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異界の門の形はその異世界によって様々である。
さらに、立地も当然だが以下同文。
ウォーロストの異界の門は斜面に立っており、足元がカチコチに凍りついてシャーベット状になっている事も手伝って、やって来た者はほぼ例外なく足を滑らせる。
「おぎゃあぁぁぁぁぁっ! てめ、六駆ぅ! なんでパパを踏んでんの!? ああっ、痛い痛い!! 地面のデコボコが顔とか腹に刺さるぅ!!」
自分の親父をソリのようにして、逆神六駆がウォーロストに参上。
「くははっ。この状況なのに、お前らは楽しそうでいいなぁ?」
2人に続いて、阿久津もやって来た。
『結晶』で足場を作り、器用に斜面を下っている。
「やれやれ。これは困りましたね。敵さんにここまでしてやられるのは最近20年くらい思い出しても記憶にないなぁ。悔しいけど、昔を思い出して新鮮!」
「いや、お前は何歳なんだよ? つーかよぉ、親父が足元で凍り始めてんぞぉ?」
六駆が「そうでしたか。気付きませんでした」と言って、大吾の背中から降りる。
大吾は当然のように無傷。
逆に、この男に六駆以外がダメージを与える方法を知りたい。
「六駆ぅ! ひでぇじゃんよ! オレ、上半身裸なんだぜ!? あっくんの熱光線で焼き尽くされてんだからよ!!」
「……てめぇが勝手に焼かれたんだろうがよぉ」
仲の良さそうな大吾と阿久津を30秒ほど眺めた後で、六駆は速やかに行動に移った。
こんな寒くて何もない異世界に長居は無用。
早いところお金と煌気が交差する戦場に戻るのが、現在の最重要課題であると彼は理解していた。
「ふぅぅぅんっ!! 『門』!!」
極寒の大地にも関わらず、元気に生えて来た門。
だが、普段とは雰囲気が違う。
「……ちょっと親父。全力疾走して門をくぐってくれる?」
「おう! 一番薄着のオレを最初に行かせてくれるとか! やっぱり六駆はお父さん思いの良い子だなぁ!!」
大吾は言われた通りに助走をつけて、門に突入する。
「大吾、行きまぁぁぁぁす!! そぉりゃあうっ! たべしっ!!」
六駆は門に顔面から衝突して地面に転がった大吾を見て、「やっぱり」と頷く。
「困ったな。僕の『門』が何らかの方法で妨害されてるや。これじゃ、転移できない」
「それも最悪だがよぉ? お前の親父見てると、この俺ですらなんか悲しい気持ちになってくんだけどなぁ? 優しくしてやれよ」
快楽主義の阿久津浄汰に慈悲の心を宿すほど気の毒な男。
その名は逆神大吾。
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「こうなると、問題は『門』に妨害がかかっているだけなのか。それとも僕の煌気そのものにジャミングがかかってるのか。そこですね」
「お前の家の親子関係もそこそこ問題だと思うけどなぁ?」
六駆は考えるよりも実践するのが一番と、手の平を地面に向けた。
少しだけ気合を入れて、強めに煌気を込める。
「ふぅぅぅんっ!! 『大竜砲』!!」
「あっちぃぃぃぃぃ!! いや、寒くなくなったけど!! 熱い、熱いってぇ!! 待って、六駆ぅ! お父さん、唯一無事なズボンまで失っちゃう! ヤメたってぇぇぇ!!」
「良かった! スキルが出ましたよ! と言う事は、敵さんは『門』だけに作用する何らかの対策を講じているって話ですね!!」
「いや、親父がよぉ……。おいおい、マジかよ。俺がツッコミ役とかよぉ。前代未聞だぜぇ? 逆神ぃ」
六駆は事態を把握した。
これまでのどこかの作戦で『門』による探索員協会の人間の転移がアトミルカにバレた結果、気付かないうちに対策されていたのだと。
彼は納得する。
これまで、「どうせ模倣なんてできないでしょ!」と、『門』を長時間出しっぱなしにしていたため、煌気の質やスキルの構造のサンプルを取る機会はいくらでもあった。
そして「模倣はできなかった」が、「『門』に対して効果的な妨害」は可能だった事実。
「これは敵ながらあっぱれをあげましょう! 誰だか知らないですけど、僕のスキルにちょっかい出せるなんて、本当にいつ以来か思い出せません!!」
「そのあっぱれをくれてやるにはよぉ。ここから出ねぇと無理だぜぇ? 正直、この極寒と煌気封じの結界は俺でも堪えるからよぉ」
