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静かな部屋に一人、ポツンと生物が放置されていた

生物は自身の首を足を頭を己の手で触れ、確認し、存在を確認した

思考を巡らせようと脳を動かそうとするが、脳が機能しない

何度考えようとしても、絵が描かれたキャンバスを黒で塗りつぶすかのように、思考がリセットされてしまう

そして等々、脳だけでなく体までも黒で塗りつぶされてしまった


その瞬間、自身の存在、存在する理由を理解する事が出来た

先程まで機能しなかった脳が嘘のようにグルグルと思考を巡らせている

気分が良い、あるはずの無い心臓が鼓動している

ジワジワと頬が火照り、息が荒くなる

ギリ……っ、と布を纏った指が頬に食い込む

食い込んだ痛みが感触が、今も脳裏にそして頬に残っている

























「私自身に害は無いのでしょう」


虚ろな目をしながら、スポットライトの当たるステージの上で、水槽の中の金魚のようにヒラヒラと舞う


「私はただ痛みを感じたい、死という存在に執着したいだけなのです」

「それは貴方様にとって不都合に値する物なのでしょうか?」

「少なくとも私はそうとは思いません」


キュッ、と靴先が鳴る

止まった靴先を再び動かし、くるりくるりと回転するコマのように体を動かす


「不都合になるとしたら……、そうですね。例えば貴方様を殺したい、や、食べてしまいたいなど……ですかねぇ…」

「受け入れる方も居るのは分かります、が。大抵の方は拒否をするか抵抗をするでしょう」

「どれだけ愛する者が居ても結局の所、1番可愛らしく愛おしいのは自身の生命です」


空気を掴むかのように拳をギュッ!と握りしめ

開花する様に握られた拳をフワリ……と開く


「……でも私は自信が1番可愛らしい、愛しいとは思いません」

「寧ろ自身に興味がありません」

「何故でしょうかねぇ……、1番近くに存在し、1番長く共にしているからでしょうか」

「……それとも…」


つぅ……ッ、と人差し指で頬をなぞり、サングラス越しに白くグルグルとした瞳が露になる


「”もう1つの生命が自信にさほど興味がなかったからでしょうか?”」

「……ふふっ、冗談ですよ?」

「とにかく私は自身よりも他者を愛す事が好きなのです」

「自身で自信を痛めつけるよりも、御相手に自身の肉体を痛めつけられる方が興奮するのと同じですね♡」


白く病人の様な肌が赤く染まり出した


「おや、これは例外でしたね。失礼しました」

「……少し話を戻しますね。もう一度言いますが、私は自身に興味がありません」

「存在した時からずっと、ずっとです。1人で居るのが」

「”私のみ”で存在するのがつまらなかった」


トンっ、と踵で床を楽器のように鳴らし出す


「……それが功を奏したのでしょうか、目を覚ますと目の前にはあの方が居たのです」

「そう、私の対となる存在。”dela”が居ました」


リズミカルに足を動かし、音色を奏でる


「初めてあの方を目にした時はおどろきました。何故なら前身血塗れだったもので」

「恐らく私を殺した後に、他の方々も殺したのでしょう」

「私、こう見えて血が流れていないもので♡」


笑顔を此方に向け、サングラス越しにウインクをする


「それからでしょうか、この世界が恐怖に満ちたのは」

「今まで平和そのものだった、フレイー・ウェルトは見る影もなく、楽園から地獄へと早変わりしてしまいました」


ダンっ!と演奏を遮断し

カツカツと音を立てながら前へと進む


「……元を辿れば、私が刺激を求めたのが原因なのでしょう」

「それに関しては申し訳がないと感じております、が」

「後悔はしておりません」


頬に手を添え、不敵な笑みを浮かべる


「自身の存在を本当に理解できたのですから♡」

「でなければ私はずぅ……っと、折に囚われた小鳥のままだったのでしょう」

「……っと、話が長くなってしまいましたね」


ステージから降り、パーフォーマンスを鑑賞していたエルフ耳の男の手を取り、手の甲にキスをする


「……んっ、私は貴方様をALMAさんを殺そうとは致しません」

「何故なら……って?ふふ……、貴方様が嫌がることを避けた迄ですよ」

「もうこの世界は手遅れ、闇に染る1歩手前です」

「ですので、どうかALMAさん。この混沌に満ちた世界からどう抜け出すのか、私にお見せ下さい」

「そして___」



























「私に、貴方様の存在理由を示してくださいませ♡」

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