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翌朝、痛みで私は目を覚ました。
昨日痛くなかった所が激しく痛む。
昨日はショックで体が興奮状態だったのか痛み止めが効いていたのか不明だが、ここまでの痛みじゃなかった。今日は、とにかく痛い。すかさずナースコールをして看護師さんに、痛み止めを追加して貰った。
「ネガティブ思考になりそう」っと、ため息をつく。
病室の壁に掛かっている時計を見ると午前10時半になっていた。
ベッドの上で、ただ時間だけが過ぎるのを待っているのは辛く、美優のこと、仕事のことが気になる。心細くて、朝倉先生の声が聞きたかった。
今、体を捻ることも出来ない状態で、ベッドの脇にあるチェストの上にあるスマホを自力で取る事も出来ない自分が歯痒く思いながら時計を見つめる。
パタパタと足音が聞こえるとコンコンとドアをノック音がした。
「はい」
返事をすると、美優を抱いた将嗣が入って来る。
「おはよう」
明るい声を掛けられ、落ち込んだ気持ちが浮上した。
将嗣に美優の様子を聞くと元気に過ごしていたようでホッとする。
美優は私の顔を見るなり、抱っこしてもらいたくて泣き出してしまった。
痛み止めが効いているとはいえ、左手の裂傷、右手は点滴につながれ、首にコルセット、左足にギブスで満足に抱く事も出来ずに切ない。私が困った顔をすると代わりに将嗣が一生懸命に美優をあやしてくれる。
「今日、俺は実家に泊まる事にした。警察とかディーラーとか保険屋とも話さないといけないしな」
「美優のこともお願いね」
「ああ、母親もいるしな。どうにかなるよ」
「でも、将嗣のお母さん。お父さんのお世話もあるのに美優の世話までしたら疲れちゃうよ」
「そうだね、ほどほどにしておくよ。母親までダウンしたら大変だしな」
自分で美優の世話が出来ない以上、周りの人に迷惑を承知で甘えるしかない。甘える事に慣れていない自分としては、少し辛かった。
「病院の先生とも今後の予定を話してみるからな」
「うん、よろしく」
一日も早く家に帰りたい気持ちを抑えて将嗣に返事をした。
先に帰ってもらうだけだというのに、凄く寂しい。
美優を連れて将嗣バイバイと手を振り、私も点滴の付いた右手を小さく振った。
また、病院で何も出来ない時間が始まる。
ため息まじりに天井を眺めているとコンコンとノック音がする。
将嗣が出て行ってから10分位しか経っていないのに何か忘れ物でもあったのかな?
「はーい」
返事をするとドアが開く。
そこに現れた人が思ってもみなかった人で驚き過ぎて言葉が出なかった。
「夏希さん」
私を呼ぶ声は、紛れもなく私が聞きたかった声だ。
「……翔也さん」