「えっ!? 煌気封じられてます!?」
「普通にお前がスキル使うから俺も違うんじゃねぇかと思ったけどよぉ。異界の門からちょっと離れただけでなぁ。『結晶』が出せなくなってんだよ」
ウォーロストでは、囚人が何らかの方法で手錠を破壊した時の対策として、煌気そのものを封じる結界が張られている。
ちなみに、この手の結界は能力が際立って高い者には効果がない。
「さて。どうしましょうかね」と腕組みをしている六駆。
「困ったな、マジで!!」と既に極寒の気温に適応し始めている大吾。
この2人を抱える事になって、人生で一番のストレスに苛まれている阿久津。
3人の周りを、気付けば多くの人間が囲んでいた。
当然、ウォーロストの囚人である。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「おい。あいつ、スキル使ったぞ?」
「ああ。見ていた。何者だ? 刑務官には見えないが」
「隣の汚いおっさんはなんでほぼ裸なんだ? しかも割と平気そうなんだが」
「容姿は3人ともジャパニーズみたいだな」
囚人たちの分析はすぐに済む。
「なんかヤベーヤツらがやって来た」と言う事実は、真実のほとんど全てをカバーしていた。
「どうも! こんにちは! 皆さん、ウォーロストに送られた犯罪者の方ですか? 何をしたらこんな最悪な環境に送り込まれるんですか? 興味があるなぁ!!」
「おい、ヤメろよ六駆ぅ! 多分、焼肉の食べ放題行って、制限時間が来たのに大量の肉を食べ残したとかだろ! 悲しい過去をほじくり返すのはノーだぜ!!」
「俺ぁ、何か言った方が良いのかぁ? こいつら親子を制御できる人間がこの世にいるんだったらよぉ。俺ぁ尊敬するぜぇ? 無条件でなぁ」
小坂莉子さん。あっくんの尊敬をゲットする。
「おい。ちょっと通してくれるか」
「かぁー! なんか見覚えのある煌気とスキルだと思って来てみりゃあ! マジでいるじゃねぇか!!」
囚人たちの中で、2人の男が六駆を見て驚きの様子を見せる。
彼らは逆神六駆の事をよく知っていた。
「おい! 逆神! オレの事が分かるか?」
「いやー。僕、犯罪者に知り合いはいないので! ……ああ! デスターにいた、エロの人じゃないですか!!」
六駆にとって、デスター急襲作戦は常にお金が支給され続けたボーナスステージ。
そこで最後に戦った男の事は、普段何も覚えない六駆の脳にも記憶として残っていた。
お金と紐づけるとおじさんの記憶力が活性化するのは、諸君もご存じの通り。
「グレオ・エロニエルだ。それにしても、こんなところでお前の顔を見る事になるとはな。何をしでかしたんだ? あ?」
「グレオ。察するに、アトミルカ絡みだろう。この男の実力ならば、カルケルの異界の門を守護する役割を与えられていても不思議ではない」
「あなたは初対面ですね!!」
「いや。私もグレオと共にデスターで会っているのだが……。まあ、私はナグモに負けたから記憶にないのか。ヒャルッツ・ハーラントだ」
Z4番とZ6番。
かつての敵と再会した六駆。
「逆神ぃ。お前は色んな所で敵を作ってんなぁ?」
あっくん。君も似たようなものである。
「六駆ぅ! お腹空いた! 知り合いの人ならさ! ご飯奢ってくれって頼んでくれよ!! 大丈夫、こういうのは勢いで頼んだら押し通せる!!」
「……ちっ。うるさいなぁ」
六駆も結構な勢いで面倒なおっさんのはずなのに、自分よりも醜いおっさんが傍にいると不快らしい。
これは、おっさんの不思議百選に数えられる謎の1つである。
「まあ、ついて来いよ。雪をしのげる場所に案内してやる」
「あららー! エロの人、意外と優しい! この間はボコボコにしてすみませんでした!!」
『門』を封じられた六駆。
彼の異世界脱出へのルートは結構な勢いで茨道の様相を呈して来た。
コメント
1件
わあ、第390話お疲れ様です! 六駆くんの門が封じられちゃって、しかも極寒のウォーロストに親子で放り込まれる展開、めちゃくちゃ面白かったです。大吾さんの「ソリ扱い」からの「熱光線で焼かれて上半身裸」の流れ、もう笑いが止まらなかったです。あっくんがツッコミに回ってるのも新鮮で、親子のやりとりに思わずほっこり。かつての敵・グレオさんたちとの再会も気になりますね。次が楽しみです!