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本田菊は、30歳を過ぎてもなお「Ω(オメガ)」であることを隠し、抑制剤を飲みながら「β(ベータ)」として働いていた。
この業界は過酷だ。不規則な生活、ストレス、そしてα(アルファ)たちの強いフェロモン。Ωにとって、ここは戦場に近い。
「……っ、またですか」
深夜の編集部。菊はデスクの引き出しから薬を取り出した。最近、体の芯が熱くなる頻度が増えている。長年使い続けてきた抑制剤に、体が耐性を持ってしまったのかもしれない。
そんな時だった。
「菊!お疲れ様ある!」
背後から差し込んだのは、あまりにも眩しい太陽のような声。
王耀。
地元の書店員であり、美大生。そして、菊がこれまでの人生で出会った中で、1番元気をくれる「α」だ。
「……耀さん、どうしたのですかこんな時間に」
「これ、差し入れある。菊、全然寝てないあるね?目の下にクマが出来てるあるよ」
耀が近づくとその瞬間、菊の鼻腔をくすぐったのは、雨上がりの森のような、どこか冷たくて、けれど包み込むような耀のフェロモンだった。
(まずい、これ以上は……)
抑制剤が効いていない体が、耀の存在に過剰に反応する。首筋が熱くなり、指先が震える。
耀の顔が不意に曇った。
「菊、……顔、赤いあるよ? それに、なんだか甘い匂いが……」
「……っ、なんでもないです! 疲れてるだけなので、今日はもう帰って……」
菊は耀から顔を背けた。しかし、耀は引かなかった。
小さな手が、菊の肩に触れる。
「……菊、菊はほんとにβあるか…?」
耀の声が低くなる。アルファとしての本能的な響き。菊は情けなくて、惨めだった。30歳にもなって、年下の大学生にこんな風に「オメガ」であることを暴かれそうになっている。
「……そうなんです、耀さんの予想どうり、私はオメガなのです……幻滅したでしょう?」
菊は自嘲気味に笑った。皆を笑顔にするような耀には、もっとふさわしい、美しくて元気オメガが似合うはずだ。
だが、耀の反応は予想外のものだった。
「……逆あるよ、今、すごく安心したある…」
「え……?」
「ずっと、菊に触れたいのに、どこか拒絶されてる気がして怖かったある、でも、今日理由がわかって良かったあるよ……!菊、我を信じてくれるあるか..?」
耀の顔が近づく。その瞳には、菊を蔑む色なんて微塵もなかった。あるのは、ただ一途な熱量だけ。
「我は、菊の属性が何であっても関係ないある。……でも、もし菊が望むなら、我が、菊の運命の番になりたいあるよ…」
「耀さん……」
菊の目から、堪えていた涙がこぼれた。この眩しい光は、自分のような汚れた大人でも、照らしてくれるというのだろうか。
耀は、これまでの菊の苦労や葛藤を理解した上で、その存在すべてを受け入れようとしてくれていた。偽りの自分を脱ぎ捨て、本当の自分として愛される未来が、今、目の前に開けていた。
(終わり)
どうだったでしょうか?
菊さんの方が年上になってしまって申し訳ないです💦
解釈違いもあると思いますが初投稿なので優しくしてくださいm(_ _)m