
〈 俺 も ちょっと だけ 話したいな 〉
〈 ほんと ? ありがとね 。 〉
すちにとって、らんとの会話は何よりも大切なことで、その時間が永遠に続いてくれないかと思うほどのものでもあった。
〈 俺 も 緊張してる 。 〉
〈 一緒 じゃん 、嬉しいかも 。 〉
〈 でも きっと らんらん なら 大丈夫 、らんらん は 強いもん 。 〉
〈 そう ? 〉
〈 うん 、俺 より 、ずっと 強い 。 〉
〈 俺 は 豆腐メンタル だからさ 。 〉
〈 そっか … ありがとう 。ちょっと 元気 でた 。 〉
〈 それなら良かった。 〉
互いに励ますようなスタンプを送り合って、会話を終了させた。
すちはそっとスマートフォンの電源を落として、それを自身の胸にぎゅっと抱き締めた。
激しく鳴り続ける鼓動はしばらく止まることを知らなかった。
翠「 すき 」
翠『 なんて 、言えたらな … 。 』
すちは熱で覆われた顔を天井にむけた。
そして簡単に解決できない問題に半ば諦めを感じていた。
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一方その頃、ある青年もまた、悶々とした様子でベッドでうずくまっていた。
何度も送られてきたメッセージ画面を見て、その度に苦しくなって。
桃『 強い 、強いか … 。 』
桃「 俺 、強いのかな … 。 」
正解などない答えを見つけるように、
青年は一人そう呟いた。
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コメント
1件
第18話読んだよ!体育祭前日、二人の距離感がすごく丁寧に描かれてて胸がきゅーってなった。すちがらんの横顔を見て「綺麗だな」って思うとこ、めちゃ良かった…。夜のメッセージのやり取りも、お互い緊張してるのに励まし合ってて、切なくて温かい。最後のらんの一人呟き、めっちゃ気になる!次話も楽しみにしてる🔥